米航空宇宙局(NASA)は、火星の大気圏に突入させた探査機を地表へ安全に着地させる新たな減速技術「LDSD(Low-Density Supersonic Decelerator)」を開発中だ。米国時間6月8日、LDSD試験機を実際に高度18万フィート(約55km)上空から落下させる飛行試験を実施した。
2つある減速装置のうち、風船のように膨らませる「SIAD(Supersonic Inflatable Aerodynamic Decelerator)」は正常に機能したものの、直径100フィート(約30m)あるパラシュートは破けたため十分な減速効果を発揮せず、試験機は海面に叩きつけられて損傷した。
LDSDは、火星のような希薄な大気中でも、突入後の超音速状態から探査機を安全に減速させて地表に送り込むための技術。機体が大きな円盤状をしていることから、空飛ぶ円盤とも呼ばれている。
減速は、以前から「Curiosity(キュリオシティ)」などの火星探査機で採用されてきたパラシュートを大型化にしたものと、風船を膨らませて空気抵抗を増やす新機構SIADの2つを組み合わせて行う。LDSDの減速能力は従来技術に比べ高いので、より大きな探査機を火星表面に到達させたり、減速時間が短く今まで探査機を下ろせなかった標高の高い地域を調査したりできるようになるという。
今回の試験飛行は、2014年6月の第1回に続く2回目。まずLDSD試験機を高高度気球で上空12万フィート(約37km)まで上昇させ、気球から切り離した後にロケットエンジンで高度約55kmまで到達させた。この段階で超音速飛行しているLDSD試験機だが、まずSIADを膨らませて第一段階の減速を開始。その14秒後に巨大パラシュートを開いてさらなる減速効果を得る計画だった。
SIADは設計通り作動し、大きな減速効果を発揮した。しかし、超音速飛行時の激しい気流のなかで展開されたパラシュートは衝撃に耐えられずに破損し、減速に貢献できなかった。なお、前回の試験飛行ではパラシュートの展開そのものに失敗していたが、形状を見直して展開成功という結果は得られた。
着水した試験機は損傷したものの、試験中に撮影された高解像ハイスピード映像や、各種試験データを記録したメモリーカードは無事回収できた。LDSDの開発チームは、破損したパラシュートとこれらデータを分析し、今後の改良に取り組む考えだという。
NASAは、今回の試験で得た高解像度画像とデータを約2週間後に公開する予定だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」