2020年に向けた注目分野のひとつに“決済”がある。東京オリンピック開催により外国人観光客が多数来日することは容易に予想できるが、主な決済手段はクレジットカードだと言われている。だが、日本は現状現金しか使えない店舗も多く、それが不便な点とも指摘されている。そんななかで注目されているのは、スマートデバイスを活用したクレジットカード決済端末の存在だ。
システムを提供する事業社によってサービス形態や手数料はさまざまだが、これまで敷居が高いものとされていたクレジットカード決済システムを中小、個人規模の店舗でも手軽に導入しやすくなる利点から、導入事業者も増加傾向にある。日本でも国内企業が事業として立ち上げているほか、海外企業が参入という形でシステムを提供する事業社が存在する。その1社が2013年5月から日本に参入しているSquareだ。SquareのCFOを務めるサラ・フライヤー氏と、広報の時松志乃氏に、現状とこの先の取り組みについて聞いた。
Squareは、Twitterの共同創業者でもあるジャック・ドーシー氏が米国で2009年に開始したサービスだ。2.5センチ四方の小さなクレジットカードリーダーをスマートデバイスに付け、POSレジアプリをインストールすると、クレジットカード決済が利用可能になる。スマートデバイスがあれば導入にかかる初期費用がかからず、最短で翌営業日に入金される。端末は、ビックカメラやAmazon.co.jpなどといった小売店でも入手可能だ。
手数料は1回の取引につき3.25%(カード番号を直接入力した場合は3.75%)。特にこの手数料には注目が集まり、先行してサービスを提供していた国内事業社がそろって手数料を引き下げたほど、大きな影響を与えた。小回りが利くシステムで、屋外でも利用しやすい。ユニクロの一部店舗では、会計待ちの列を解消するために使われているほか、イベントの物販スペースなどでも活用されているという。加盟店登録数は現在約10万事業者にまで伸びている。
中小店舗がクレジットカード決済システムが導入できるようになると、どのような効果があるのか。そのひとつとして、外国人観光客の決済機会のロスを減らせることを挙げた。特に地方観光地ではそれが顕著だとも付け加えた。そしてそれを裏付けるデータがある。
Squareを使った訪日外国人によるクレジットカード(日本国外で発行されたクレジットカード)決済の利用件数を地域別で調べると(2014年1月〜2015年4月を対象)、1位は北海道虻田郡だ。虻田郡はリゾート地として知られるニセコ町や、温泉地である洞爺湖町がある観光地域だ。3位には沖縄県中頭郡、6位には長野県北安曇郡と地方の観光地が続く。そして全件数に占める割合がおおむね90%と、極端に高いところも注目ポイントだ。2位の東京都新宿区が25%、4位の同港区が7%、5位の同渋谷区が9%というデータから比較しても、これまで主に現金社会だった地域でSquareが活用されているのがわかる。中小規 模の店舗がSquareを導入することで、カードの利用頻度が高い外国人観光客の機会損失 を防ぐ狙いがある。
観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、訪日外国人旅行者の宿泊数増減率(2012年と2013年の比較)では、長野県を筆頭に和歌山県、栃木県、石川県、岐阜県が上位に名を連ねており、外国人旅行者が首都圏のみならず地方都市にも訪れるようになっているのが最近のトレンドだと分析している。そして店舗運営する企業だけではなく、自治体としてもスマートデバイスを活用したクレジットカード決済システムに注目していると時松氏はいう。
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