Airbnbへの対抗は--フランス発の空き部屋シェアサービス「Bedycasa」

 旅先で地元の人の家に泊まることで、旅をもっとヒューマンな体験に変えたい――これは、Airbnbのメッセージではない。“宿泊業の民主化を”とフランスで空き部屋シェアサービス「Bedycasa」を立ち上げた起業家Magali Boisseau氏の言葉だ。

 実際、Boisseau氏はAirbnbの1年前にBedycasaを立ち上げた。グローバル展開に長けたシリコンバレーのスタートアップにどう対抗するのか、Boisseau氏に聞いた。


Bedycasaを立ち上げたMagali Boisseau氏

――Bedycasaの設立について。どのような経緯で、いつ始まったのか。

 設立は2007年4月。それまでは、企業のブランドマーケティング担当として1年の半分以上が出張という生活だった。その頃に、地元の人の家に住んでリアルな体験をしたいと思ったことがきっかけだ。子どもの頃から自宅に来客が多く、自分自身も家に人を呼ぶのが好きだったが、本格的に考えるようになったのはこの頃だ。“Bed&Breakfast”のBed、ゲストルームを意味するスペイン語“Casa Rural”のCasa、そして“You”のYを中心に入れて、Bedycasa(Bed-Y-Casa)とした。

 設立時の目標は、旅行の民主化(デモクラタイズ)。学生のときにホテルに泊まるお金がなく、宿泊業界を民主化したいと思った。旅行者は地元の人の家にステイすることで、さらに豊かな体験を得られ、ホストは自宅に旅行者を滞在させることで、使っていない空間をちょっとした売り上げに変えることができる。また、来客により収入だけではなく、生きがいを得られたという老婦人もいる。


「Bedycasa」

 最初は、当時知り合いになった友達にホストになってもらった。スタート時に約60カ国で100人ぐらい。それから5年は口コミで広まった。現在、約160カ国で4万7000軒以上の宿泊施設がある。ただ、仕事の出張など、24時間の受付があり、部屋の清掃などのルールが明確なホテルの方が適していることもある。我々のようなサービスとホテルの2つは今後も共存していくと考えている。

――その後、Airbnbが立ち上がった(Airbnbは2008年8月)。

 Airbnbが登場してからしばらくは、苦しい時期になった。同じような機能をもち、顧客やホストのメリットも同じようなものだったからだ。だが、AirbnbのおかげでBedycasaの意義やバリューを突き詰めて考えることができた。また、それまでなかなかフランスのベンチャーキャピタルから資金調達ができなかったが、Airbnbのおかげでシェアリングエコノミービジネスについての認知が広まり、投資を受けることもできた。

――巨大な資金とマーケティングノウハウを持つAirbnbにどのように対抗する。

 1つめとして差別化を図る。Airbnbはボリュームだが、Bedycasaはクオリティにフォーカスしている。地理的にはフランス、スペイン、イタリアなどが中心で、ホームステイ、トレーニングや教育などの市場を得意としている。Airbnbのように急成長が要求されている企業は常に投資家に説明しなければならず、大きなスケールが得られない市場には目が向かない。ここは我々の強みだ。


 ただし、Airbnbが生まれたから教育市場にフォーカスしたのではない。14歳のときに国外にホームステイしたときからアイディアを持っていたし、創業前の2006年に市場調査をした。その際に、ホームステイや教育旅行市場は技術志向でないことが多く、効率化が図れていないことが分かった。その結果、語学など学習目的の旅行は割高になっている。Bedycasaはホームステイ市場によいインパクトを与えていきたい。

 たとえば、ほかの地方の大学への入学が決まった学生が、最初の2週間をBedycasaで探した地元の人の家に住み、ホストと情報交換しながら土地勘を得て、正式なアパート探しをしたという体験談が寄せられている。現在、学びと宿泊が結びつくようなさまざまなアイディアを進めており、期待してほしい。

 2つめが起業家同士のエンパワーメントだ。フランスの起業家が集うグループで情報交換をして、学びあっている。

――差別化とするクオリティをどのようにして実現するのか。

 サービスのベータテストをする“アンバサダー”が約50人おり、実際に訪問してチェックしている。サイト上で施設を掲載する際も、専用の担当者がおり72時間でアクティベートされる。顧客サービスは週6日サポートを提供している。

――ビジネスモデルはAirbnbと同じコミッションとなるが、黒字化は。

 同じシェアリングエコノミーだが、課金の方法が異なる。我々はホストから15%を得る仕組みだが、Airbnbは10.5%の料金をサービス料として徴収しており、ホストからも3%のコミッションを得ている。この結果、ほとんどの場合でBedycasaの方が安くなる。Bedycasaの平均は、パリの場合1人1泊35ユーロ程度だ。€

 2014年は意図的に拡大をやめてコアにフォーカスした。創業以来一番難しい時期となったが、その結果2015年5月に黒字化を達成できた。ホストと旅行者のおかげだと感謝している。

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