3Dプリンタといえば、近年コンシューマ向けの低価格なものが次々と登場し、アートやインダストリアル業界を中心に人気を博している。このほど、ドイツで開発されたのは「お菓子用」の3Dプリンタ。食品業界に浸透することで、より身近な存在になるかもしれない。
お菓子のグミを作れる3Dプリンタ「The Magic Candy Factory」は、一見、コンシューマ向け3Dプリンタと同じFDM/FFF(熱溶解積層法)モデルの印刷機のようにも見えるが、針の先端から出てくるのは紛れもなく甘くて弾力のあるグミだ。自分好みの味や形のグミをほんの数分で作ることができる。
使い方はいたってシンプル。プリンタに接続されたiPadの画面を見ながら好きな形を選び、印刷ボタンを押すだけ。するとプリンタが稼働し、針の先端からグミが出てきて、立体的に形作られていく。かかる時間は10グラムあたり約5分だ。
先日、ドイツの首都ベルリンでベータ版として展示され、会場に訪れた人たちは1粒5ユーロ(約670円)で3Dプリンタの利用を楽しんだ。1粒5ユーロとグミにしては少し割高な理由は、特製の3Dプリンタの開発に1年以上を要したことと、印刷に使われるグミの材料が特殊であるからだと思われる。
開発元は、1991年創業のドイツの菓子メーカーKatjes。CEOであるBastian Fassin氏が発起人となり、同僚でオーガニック菓子ブランドGoody Good Stuffの創始者でもあるMelissa Snove氏と協働で展開している。
Snove氏は、「コンシューマ向けにリリースされた食品3Dプリンタはこれが世界初ではないか」と語る。同氏は自身のブランドで自然由来の食材を使うことを提唱しているが、一方で3Dプリンタには健康志向に結びつくイメージに乏しいために、開発当初は懸念もあったという。
プリンタで使用されるグミの原料は、乳糖・グルテン・ゼラチンを一切含まず、動物性の原料やアレルゲン性物質も使用していないという。具体的な成分は公開していないものの、主にペクチン、砂糖、果実エキスで構成されているそうだ。現在、グミの素材には、マンゴー・リンゴ・ブラックベリーなど10種類のフレーバーと7種類の色が用意されている。今後はラインアップを増やしていく予定とのこと。
ドイツは世界でも有数のオーガニック大国。特に食品やコスメ用品などには自然由来の食材や素材が使われており、消費者のオーガニックやエコに対する意識も高い。つい先日には、マクドナルドがドイツで国が認証したオーガニック牛肉を100%使ったオーガニック・バーガーの試験発売を発表した。
また、ドイツといえば世界的にも普及しているHARIBOのグミベアも有名だ。こうしたことを踏まえると、自然由来の素材を使ったグミと3Dプリンタの技術掛け合わせというアイデアは、ドイツらしいといえるかもしれない。Katjesによれば、ショッピングモール、遊園地、博物館など、子ども連れの家族が多く集まる場所をターゲット市場と据えているそうだ。日本でもお目見えする日を楽しみに待ちたい。
(編集協力:岡徳之)
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