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「その時間その場所を共有する」--P2Pコミュニケーションアプリ「AirTalk」にかける想い

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AirTalkの画面 AirTalkの画面

 ウェアラブルデバイスの認知拡大やIoT(Internet of Things)の話題化などを背景に、スマートフォンに搭載されている「Bluetooth Law Energy(BLE)」はユーザーに身近な存在になってきた。

 一般的には、ユーザーのスマートフォンとウェアラブルデバイス、PCと周辺機器を連携させるための手段や、O2Oマーケティングの手段としてのBeacon活用などでBluetoothに触れる機会が多いが、このBluetoothをコミュニケーションサービスとして活用したのが、OFF Lineが開発したiPhone向けアプリ「AirTalk」だ。

 そして、9月18日にはAirTalkの最新バージョンが公開され、パケット料金がかからず周囲にあるデバイスとチャットできるP2Pグループチャット機能、フレンド機能が追加された。

 OFF Line 取締役 最高戦略責任者である盛川英典氏と、同じく取締役 最高技術責任者(CTO)である松山剛士氏に、このサービスの特徴や活用法などの話を伺った。

OFF Line取締役 最高戦略責任者である盛川英典氏(左)と、取締役 最高技術責任者(CTO)である松山剛士氏(右) OFF Line取締役 最高戦略責任者である盛川英典氏(左)と、取締役 最高技術責任者(CTO)である松山剛士氏(右)

パケットフリーで近くの人と交流できるAirTalk

--2013年にOFF Lineを創業された経緯について教えてください。

盛川氏:私たちは2003年にコンテンツ制作やシステム開発を手掛ける有限会社GH9という会社を設立して事業を進めていたのですが、何か新しいテクノロジに取り組みたいと考える中で、IoTやO2Oなどが語られる以前の2011年に松山がBluetooth Law Energy(BLE)に着目し、この技術を発展させておもしろいものと作ろうと研究を始め、資金調達のために事業を拡大したのが、OFF Line創業のきっかけでした。その時に、ビジネスで10年以上付き合いのあった石塚に代表として参画してもらい、ハーバード大の経営大学院でAMP(Advanced Management Program、経営人材養成プログラム)を受けて数々の企業で代表を務めてきた経営のプロである彼の経験で、技術開発畑を歩んできた私たちの足りないものを補ってもらいながら、周囲のさまざまな人を巻き込んで事業を大きくしているところです。資本金は、この事業に期待してくださっている30人ほどの投資家から1億120万円の資本を集めています。

--BLEに着目したおもしろいものを作ろうと研究して生み出されたのがAirTalkなのですね。このサービスの特長について教えてください。

盛川氏:AirTalkは「その場所をもっと楽しく」というコンセプトで開発されたサービスで、近接通信ができるBLEやWi-Fi Directといった技術の特性を活かして、「通信量無料で近くの人とチャットができる」という点をセールスポイントにしています。加えて、GPSなどによるロケーション情報を活用してユーザーが今いる場所をもっと楽しくできるようなサービス、今同じ場所にいるユーザー同士でその場所をもっと楽しめるようなサービスを目指しています。

松山氏:技術的には、写真やテキストコメントなどロケーションベースの投稿を軸としたSNSのようなタイムライン機能と、自分の周りにいるユーザーとP2Pで通信できるLINEのようなチャット機能を組み合わせて提供しています。例えば、モバイル通信やWi-Fiなどの通信回線に一切接続していないオフラインの端末でも、BLEによるP2P通信で他の端末と通信して、周りにいるAirTalkユーザーとチャットできるのです。ユーザーは自分のプロフィールを公開することができ、自分の半径100メートル程度のエリアであれば、他のユーザーとパケット通信を一切使わずにやりとり可能です。

盛川氏:「パケ死」という言葉があるように、スマートフォンユーザーで月末が近づくとパケット通信が使えなくなってしまう人も多いのではないでしょうか。そういう人がコミュニケーションを楽しみたいという場合に、このP2P通信が役に立つのではないかと思います。

「友だちになる前の交流」を促進

--どのようなシーンでの活用を想定しているのでしょう。

松山氏:P2P通信の利点は、通信量を気にせず利用できる「パケットフリー」であるということ、そしてもうひとつが、あくまでこの通信はローカル環境で行われるものなので、不要な情報をネットに保存しないで利用できるということではないかと思います。通信可能範囲を離れたらチャットは終わりで、再接続したらまたリフレッシュした状態でチャットできます。こうした特性を活かして、イベント会場やスポーツ観戦などでひとつの場所、ひとつの目的で集まっている人同士が、お互いの連絡先を知らなくてもその場の楽しみを共有できるのが、このサービスのおもしろいところだと思います。写真もその場でP2Pを介してパケットフリーで共有可能です。

