Wearable Tech Expo 2015

ニュースの変革、“読む”から“身に着ける”へ--Wearable Tech EXPO 2015 - (page 2)

IoTによって、ニュースにはどのような変革が生まれるのか

 あらゆるモノにインターネットに繋がるという「Media of Everything」の時代が到来したことで、既存の伝統的なニュースにどのような新たな“Z軸”を加えられるのか。

 竹原氏は、朝日新聞メディアラボの実験的な取り組みとして、ニュース記事を元に製作した画像やイラスト、タイポグラフィなどをバッグや衣類に組み込んだ電子ペーパーに表示させ、ファッションとして身に着けられる「Wearable News」を紹介した。「ニュースがファッションとコラボレーションしたら何が起きるのか。“ニュースを着る”とはどういうことなのか。その可能性を模索しようとチームの若手が考案した」と竹原氏は説明する。「“読む”から“身に着ける”へ。こういうワクワクするような“Z軸”を生み出すことで、将来のファッションやニュースとの関わり方も変わるのではないか。」(竹原氏)。また、Wearable Newsは、朝日新聞が日々製作するグラフィックや撮影する写真の新たな活用シーンとなるだけでなく、一般ユーザーからの投稿プラットフォームとしても可能性があると期待を込めた。

  • ニュース記事に掲載された画像やイラストなどをバッグの電子ペーパーに表示

  • 朝日新聞のコラムに掲載された名言などから作成したタイポグラフィ

 また竹原氏は、「IoT時代においてはニュースを音声で伝えるシーンが多くなってくるのではないか」と語り、ソフトバンクのヒューマノイドロボット「Pepper」を使った実験的な取り組みを紹介した。これまで朝日新聞メディアラボでは、編集会議の司会やキッザニア東京で実施している職業体験のコンパニオン、夏祭りへの参加などにPepperを試験的に起用しており、コミュニケーションの活性化や情報伝達の効率化などに手ごたえを感じているという。「情報とPepperがコラボレーションすることで、面白い世界を創り出すことができる」(竹原氏)。


会場で上映された、Pepperに新聞記事を読ませる実験の動画

 しかし竹原氏は、Pepperに新聞記事を読ませるという実験動画を2つ上映し、このコラボレーションにひとつの課題を挙げた。1つ目の動画は、新聞記事を掲載されたままの状態でPepperに朗読させるもの。Pepperは記事の内容をスムーズに読み上げたものの「聞いているとだんだん眠くなってしまう。Pepperも最後まで読み終わるまで時間が掛かり、最後は4倍速で読み上げた。4倍速で朗読できるPepperはすごいが、ただ新聞記事を朗読するだけでは(聞く方は)大変だ」と竹原氏は振り返る。

 一方、2つ目の動画は、「もしもPepperが記事の内容を解釈し、会話の中に盛り込むことができたら」という仮説に基づいて実験されたもの。動画の中でPepperは、「今日はとっても暑いね」という問いかけに、全国で猛暑が続いているというニュースの要点を伝えたり、そのニュースを受けて「そうなの?」と問いかけると詳しい内容を話したりする。さらに「いつまで続くの?」という問いかけに記事には、掲載されている今後の見通しを話した。記事の要点を会話の中に織り交ぜてくれるので、聞いている方も自然と内容を理解できる。


ヒューマノイドロボットを中心としたライフスタイルの構想図

 この実験のポイントについて、竹原氏は「ひとつの文章で的確に要点を伝えることで、より自然に内容を受け取ることができるようになる。こういったことは、色々な情報を集めるメディアとして今後研究していかなければならない分野だ。ビッグデータも活用して、どのようなシーンでどのような情報をプッシュしていく必要があるかを研究することも重要だ。こうした取り組みがメディアのパラダイムシフトを少しずつ起こしていくのではないか」と語る。“紙のメディアだからニュースは紙に載せる”だけではなく、これまでにない形でニュースをアウトプットしていくものとして、ロボットは興味深い手段のひとつだという認識を示した。

 「ロボットがニュースだけでなく様々な家電やデバイスと繋がり、そこに情報とコンテンツが加わって人とのコミュニケーションが自然になればなるほど、そのロボットはどんどん使いやすくなる。さまざまなものが繋がっていくことが重要だ」(竹原氏)。

 最後に竹原氏は参加者に向けて、朝日新聞メディアラボが行っている支援として、9月に稼働したスタートアップ支援プログラム「Asahi Shinbun Accelerator Program」や、10月にリニューアルを予定しているクラウドファンディングサービス「A-Port」を紹介。そして、「多くの人が集まり繋がって、既存の価値観に“Z軸”を生み出すことができれば、そこにこれまでなかったような新しい体験や文化が生み出される。その思いをWearable Tech EXPOで確かめ合い、ここから更に拡げていくことができれば」と参加者に呼びかけ締めくくった。

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