電化製品や家具、アクセサリーなど、さまざまな“モノ”がネットワークにつながるIoT(Internet of Things)が注目を集めるようになって久しい。しかし、家電量販店に足を運んでも、いまだにネット接続できる家電はごく一部で、誰もが日常的に使えそうな製品となるとさらに限られる。
こうした現状に危機感を抱き、あらゆる産業のIoT化を加速させることをミッションに掲げているのがStrobo代表取締役の業天亮人氏だ。同社は7月24日に、メーカーが自社製品を簡単にIoT化できるソリューション「Strobo IoT Suite」(IoT Suite)を発表し、パブリックベータに参加するメーカーの募集を開始した。
Strobo IoT Suiteは、製品のIoT化に必要な(1)ネット連動のセンサやアクチュエータ、(2)クラウドシステム、(3)アプリ開発用のSDK(ソフトウェア開発キット)の3つをまとめて提供するソリューション。メーカーは、センサデータをクラウドに蓄積して、IoT製品とスマートフォンアプリをリアルタイムに連携できるようになる。まずはiOSから対応する。
業天氏がIoTベンチャーを立ち上げるのは2度目となる。1度目は、東京大学工学部に在学中に起業し、スマートフォンを家電のリモコンに変える「Pluto(プルート)」を開発。家電のリモコンと同じ赤外線信号を発信することで、自宅の家電を買い替えることなくスマート家電を実現する製品だったが、自社のみで製造から販売、サポートまでを手がけることに限界を感じたと振り返る。
「本来は技術一点に集中しないといけない一方で、やるべきことも多かった。すでに大手メーカーが解決している課題に、ハードウェアベンチャーが再び苦闘しないといけないことに疑問を感じた」――そこで業天氏は自ら立ちあげた会社を退職。あえてメーカー向けのIoT開発ツールを提供することを決めたという。
ただし、プラットフォームを用意するだけでは、実際に多くのメーカーに使ってもらうことは難しい。そこで、同社ではIoT Suiteを活用した2つのデモ製品を開発中だ。1つ目がスマートクッション「cuxino(クッシーノ)」。会社のイスの上に置いて座ることで、姿勢をリアルタイムに評価し、悪い姿勢が続くとスマートフォンが振動して伝える。
cuxinoは、他のIoT製品やウェブサービスとも連携できる。たとえば、出勤時に座るだけでチャットサービス「Slack」に自動投稿したり、悪い姿勢が続いた時にLED照明「Philips hue」が赤く光って知らせるといったことが可能。また、仕事中に席を立つと自動でPCにスクリーンロックがかかるオートセキュリティ機能も実装しているそうだ。
2つ目の製品が、スマートフォン連動ベッド「mikazuki(ミカズキ)」。睡眠の様子を分析して、目覚めやすいタイミングでスマートフォンのアラームを鳴らしたり、他のIoT製品と連動して、目覚めに合わせて照明やエアコンを自動で起動してくれる。アプリでは、眠りに落ちた時間や眠りの深さなど、複数の指標をグラフで確認できるという。なお、ベッド自体を製造するのか、シーツやマットレスを追加で装着するのかは、今後の提携メーカーによって異なるという。
「やはりベッド本体はベッドメーカーが作った方が良い。かといってベッドメーカーがソフトウェアまで手がける必要はない。(IoT Suiteによって)効率的に各メーカーのIoT製品が作られるようになれば、将来的には家電を横断した連携もできるかもしれない。あらゆるものを自動化することで『家のことは家が自分でやる』、そんな生活空間をデザインしていきたい」(業天氏)。
IoT Suiteの価格については、7月24日に開始したパブリックベータに参加するメーカーとのヒアリングや、実際に製品を利用した顧客の反応を見ながら検討するとしている。また、健康志向の企業にスマートクッション「cuxino」を一括で導入することなども検討していきたいとした。
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