スマートフォンネイティブが見ている世界

匿名なら死ねと言える--中学生がネットいじめをする理由 - (page 2)

言葉の暴力を実感、想像させる機会が重要

 かつてのいじめは面と向かって相手を殴ったり、本人に直接悪口を言った。殴ると自分も痛いし、相手の傷ついた様子から、自分がした行為の結果が目に見えた。

 ところが、インターネットでのいじめは相手の顔が見えない。他人を傷つけても、傷ついた相手の顔が見えないため実感に乏しい。さらに、暴言を吐かれた方は何度も読み返すことができる上、ネット上の情報はコピー・拡散などが容易なため、相手を深く傷つけることができてしまうのだ。

 ネットいじめをした側は、スマホで文章を書き込むだけなので楽な上、サービスによっては匿名性に隠れて好き放題言うことができる。これでは、他人を傷つけることの重みが実感できないし、他人の気持ちが分からないままだ。

 米国在住の14歳の少女トリーシャさんは、SNSで受けたいじめを苦に13歳の少女が自殺したというニュースを耳にしてショックを受けた。米国では若者の53%がネットいじめを受けた経験があり、そのうち38%が自殺願望がある。トリーシャさん調べによると、ネット上で侮辱的な書き込みをする12~18歳の若年齢層の子たちは、19歳以上の層に比べて4割も積極的に侮辱的な発言をするという。

 トリーシャさんは、ユーザーが誰かを侮辱するような書き込みをしようとした時、「このメッセージは他人を傷つけるかもしれない。このメッセージを本当に投稿しますか?」というメッセージを表示する、「Rethink」という仕組みを取り入れた。


トリーシャさんの考えたネットいじめを止めさせる「Rethink」という仕組み

 1500件を対象にこの実験が行われたところ、93%が投稿をやめた。ネットいじめにつながる発言を71.1%から4.7%に減らすことができたのだ。現在は、Chrome拡張ブラウザとモバイル用アドオンを用意しているとのこと。彼女のTEDでのプレゼンはこちらで見ることができる。

 自分の行為の与える影響が分からなければ、過激化してしまうのも無理はない。「Rethink」によって投稿を思いとどまる子が多かったのは、アラートによって自分の行為を客観視する機会が持てたからだ。多くの子どもは、自分の言動がどれだけ他人を傷つけるかなど考えもしない。子どもにはそうしたことを想像させたり、実感する機会を持たせるべきではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]