Wearable Tech Expo 2015

最後に残る仕事はエンタメ産業か--堀江氏らが語るロボット社会での人間のあり方

 9月7~8日に開催された「Wearable TECH Expo 2015」。8日に行われた「AIとロボットのある社会、人の存在はこうなる」と題したトークセッションでは、SNSファウンダーの堀江貴文氏、脳科学者の中野信子氏、ロボット開発者の林要氏をパネリストに迎え、人工知能(AI)やロボット技術の普及に伴う社会的な課題や、人間社会との理想的な共存関係について話し合われた。


ロボット開発者の林要氏、脳科学者の中野信子氏、SNSファウンダーの堀江貴文氏

 まずは昨今、よく聞かれる"AIは人間を超えるのか?"がテーマとなった。何をもって"超える"とするのかなどの定義づけが必要ではあるものの、将来的に、世の中のすべての労働力がコンピューターやロボットに置き換わり、人間が何もせずに暮らしていける理想郷のような世界が訪れるのか。これについては、もはやAIや人工知能の話ではなく、資本主義や社会システムについての話であるというのが3人に共通した見解だ。

 「記憶という点で言えば、すでにコンピューターの性能は人間を上回っているし、そういう意味ではすでに超えているとも言える。人間が遊んで暮らすような世界も、すでに一部の人たちには起きている。ロボットというのは、単純に人間の労働コストとなる道具にすぎない」と堀江氏。

 さらに、「農業生産もどんどん自動化してきていて、米国なんかだとトウモロコシとか小麦とかは全部機械が作っている。安く大量に作って、Googleとかの広告モデルを採用すれば、多分それらをタダで配れる。でも一方で、辛くて苦しい労働でも、この仕事がなくては生きていけない、食べていけないと思い込んでいる人がやっぱり多い。"働かざる者食うべからず"というのは、朝から晩まで皆で必死に働いて耕作をしていた時代の道徳で、今は過渡期の状態」(堀江氏)と斬る。

 これに対し、Pepperの生みの親として知られる林氏も「繰り返しの作業をうまくやれるようになってきたのが人工知能。今問題にしなければならないのは、そこを超えた部分にある」と唱える。「人工知能の頭のよさというよりも、利害関係が一致しない人々をどのように仲裁していくか。そうなると、身体性を持たない人工知能というのは、人間と同じようには発達していかないと思う。ゆえに、人間を超えるとか超えないではなく、新しいツールが登場してくるのではないか」と、ロボット開発者の立場から見た、人工知能の可能性を語った。

 また、AIの分野では、人間の脳をスキャンしてそれをそのまま再現しようとする動きがあり、これを脅威に感じている人も多い。しかし、脳科学者である中野氏は「そもそも脳というのは優れた器官とは思わない。なのにそれを真似ようとする必要性を感じない」と疑問を呈する。

 「人々が苦しみを感じる原因になっている最大の元凶が脳。種の存続性のために、人間をはじめとする哺乳類は、個体を犠牲にして次の新しい個体を生み出さなければならないという使命がある。それゆえに、その折り合いをつけるために理性をつかさどる脳を麻痺させて生殖活動を行わせている。しかし、生命性を持たないロボットには、わざわざ人間の真似をしてそんな苦しい状態を生み出すような器官をギミックする必要はない。むしろ人間にとっては、その仕事を奪うようなAIが出てきては困るといういう路線のほうが大きいのではないか」と中野氏は指摘する。

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