「『PS4』が好調に推移しており、ゲームは規模を追うべきステージにある」。ソニーの代表執行役副社長兼CFOである吉田憲一郎氏は、2016年3月期第2四半期の決算会見でこう説明した。
ソニーの第2四半期(7~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.5%減の1兆8927億円となったものの、営業利益は同856億円の赤字から880億円の黒字、税引き前利益722億円(同900億円の赤字)、四半期純利益は336億円(同1360億円の赤字)と、大幅に損益を改善した。
前年同期には、モバイル・コミュニケーション(MC)分野で、営業権の減損1760億円を計上しており、それが大幅な損益改善につながった要因だが、売上高では、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野が、売上高で同16.5%増の3607億円、営業利益が9.8%増の239億円の増収増益となった。
吉田氏は「G&NS分野は、9月単月で過去最高となる月間売上高を記録し、強いモメンタムを維持している。PS4は値下げを発表しており、販売台数も7月時点の見通しから100万台上方修正し、1750万台を見込む」と、好調さを印象づけた。「規模を追うジャンルの第一はゲームだと位置づけている。ゲームはビジネスモデルが多様化し、以前はゲーム開発会社からのロイヤルティが主だったが、現在はダイレクトにコンシューマと接することができる。1台でも多くPlayStationを普及させ、1人でも多くのユーザーを獲得していきたい」と意欲を見せた。
一方、ソニーでは、テレビやデジタルカメラジャンルで「規模を追わず、収益性を確保する」戦略を打ち立てている。
テレビを持つホームセンターテインメント&サウンド(HE&S)分野の売上高は、同0.2%減の2891億円、営業利益は同73.9%増の158億円。液晶テレビは販売台数が同360万台から300万台へと減少したものの、売上高2030億円(同1997億円)、営業利益97億円(同49億円)となった。
デジタルカメラのイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野も売上高で同4.1%増の1860億円、営業利益で同28.6%増の259億円を記録。デジタルカメラの販売台数は減少したが、高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善、為替の影響などにより増収増益となった。
吉田氏は「テレビやデジカメの規模を追わずに違いを出していこう、という戦略は浸透してきたと思っている」と現状を分析。長らく赤字の続いたテレビ事業を黒字へと導いた。
今期苦戦を強いられたのが、スマートフォンの販売台数が大幅に減少したMCと映画分野だ。スマートフォンの販売台数は、前年同期の990万台から670万台になり、売上高は同15.2%減の2792億円。営業損失は同1706億円から206億円へと赤字幅を縮小したが、これは先述した営業権の減損1760億円を計上していたことによるものだ。
「事業のフェーズで優先すべき点は、事業規模を追わず販路を最適化すること。トータルで赤字となっているが、赤字の国がかなりはっきりしており、その対応をなによりも優先している。年間の販売台数見通し2700万台は、現時点では変えない」(吉田氏)とコメントした。
映画部門については、「アメイジング・スパイダーマン2」のようなヒット作に恵まれず、映画製作の大幅な減収により、分野全体で減収になったとした。
10月28日に東芝のイメージセンサ事業譲渡が発表された、デバイス分野は、売上高が同7.4%増の2581億円、営業利益が15.4%増の327億円と増収増益を記録。「イメージセンサはソニーにとって重要な位置づけの分野。現在人的リソースも逼迫しているので、設計、生産、営業を含めて人がもし来ていただけるのであれば大変ありがたい」と話した。
ソニーでは、2016年3月期通期での連結業績予想を7月の発表時から修正せず、売上高は7兆9000億円、営業利益は3200億円、税引き前利益は3450億円、純利益は1400億円と据え置いた。
吉田氏は「業績予想は現時点で最善の予想。過去に何度も下方修正を繰り返しているので、さらなる下方修正は避けたい」と慎重な姿勢を見せた。
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