日本マイクロソフトなどが参加する業界団体「Windowsクラスルーム協議会」は11月28日、「Education Day 実証に学ぶ - 新たなICT活用の実践と展望」と題した教育ITに関するイベントを都内で開催。基調講演では「世界の教育で起きる挑戦と変化」をテーマに、米Microsoft副社長 教育部門担当のAnthony Salcito氏、Windowsクラスルーム協議会会長の日本マイクロソフト株式会社 代表執行役 会長 樋口泰行氏、文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 課長 磯寿生氏がスピーチした。
最初に登壇した文部科学省の磯氏は、次期学習指導要領の改定に向けた教育ITの現状と課題を大まかに説明した。基本となるのは、2011年に定めた「教育の情報化ビジョン」と、2014年に発表した「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会中間取りまとめ」という2つの枠組みだ。
磯氏は、2つの枠組みの中では、(1)情報活用の実践力や情報社会に参画する態度など、子どもたちの理解度や能力を高める「情報教育」、(2)電子黒板など指導者側のIT活用を推進する「教科指導における情報通信技術の活動」、(3)教育現場で問題となる事務処理の効率化などを目指す「校務の合理化」--の3本柱となると解説した。
教育ITの3本柱を推進する取り組みは、文部科学省に留まらず、政府が10月に掲げた「経済・財政一体改革に向けた主な取組」でも「ICT等の活用による校務の合理化・改善」という形で推進している。
学校現場でのIT環境整備については、2014年5月の「教育のIT化に向けた環境整備4カ年計画」で目標値を設定している。ここでは、2017年までに、学習者用PCを児童生徒数3.6人につき1台、電子黒板などを1学級あたり1台、無線LAN整備率100%を目指すとしている。
磯氏は、次期学習指導要領の中で、教育ITの力に特に期待しているのは「アクティブラーニング(生徒自身の能動的な学習意欲を持たせた学習法)」の実現だと説明した。「課題を解決するために複数の視点を設定し、グループごとに視点を分担して最終的な応えを導き出すための“ペア学習”や“グループ学習”を推進している」(磯氏)
次に登壇した日本マイクロソフト 会長の樋口氏は、教育ITの推進と企業経営は密接に関連していると語った。「ITで企業の生産性は向上する。これまでの単純作業はコンピュータが担っていくため、ITを利活用する力『リテラシー』や、アイディアを作り出し表現する力『想像力』、理数系人材として活躍できる力『技術力』が必要になる」(樋口氏)
特に、理数系人材の育成について樋口氏は、「日本は少し頑張らないと行けない位置にある」と指摘する。「Microsoftはワールドワイド企業のため、ソフトウェア開発に強い人材が集まる地域に支社を置いてエンジニアを雇っている。中国やインドと比べると日本は大きく水を空けられている状態だ」(樋口氏)
サンフランシスコからSkype経由でプレゼンテーションしたMicrosoft 副社長 教育部門担当のAnthony Salcito氏は、「教育ITは最もエキサイトな時代を迎えた」と口火を切った。
Salcito氏は、時代の変化に応じて社会に必要とされる人材も変わると述べ、STEM教育の重要性を強調した。この単語はサイエンス(Science)、テクノロジ(Technology)、エンジニアリング(Engineering)、数学(Math)の頭文字を拾い上げ、4分野に重点を置いた教育を指す。
Salcito氏は、「クラウド技術の発達により、2020年までに全世界で620万個の新しい仕事が生み出される。そこではSTEM教育を受けた人材が広く求められる」と展望する。しかしながら、世界的に情報工学の学位を持った大学卒業生が少なく、現状でもIT業界全体で人材が不足している。
Microsoftが教育ITに注力する目的は、この世界的な課題を解決するためのSTEM教育の拡充することにあるとSalcito氏。そのために、年少から大学卒業まで幅広い年齢層に対して、各種学習支援ツールの提供や、学生向けのITコンテスト「Imagine Cup」の開催、専門者と学生をSkypeでつなぎ遠隔教育を行う「GLOBAL SKYPE-A-THON」など、数々の教育向け施策を続けていくという。
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