がん治療を変える、Pepperへの搭載も--人工知能「IBM Watson」の可能性

 ソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2015」が7月30~31日の2日間にわたり開催中だ。今年も数多くの企業が講演しているが、ひときわ存在感を放っていたのが、IBMが開発を進める人工知能「Watson(ワトソン)」。両日のほとんどの時間帯に、Watsonのセッションが設けられているほどだ。

 Watsonは、ウェブサイトの情報やSNSへの投稿、IoT端末のセンサ情報など、膨大なデータを分析することで、自然言語で投げかけられた質問の内容を解釈し、根拠に基づいた回答を提示する質問応答システム。人と同じように情報から学び、経験から成長することが特徴で、IBMではWatsonを“コグニティブ・コンピューティング”と呼んでいる。


人工知能「Watson(ワトソン)」

 たとえば、「38℃以上の高熱が数日続き、首のリンパ節が腫れている」と質問されたとする。すると、Watsonは「高熱が続く症状としては『インフルエンザ』や『風疹』が考えられるが、首のリンパ節が腫れるのであれば『風疹』である可能性が高い」というように、根拠をもとに多様な評価軸から正解を特定する。もちろん、その答えを導き出した情報ソースもすぐに確認できる。

 7月30日の基調講演で登壇した、IBMワトソングループ上級副社長のマイク・ローディン氏は、常識や倫理、想像力といった人間だからこそ持つ優位点と、パターン認識や機械学習、偏りの排除といった人工知能の強みを組み合わせることで、人類の進化の速度さらに飛躍させられると語る。

 もともとはIBMの基礎研究として2011年に生まれたWatson。米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」に挑戦し、約9割という高い正答率で最高金額の賞金を獲得したことから、実用化に向けた開発が始まった。2013年には開発者向けのAPIも開放しており、いまでは世界中の事業者がWatsonを使ってサービス開発や研究をしている。

  • IBMワトソングループ上級副社長のマイク・ローディン氏

  • 膨大なデータを分析して、最適な回答を提示する

  • 人間と人工知能の強みを融合することで、人類の進化を飛躍させられるとローディン氏

  • Watsonの4年間の歩み

  • WatsonがITシステムにもたらす価値

  • 幅広い分野での活用が期待されている

 資産運用やコンタクトセンター支援、さらにウィンブルドンでの“テニスの専門家”など、すでに幅広い領域で活躍しているWatsonだが、中でも引き合いがあるのが医療分野だ。患者の症状に対して参考になる情報を提供して、医師の診察をより迅速にしたり、過去の文献や化合物などの情報から新薬開発のヒントを見つけ出せるのではと考えられているためだ。

 また「がん治療」には、2012年から活用されていた。IBMはウェルポイント社とメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのそれぞれと協力し、1年以上かけてWatsonにがんに関する情報を学習させた。その内容は、60万件以上の医学研究結果、42誌の医学専門誌に記載された200万ページのテキストと臨床試験データ、患者の経過など150万件のがん治療履歴のデータなどで、いまでは数秒でこれらの情報を根拠に、医師に治療法を提案できるまでに進化しているという。


がん治療に活用されている

 さらに7月30日には、日本IBMが東京大学 医科学研究所とともに、データ分析ツール「Watson Genomic Analytics」を新たながん研究に役立てることを発表した。がん細胞のゲノムを調べ、それぞれのがんに合った治療を提供する個別化医療の実現を目指す。なお、北米以外の医療研究機関で同ツールを利用するのは、東京大学が初めてとなる。

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