盛川氏:例えば、ビジネスのネットワーキングパーティなどでは、話をしたい人に名刺を交換する前にこのAirTalkでコンタクトして、交流のきっかけにすることもできるのではないかと思います。

「連絡先を知らなくてもコミュニケーションできる」と松山氏 「連絡先を知らなくてもコミュニケーションできる」と松山氏

松山氏:今までのコミュニケーションは、あくまで連絡先を交換した後の交流を支援するものですが、このAirTalkは「まず友だちになる前に交流してみよう」というのがポイントです。そこでコミュニケーションが盛り上がれば、FacebookなどのSNSとも連携しているので、改めて友だちとして繋がっていけばいい。AirTalkはこうした交流のきっかけを支援するような存在になればいいと考えています。また、災害時などでインターネットやWi-Fi通信が使えない場合に、BLEを使ったローカル通信は役立つのではないでしょうか。

 ちなみに、AirTalkを起動して最初に表示されるのは、自分の周りにいるAirTalkのユーザーで、知らないユーザーも表示されます。過去AirTalkで交流したユーザーにFacebookなどのSNSを連携させると、それは「Facebookで繋がっているユーザー」として表示される仕組みです。もちろん、プライバシーの保護には配慮をしており、自分のいる位置は細かいところまで特定できないよう工夫をしています。

--セキュリティ面ではどのような工夫をしているか教えてください。

松山氏:セキュリティ面はかなり厳格に運用しており、特にロケーション情報の管理と不快な投稿の監視、削除は徹底しています。いわゆる「出会い系」として悪意のある利用を防止するために不適切な投稿は厳しくチェックし、機能面でもセキュリティを強化していく予定で、ユーザーには安全、安心にサービスを使っていただきたいと考えています。

検索不要で情報取得

--タイムライン(ポスト)にはどのような機能があるのでしょうか。

松山氏:タイムラインはすべてのユーザーが閲覧できますが、投稿するユーザーは閲覧できるユーザーの距離や閲覧期限を設けられます。閲覧期限の設定は一定時間を経過した投稿は非表示にすることができる機能で、デフォルトでは投稿から1週間で非表示になります。一般のSNSでは投稿した内容がずっと残り続けますが、それに対してAirTalkは、投稿が自動的に消えていくという機能を持たせることで、ユーザーに常に鮮度の高い情報を掲載しておけるという安心感を与え、気軽に投稿できるようにしています。

盛川氏:AirTalkはP2PやGPSを使い、「今いる場所」に関する情報がポストされることを想定しているので、その情報の賞味期限があるのではないかと思うのです。ずっとユーザーのタイムラインに情報が残り続けていても、おもしろみがないでしょう。このサービスには、その時間にその場所にいる人たちの中で情報を共有してもらいたい、コミュニケーションしてもらいたいという思いがあるので、投稿の表示期間は1週間程度が適切だろうと考えました。

--「その時間、その場所を共有する」というコンセプトは理解できました。では、より具体的な活用法は?

松山氏:街中のグルメスポットやお勧めのショップを共有したり、ライブやイベントの会場で集まったファンが情報を交換したりするツールとして活用できるのではないかと思います。

 もともとこのサービスを開発したときには、ローカルのコミュニティをどれだけ充実させられるかということに主眼を置いていました。店舗にとっては、インターネットに広告やクーポンを展開して広く集客するという方法ももちろんありますが、いまお店の近くにいる人たちに効果的にお店のアピールができるようなものがないか、駅に降りた人たちにその駅周辺のタイムリーなおすすめ情報が検索しなくてもまとまって表示されるようなツールがないか、少しの空き時間に立ち寄れるようなお店がすぐ見つけられないか……。このような自分自身に身近であり、かつ自分のいる場所に関連性の高い情報を的確に届けることで、今まで知られていなかったエリアの魅力が伝わるツールになるのではないか、情報発信の形を整理して自分の近くにいる人たちに発信できることで、狭いエリアのコミュニティやお店の商圏が活性化するのではないか、などなど考えました。

 このサービスは、基本的に街に根差して、そのエリアの価値ある情報が集まる仕組みを目指していて、街が変われば表示されるお店の情報やクーポン、遊びのスポットといった情報もすべて変わっていくでしょう。すぐに自分がアクションを取れる範囲内の情報が集まって、もっと楽しく便利にお得にというのが大きなポイントです。地図アプリとも連携しているので、気になるスポットにはすぐにナビ機能を使って行けますし、ユーザーの面倒な操作を減らせます。

