連載第2回目で、消費者向けドローン市場で70%という圧倒的シェアを誇る中国・深センのスタートアップDJIを紹介した。同社の主力モデルは低価格でありながらハイクオリティの空撮ができる「Phantom」シリーズだ。
ただ、DJIが消費者向け市場で今後もトップシェアを維持できるかどうかは定かではない。競合企業が次々と低価格で高性能なドローンを投入してきているからだ。
現在、日本でPhantomとともに知られているのは、元WIREDの編集長クリス・アンダーソン氏が率いる3Dロボティクスの最新ドローン「Solo」だろう。しかし、筆者が住むシンガポールに加え北米などでは、日本であまり知られていないドローンが人気を集めている。
その筆頭がHorizon Hobbyの「Chroma」、そしてYuneecの「Typhoon Q500」 。特にChromaはサイズがPhantomとほぼ同じで、「Phantomキラーになるだろう」(業界関係者)と言われているドローンだ。Typhoon Q500は安定した空撮が可能で、筆者はTyphoon Q500を購入するかPhantom3を購入するか、最後まで頭を悩ませたほどだ。
今回は、ChromaがPhantomキラーと呼ばれる理由に迫ってみたい。
ChromaがPhantomキラーと呼ばれるのには、相応の理由がある。Phantomとの主な比較項目は、価格、カメラ・ジンバル、飛行時間、操作性、携帯性の5つが挙げられるだろう。結論からいうと、価格がほぼ同じという点を除いて、カメラ・ジンバル、飛行時間、操作性、携帯性の4つでChromaに分があるように思える。
Chromaには4Kカメラを搭載した最上位モデルから、カメラとジンバルが付属していないモデルまで4モデルが用意されている。このうち、Phantomと比較されうるのは、4Kカメラ搭載モデルとその下位モデルであるフルHDカメラ搭載のモデルだろう。
この2モデルの価格は、4Kカメラ搭載モデルが1299ドル、フルHDカメラ搭載モデルが1099ドル。DJIの4K映像が撮影できるドローン、Phantom3 Professionalが1259ドル、そしてフルHDカメラ搭載のPhantom3 Advancedが999ドルと価格でみると、Phantom3に分があるようにみえる。しかし、他の項目を比較すると、Chromaの優位性が明確になる。
ます、カメラ・ジンバル。この項目では、カメラコントロールのスムーズさに大きな違いを感じる。前回も書いたように、Phantom3でスムーズに映像を撮影するためには、機体のコントロールをしっかり練習する必要がある。特に、Phantomはカメラを振るときの微妙なコントロールが非常に難しいが、ChromaはPhantomに比べ微妙なコントロールがしやすいといえる。
飛行時間は、Chromaが優位だ。Phantom3の最大飛行時間は23分とされているが、実際4K動画を撮影しながら飛ばしてみると17~18分ほど。最大飛行時間とは、動画撮影なしでのものと考えていいだろう。一方で、Chromaの最大飛行時間は30分で、実際動画撮影しながら飛ばしても20分以上の飛行が可能だ。ドローンで空撮をする人ならお分かりかもしれないが、同じ場面を撮影するにも、何度か撮り直す必要があり、飛行時間は極力長い方が好ましい。その点で、Chromaの飛行時間は魅力的だ。
操作性についても、ChromaにはPhantomにはないフライトモードがあり、空撮のバリエーションを考えると、Chromaに軍配が上がる。Chromaで特筆すべきフライトモードは、「フォローミーモード」と「トラックキングモード」だ。
フォローミーモードとは、Chromaが高度とカメラアングルを維持しながらコントローラーを持つ人を追いかける機能。たとえば、自転車や自動車で疾走する場面をChromaで追いかけながら撮影することが1人でできる。トラッキングモードは、フォローミーモードと似ているが、カメラが常にコントローラーを持つ人に向けられるという点で異なる。どちらも移動シーンやアクションシーンを1人で撮影したいときに重宝する。
次に携帯性についてだが、Chromaは足とカメラ・ジンバルを取り外せ、コンパクトに収納できる点で、Phantomより優れているといえる。現在、筆者がPhantom3を持ち運ぶ際は、かなり大きなバックパックに入れている。かさばっている原因は足とカメラ・ジンバルだ。コンパクトに持ち運びができるのなら、それに越したことはない。
市場シェアを失いたくないDJIがこうした状況を黙って見過ごすはずはないだろう。同社主力モデルのPhantomやInspireなどに競合プロダクトの良いところを取り入れ市場に投入してくる可能性は十分にある。今回紹介したChromaのような競合プロダクトを考慮すると、今後DJIは、カメラ・ジンバル性能、バッテリ性能、携帯性の改善や空撮バリエーションの多様化などの対策を取ってくるのかもしれない。
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