また、今後の人工知能の発展の方向性について、議論のキーワードとなったのが"合理性"だ。
林氏は「先日渡米してよくわかったのが、イノベーションというのは、"非合理性"をベースにしてるから起きるのではないかということ。大企業のような大きな組織になると、どうしても失敗の確率を含めた合理性を含めた結果としてありきたりな解しか出てこない。一方で、人間がAIと違う部分っていうのもやはり非合理性にある。感情的に思い入れてしまうみたいなのも含めて突破力になっているのではないか。これが人工知能だと冷静に考えてしまうから、人間と人工知能って全然違う答えが出てくるのではないか」と述べ、人工知能が発展できる要素として一般的には合理的な方向にしか向かわないと結論づけた。
また、中野氏も「例えば非合理性の際たる例としては、広い意味での宗教とか宗教のパラダイムというのが挙げられる。必ずしも自明ではないものを自明のものとして受け入れたり、そういう前提に立ったほうがおもしろかったり新しいものができるというのが、人間が非合理性を持っていることの合理的な説明になるのではないか」と続け、そうしたものを改めて人工知能に実装する意味を問いかけた。
しかし、堀江氏は「それは人工知能が結果の予測がつけられないからではないか。でもそれは確率論でなんとかなるような気がする。例えば成功の確率がほとんどないから、成功した時のリターンもわからない。成功した時のリターンがわからないと、計算できないということ」と少し違った見方を示す。
その一方で「結論として太古の昔から生物はそれをずっとやってきた。だから巨大隕石が落ちても生き残る人間がいたりとか。本当は生物もちゃんと合理化してプログラムしていけばいいのだけれど、そこに隕石が落ちたりすると、限られた環境でしか生きられないから生き残れない。でも非合理な環境で生きてきた生物がいたからこそ今僕たちの存在がある」と述べ、生存能力の視点から人間と人工知能との違いを考察した。
これを受け、中野氏も生物の生存上の"最適戦略"と"好適戦略"の違いについて触れ、次のように説明した。
「最適戦略というのは、その環境に適応するために極限までチューニングすること。一方で、ある程度適応してしまったらそこで適応することを止めるのが"好適戦略"。ピッタリとそこに適応するための努力を完全にしきるのではなく、"遊び"を残しておくという戦略だが、そういう種のほうが実は生き延びやすいと言われている」
これに対し、堀江氏も「だから最近は、保守的な人たちが多いのかもしれない。どちらかと言うと好適戦略ですよね。僕はずっとどちらかというと、革新、イノベーションみたいなタイプで、いつまでも現金を使っている人に、カードを使えばいいのにと思ったりしている。でも、カードのネットワークが止まりましたみたいなときには、そういう人たちが"現金で払えばいいじゃん”みたいなかたちで生き残ったりするんでしょうね」と語り、会場の笑いと共感を誘ってディスカッションを締めくくった。
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