--このサービスを成功させるためには、ユーザー数が大きなカギになるのではないかと思います。どのような戦略を考えているのでしょうか。

「まずは10万ユーザーを目指す」と盛川氏 「まずは10万ユーザーを目指す」と盛川氏

盛川氏:ユーザーにこのサービスを便利だ、お得だと思ってもらうために、まずはあらゆるエリアで有益な情報が提供できるようにスポット情報やクーポンといったコンテンツの拡充が重要ではないかと考えています。まずは10万ユーザーをブレイクスルーのポイントと定めてコンテンツを拡充し、その後はUGCとパートナーコンテンツの両輪で情報量を増やしていく計画です。

 加えて、イベントとタイアップすることで、イベント内で使えるお得な情報を提供したり、イベント参加者同士でテキストや写真によるP2Pのコミュニケーションが楽しめたりといったイベントマーケティングによるユーザー拡大、そしてTwitterなどのSNSと連携したソーシャルメディアマーケティングによるユーザー拡大も進めていきたいと考えています。

 また、パケットフリーというP2P通信の特性はAirTalkの大きな武器になると思うので、パケット不足に悩むティーン層が近くの友達とコミュニケーションする手段として、大きなニーズにリーチできるのではないかと考えています。そして、通信手段が失われる災害時のコミュニケーション手段としてのニーズも喚起していきたいです。AirTalkはBeaconも発信するので、災害時には近くにいる人を探し出す手段としても活用でき、インターネットが利用できないシーンでも連絡手段、情報共有手段として活用できるのではないかと思います。地域の防災や病院内での見守りツールとしても訴求していきたいですね。

 このサービスは機能や活用法が多岐に渡っていて、そういう意味ではTwitterに似ているのではないかと思います。AirTalkは情報収集手段としても、コミュニケーション手段としても、共有の手段としても、マーケティングの手段としても使うことができる、ロケーションに根差した情報とコミュニケーションのプラットフォームアプリであり、マーケティングのアプローチも多岐に渡ります。だからこそ、まずはユーザーにわかりやすいベネフィットである「楽しい」「お得」を打ち出していって、そこにさまざまな便利さを加えていきたいですね。そこに付け加えて「パケットフリー=通信料無料」であるという強みを訴求していければと考えています。ターゲットに応じてAirTalkのどのようなベネフィットを打ち出していけば良いのかを重視してマーケティングを考えていきたいです。

リアルタイム×リアルロケーションを収益化の武器に

--マネタイズのモデルはどのようなものを考えていますか。

盛川氏:私たちは、AirTalkをプラットフォームだと考えているので、この仕組みをOEMで提供できるのではないかと考えています。P2PやWi-Fi、クラウドを連携させてここまでのサービスを生み出した技術基盤を確立しているという自負があるので、このインフラを防災アプリや見守りアプリに活用してもらったり、店舗オリジナルのアプリに導入してもらったりすることで、収益に繋がるのではないかと考えています。防災や見守りという面では公共団体への提案も進めていますし、AirTalkに搭載されたセキュリティ機能を活用した電子処方箋なども構想しているところです。

 加えて、いろいろな店舗が自主的に情報を投稿してくれるようになれば、そこはマネタイズの大きなチャンスではないかとも考えています。店舗専用の管理画面アプリなどを提供して、AirTalkに広告を出せる仕組みを作っていけば、マネタイズは一定の成功に繋がるのではないかと考えています。「リアルタイム×リアルロケーション」という高いコンバージョンが期待できるユーザーにターゲティングができるという価値を活かして単価の高い広告が展開できるのではないでしょうか。

--今後、このP2P通信の仕組みを活かした音声通話などの構想はありますか。

松山氏:P2P通信を活かした音声通話は技術的には可能です。ただし、音声通話は大きな通信帯域を必要とする機能であるため、果たして音声通話を盛り込むことがユーザーの利便性に繋がるか、私たちが実現したい方向性に合っているかどうかは慎重に判断すべきだと考えています。まずは広い通信帯域を占有してしまうような機能ではなく、その通信帯域を幅広い目的で活用してもらうため、例えばチャット機能の中で音声メッセージを送れる機能などは構想しているところです。

 また、AirTalkのP2P通信は「Aさんが送った情報を、Bさんを経由してCさんに送る」というBluetooth接続をブリッジすることには技術的に対応できるので、Bluetoothを活かした遠距離通信も可能で、災害時の応用も期待できます。しかしこれも、どのような形で機能として実現すればいいかを今後考えていきたいと思っています。

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