「Sprintを反転攻勢させる設計図がみえた。問題解決の道筋がみえていないと一番ストレスになるが、解決の糸口がみえてそれを実行するのみという時は、登る山が険しくても楽しくてしょうがない」――ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、11月4日に開かれた決算会見でこう語り、米通信子会社のSprintの再建が順調に進んでいることをアピールした。
前四半期と同様に、決算会見の多くの時間を米Sprintの戦略説明にあてた孫氏。赤字が続いていた営業利益は、ソフトバンクの傘下になったことで回復に転じ、2015年4~9月は5億ドルの黒字を達成したと説明する。純利益も前年同期は7.4億ドルの赤字だったが、今期は6.1億ドルの赤字へと改善したと語った。
また、2014年8月にCEOに就任したマルセロ・クラウレ氏による新体制以降は、契約時の審査基準を上げたことで、信用力の低いサブプライム層を除いた優良顧客の新規獲得が増加していると説明。純増数や解約率も改善傾向にあり、特にポストペイド携帯電話の純増数は9四半期ぶりに純増に転じたことを明らかにした。
Sprintの反転に向けた戦略として、孫氏が掲げているのが「OPEX(固定費)削減」「ネットワーク改善」「資金調達の多様化」の3つだ。まず、OPEXの削減については、470ほどの固定費削減に向けたプログラムを並行して開始したことで「毎年20億ドル以上の削減の目処がついた」(孫氏)という。ただし、実行に向けて2015年度下期から2016年度にかけて10~12億ドルの一時費用が発生する見込みとした。
続いてネットワーク改善については、毎晩のように米Sprintのメンバーと2.5GHzの周波数帯を活用した次世代ネットワークについて設計や議論を進めているという。これが実現するのは1年半~2年後としているが、全米ナンバーワンのネットワークの構築も夢ではないと孫氏は自信を見せる。
「アメリカだから特に難しいということは実は大してなかった。アメリカの通信品質が悪いのは国が広いからだとか、各社がいろいろなことを言っていたが、それは全部嘘だった。単に努力が少なかったんだと、私はいまは断言できる」(孫氏)。
最後の資金調達の多様化については、企業が端末を購入して消費者に有料で貸し出す「リース販売方式」の資金を賄うために、端末のリースカンパニーを設立準備中としていたが、その体制が整ったと説明。11月中に第1弾を実施する予定だという。この3つの施策によってSprintの持続的な成長を目指すとした。
ソフトバンクグループの2016年3月期第2四半期(4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.0%増の4兆4238億200万円、営業利益が同21.4%増の6857億6600万円、純利益が同23.9%減の4266億8300万円となった。前年上期は上場したグループ会社のアリババの一時益を含んでいたことから純利益はマイナスとなった。
国内における通信事業の純増数が伸び悩んでいるのではないかという指摘に対しては「以前は数ありきで、みまもりケータイとかデジタルフォトフレームとか、細々としたものをいっぱい作っていっぱい売って、それを全部1個に数えていた。数は沢山あったが利益としての貢献は小さかった。今は数ありきではなく中身にこだわってやっている」(孫氏)と説明した。
東南アジアを中心に進めている投資事業については、中国のアリババを始め、インドの通販大手「Snapdeal」や、シンガポールのタクシー配車アプリ「GrabTaxi」、米国の学生ローンの借り換えサービス「SoFi」など、いずれのサービスもこの数年で急成長していると説明する。
これまでは「趣味のように(企業に)投資をし、盆栽に水をやるように眺めながら勝手に大きくなることを祈っていた」という孫氏だが、現在は“後継者”として副社長に就任したニケシュ・アローラ氏をトップとした約10人の専門チームが組成され、世界中を飛び回って、有望な企業を発掘・育成する体制を構築しているという。
総務省が主導して引き下げが検討されている携帯電話料金については、「日本の通信ネットワークは恐らく世界で最も進んでいる。そのネットワークをアメリカよりも遥かに安い料金で提供している」と持論を展開。ただし、消費者が料金の引き下げを望んでいることは十分理解しているとした上で、今後はそれぞれの顧客のニーズにあった料金プランを用意していく方針を示した。
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