空き家を貸し借りできる「Airbnb」や、タクシー配車サービス「Uber」など、海外発のシェアリングエコノミーサービスが注目されているが、日本でもこの領域で存在感を高めているサービスがある。2014年4月に事業を開始した「スペースマーケット」だ。
「渓谷を走る列車」や「歴史遺産の邸宅」など、ユニークな施設や家屋を“空き時間”に誰でも借りることができるサービスで、当初は100程度だった施設数は、この1年で3000まで拡大。月間のユニークユーザー数も6万まで増えているという。同社代表取締役 CEOの重松大輔氏は「マーケットがあると確信した」と手応えを語る。
重松氏は、スペースマーケットを立ち上げる前、イベント写真の撮影や販売を手がけるフォトクリエイトに勤めており、当時の取引先は結婚式場やお寺など主にイベントなどで使われる施設だった。同氏の創業には前職のメンバーも協力的だったこともあり、同社で構築したネットワークを生かして、幅広いジャンルの“スペース”を早期に獲得できたと話す。
ユーザーは「カフェ」などのキーワードで検索するか、レンタルスペースの一覧から借りたい施設を選択。貸し主とのメッセージを通じて、条件があえば借りることができる。1時間の料金は、表参道のレンタルカフェが3600円、方南町のお化け屋敷が8000円、鎌倉のプール付き邸宅が1万8000円と、その内容やロケーションによって異なる。レンタルの成約時にオーナー(貸し主)に20~35%の手数料が発生する仕組みだ。
施設はイベント会場や会議室が中心だが、地道に営業を続けたことで、カジノレストランやアトリエ、体育館、船、さらには歌舞伎座の飲食店まで借りられるようになった。また、イオンシネマと提携したことで映画館などの大型施設も増えている。週末に比べると上映回数が少ない平日を利用して、社員総会や会社説明会を開く企業もあるそうだ。
「大手企業は毎年同じホテルなどで社員総会を開くことが多いが、社員からするといつも同じ場所で、同じケータリングではつまらない。場所や食事を少し変えてあげるだけで印象はガラッと変わり、(社員の)モチベーションも上がる」(重松氏)。
個人ユーザーからは異なる側面が支持されている。スペースマーケットでは、施設を借りる前に内覧することができるが、その際に立ち会ったオーナーの丁寧な説明や思いに感銘を受けてリピーターになるユーザーも少なくないという。施設の利用後にはレビューを残すことができるが、「予想以上にオーナーへの感謝のレビューが多くて驚いた」と重松氏は語る。
「サービスを1年提供して、シェアリングエコノミーが海外でこんなに伸びている根っこはここなんだと実感した。機能的で安いイベントスペースはいくらでもあるが、ユーザーは人と人とのつながりである、“体験消費”にお金を支払っている」(重松氏)。オーナーと事前にコミュニケーションしているため、騒いで施設内や備品を壊してしまうといったトラブルが起きても、ほとんどが当事者間で解決できているという。
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