スマホ漫画は“コミュニティ”が核--稲積社長に聞く「comico」の1年半 - (page 2)

稲積氏 : まずは、読者をさらに増やすことに集中しますが、長期的にはサービス単体でも売上げを出していきたいので、アプリ内でのマネタイズも考えています。ただ、むやみにバナー広告を貼るようなことをする気はなくて、作家や作品、読者、運営も含めてより緊密になって楽しさが増すような形にしたいと思っています。

 たとえば、現在トライアルで実施しているのが、漫画の最後にキャラクターがおすすめの商品を紹介してECサイトやアプリに誘導する施策です。読者の反応を見ても、多くの方にご理解いただけているようです。やはり、単純な「お金目的」というのはcomicoらしくありませんので、それがユーザーの楽しさにつながるようなものにしていきたいですね。


今後は書籍やグッズだけでなく、アプリ内でもマネタイズを進める

――海外展開の進捗状況も教えて下さい。2014年7月に台湾に、同年10月に韓国に進出しました。

  • 台湾オリジナル作品(和名:ボクはマオーのマネージャー☆)

稲積氏 : 現在、台湾が100万ダウンロード、韓国が200万ダウンロードを超えています。それぞれ日本の人口で換算すると500万ダウンロードほどですので、比較的よい形で使っていただけています。

 ただ、台湾はあまり縦スクロールの文化がないことと、海賊版も多いのでオリジナル漫画を無料で見られることに喜ぶ人はそこまで多くないようです。日本と文化は近く親和性は高いので、これから浸透させていきたいと思っています。一方、韓国では(縦読み漫画サービスの)「WEBTOON」がすでに人気だったこともあり、読者もアレルギーなく読んでいただいています。

 海外では、現地と日本の両方の作品を掲載しているのですが、比較的現地の作品が人気です。ただ、ReLIFEは両国でも人気ですし、逆に海外の作品が日本で上位にランクインしていることもあります。日本のランキングで7位(7月1日時点)の「菜の花ボーイズ」は韓国の作品です。今後も各国で有力なタイトルを育てつつ、共通項が見えてきたら、人気タイトルを双方で掲載するといった協力もしていきたいです。

――スマートフォン漫画は、どのように進化していくと考えますか。また、現在は「comico」「マンガボックス」「少年ジャンプ+」などのサービスが人気を集めていますが、今後も新規参入は続くと思いますか。その上で、comicoはどう差別化していくのでしょう。

稲積氏 : やはりスマホ漫画は、紙の雑誌と比べると掲載できるボリュームが圧倒的に多いので、今後はプロだけでなくアマチュアの方もこれまで以上にスマホ漫画を発表していくと思います。ただ、作品が増えたからといって全体の読者が増えるわけではありません。新規タイトルを探すのが大変になり、トップタイトルの突出度はより高まると思います。

 その分、トップタイトルに比べるとそのほかの作品の横展開は難しい。そこでキーになるのが先程もお話したコミュニティです。特定の作家や作品に対してコアとなるファン層がスマートフォンサービス上で形成され、そこが核となって拡散され世の中に広がっていく。ここが、従来の紙との大きな違いだと思います。


 また、描き手にとってどれくらいの数が最適なのかは分かりませんが、これからも新しい漫画サービスが出てくる可能性は十二分にあると思います。comicoでは“デジタル時代のトキワ荘”を目指すと言っています。おかげさまで多くの方に読んでいただいていますが、まだまだ超有名な作家さんがいるとは言えません。そこは我々がより力を入れて、IPをどんどん世に送り出していく。それが成功すれば読者がついて作家も増える、そんな好循環が生まれると思います。

 ただし、一足飛びとはいきません。こうした活動を地道に続けていくことで花開くところもあると思いますので、常に可能性を追い求めていきたいです。

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