縦読みスクロールのフルカラー漫画アプリ「comico(コミコ)」が5月末に累計1000万ダウンロードを突破した。2013年10月のサービス公開から、約1年半での大台達成となる。これまでに4500を超えるユーザー作品が投稿され、原稿料が発生する「公式作品」は100作品以上生まれているという。
スマートフォンに特化したオリジナル漫画の領域では先行していたとはいえ、そのわずか2カ月後にはディー・エヌ・エーの「マンガボックス」が、さらに2014年9月には集英社の「少年ジャンプ+」が登場するなど、競合サービスがひしめく中、なぜcomicoは支持され続けたのか。今後目指す方向性やマネタイズ、海外展開なども含め、サービスを運営するNHN PlayArt代表取締役社長の稲積憲氏に聞いた。
稲積氏 : 我々が想定した中では、非常に良い形で読者層が広まったと思っています。もともとIP(知的財産)を持っていませんし、フルカラーで縦スクロールという独特な手法で、作家さんにとっても馴染みがなく描きにくいことがハードルだと認識していましたが、この1年半で作品も増えてきました。ただ、まだまだこの描き方が浸透しているとは言えないので、環境を整備していく必要があると思います。
またIPについても、もっと個々の作品を育てていかなければと思っています。作品の書籍化やアニメ化は始まっていますが、実写化や舞台化、さらにゲーム化なども考えています。そうすることで、アプリの外からcomicoのことに気づいてもらえるきっかけになるかもしれません。そういった好循環を作りたいと思っていまして、まだ始まったばかりです。
稲積氏 : スマートフォンで楽しく漫画が読める、これに尽きると思います。紙の雑誌だと、どうしても紙面に制限がありますが、comicoでは毎日更新される数多くのオリジナル漫画を無料で読むことができます。
また、漫画単体の面白さで言えば紙の漫画の王道タイトルの方が強いかもしれませんが、それでも皆さんが毎日comicoにアクセスするのは、漫画についての意見を言い合って共感しながら読めること。また内容についてコメントすると作家さんが反応したりする、読者と作家の距離が近いところだと思います。そうしたコミュニティを含めた楽しさを感じていただいているのではないでしょうか。
稲積氏 : 当初は新しいサービスに興味のあるアーリーアダプターの方に利用され、そこから口コミで広がっていましたが、母数が広がるにつれて漫画好きの方や、暇つぶしに利用するライトな層も増えてきました。男女比では若干女性の方が多いですね。年齢層は若い方が多いので、学園ものの作品などが人気です。
ただし、今後は読者の年齢層をより広げていきたいと思っています。男性の読者にも利用していただきたいので、コンテンツをもっと多様化しないといけない。やはり投稿された作品を上からランキングで表示するだけでは、どんどん同質化してしまう傾向にあります。最終的には読者に委ねているので、人気作品がこれからも評価されることは変わりませんが、そうすると新規の作品が埋もれてしまうという問題もありますので、見せ方も含めて検討していきたいと思っています。
稲積氏 : 先ほどお話したコンテンツの多様化に向けたサービスです。まだ試行錯誤しているところなので、すんなり読めるタイトルとそうではないタイトルがあります。現状ですと漫画の一話分と比べて読み終わるまでに2~3倍時間がかかるので、文章の長さや文字の配置、幅などをスマートフォンに最適化して、より気軽に読めるようにしたいと思います。
ReLIFEのアナザーストーリーなど、公式で二次創作もできる点は生かしたいですね。漫画はどうしても絵が描けないといけませんが、ノベルはストーリーがあれば書けます。より作家の母集団が多いので、書き手として参加していただいて、コンテンツの多様化を図りたいです。
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