ウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」では、IoTとVRを軸としてテーマに基調講演やトークセッションが展開された。「地図とウェアラブルデバイスの融合」と題したセッションでは、ゼンリンデータコムの石川和明氏が、研究開発で取り組んできたウェアラブル関連サービスの説明と今後のビジョンについて語った。
ゼンリンデータコムは、「ゼンリンいつもNAVI」など徒歩や電車、車、自転車などのルート検索や渋滞情報、乗換案内などの機能を搭載したナビアプリを個人向けにサービスをリリースしている。また、ゼンリン地図を基盤に、Google Maps APIf for Workやゼンリン地図のAPIやSDKなど地図機能やインターフェースのカスタマイズを自由に行うウェブやアプリケーションに組み込めるサービスなど、法人向けや商用向け地図アプリなど、地図情報をもとにしたソリューションを展開してきた。
「収集した位置情報をもとに移動に伴う業種や業務効率を高めるために、配送管理支援を行う動態管理サービスなどをリリースしている。他にも、観光情報をまとめたサービスや、自転車ユーザー向けにサイクリングコースを作成したりするサービスなど、幅広いサービスを提供している」(石川氏)
石川氏は、Google Gpass の登場によってウェアラブルデバイスが一般化してくる将来を考えたときに、地図や位置情報との連動としてウェアラブルデバイスは親和性が高いと指摘。そこから、ゼンリンデータコムでは地図情報をもとにウェアラブルデバイスの開発やウェアラブルデバイス向けのサービス開発へと取り組みはじめた。そして、3月にはソニーのSmartEyeglass向けに「いつもNAVI for SmartEyeglass」をリリースし、Google Playにて公開。「目的地を探すために情報を検索し、目的地や周辺の情報がARで表示された状態でウェアラブルデバイス越しにナビゲーションが開始される。目的地に向かって光の柱が表示され、そこに向かって歩くことで精度の高いナビゲーションを実現することができる」と石川氏は話す。
SmartEyeglassだけだけでなくApple Watch やAndroid Wearなどの腕時計型ウェアラブルデバイス向けアプリも開発。7月にリリースした「いつもNAVI for Android β」では、目的地を入力したらすぐに目的地に向けたナビがスタートする。また、中国語などの多言語対応ナビや屋内情報も網羅したナビゲーションになっている。また、観光情報をまとめたJAPAN MAPや自転車情報やサイクリングコースを教えてくれるCycle TTなど、腕時計型向けならではのユーザーインターフェース(UI)や操作性をもとにしたナビアプリをリリースしている。
こうしたいくつものウェアラブルデバイス向けのサービスを開発してきた石川氏は、従来のウェブブラウザやスマホアプリ開発とは違い、さまざまなウェアラブルデバイスのディスプレイの特性を考慮したUIデザインが求められると指摘。例えば、メガネ型ウェアラブルデバイスでは両眼タイプと片眼タイプによって視界を覆う情報量の違いがある。それぞれの表示特性などによって限られたディスプレイにおいてユーザーが迷わないための情報量や注視した際に周辺の環境も認識し事故などが起きないようにするデザインが求められる、と語る。
「ディスプレイによるUIデザインを考えるだけでなく、今後はいかにしてマルチプラットフォームに対応する開発をするかが求められる。ウェブ、アプリ、ウェアラブルなどのそれぞれのサービスが連動した、横断的な視野をもった新たなユーザー体験をデザインする必要がある」(石川氏)
今後は、地図情報とウェアラブルデバイスを連動させたコンシューマ向けサービスや本格的な法人サービスの開発に注力していくという。また、地図を含めたナビゲーションが求められる領域として、インバウンドや屋内におけるナビゲーション、さらに位置情報を分析した新たなビックデータサービスの可能性など、ウェアラブルとデータの新たな可能性も開拓していく。
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