東証マザーズに上場している企業向けモバイルセキュリティ大手のオプティムは4月、シンガポールのモバイルコミュニケーションサービスのセキュリティ企業であるTreeBox Solutionsと業務提携し、東南アジアへの本格進出を果たした。
同地域で展開する製品・サービスの強み、現地企業と業務提携にいたった経緯、事業拡大のための戦略などについて、同社の海外事業を担当する横山恵一氏に聞いた。
企業のスマートフォンやタブレット端末の導入・運用・管理全般を支援しています。会社用の端末を紛失してしまったときに中身の情報が流出してしまうのを防ぐMDM(モバイルデバイス管理)サービス「Optimal Biz」は市場トップシェアです。また、企業のカスタマーサポート担当が離れた場所にいる顧客と同じ画面を共有しリモートで対応するための「Optimal Remote」などもあります。
当社の特徴は、知財戦略を推進していること。ユニークな先端技術を国内外を問わず特許出願および登録を進めながら、技術力の高い製品を独自で開発することを重視しています。1994年から2014年までを通じたスマートフォンなど電子デバイス管理技術の国内特許総合ランキングでは、パナソニック、シャープに続く3位、また、2012年情報通信業界特許資産規模では第9位、特許1件当たりの資産規模では第1位の評価をいただいております。
初めての海外展開は、前述のOptimal Remoteが中国のHuaweiのスマートフォン「Ascend P6」に2013年末からプリインストールされたことでした。また、同様のリモート制御技術を生かし、同じく中国のHisenseと老人向けのスマートフォンを共同開発しました。同端末には当社アプリを起動するためのハードボタンも搭載されています。
東南アジアにおいては、シンガポールでOptimal Bizをパートナーであるドコモシンガポールや、KDDIベトナムを通じて提供してきました。そしてこの4月に、同国のモバイルコミュニケーションサービスのセキュリティ企業であるTreeBox Solutionsと業務提携をしました。
同社は、音声通話、電話会議、インスタントメッセージ、SMS、添付ファイルなどをセキュアに守るソリューション「OnTalk」を提供し、軍関係や法務機関などでも導入されています。それと当社の技術と組み合わせることで、東南アジアのモバイルセキュリティサービス市場、ビジネスアプリ市場を開拓していきたいと考えています。
シンガポール企業の海外展開を支援する政府機関「IE Singapore」を通じて提携先企業を探しました。TreeBoxはその過程で挙がった候補の1社で、彼らとしては日本を含む海外市場に進出する計画があり、また自社の製品を「セキュリティ・アズ・ア・サービス」として展開していきたいという意向が一致したことで実現にいたりました。
シンガポールは日本と同じくセキュリティに対する意識は高いです。一方で、インドネシアやタイなど東南アジアの周辺国ではまだまだ。しかし、企業を対象とした情報漏洩に関するガイドラインが政府から出されている国もありますので、これから市場の機会は拡大していくと見込んでいます。
この地域には、当社のようにモバイル端末管理システムとリモートサポートの両方の製品を持ち、顧客企業のニーズにワンストップで応えられる企業はありません。また、日本の大手通信キャリア・大手端末メーカーなど、要求する品質の水準が非常に高い企業に製品を提供する過程で培ってきた技術力、サービス提供力はかならず生きてくると思います。
製品の差別化については2点あります。1点目は「Secure Shield」技術です。既存のモバイル端末管理システムでは一部の抜け道が存在し、利用者が意図的に端末を管理下から外すことが可能でしたが、当社が独自開発したシールド技術により、管理下の抜け道となりえる設定項目をSecure Shieldで覆うことで、設定項目への直接アクセスをブロックすることができます。
2点目は「Zone Management」技術です。無線LANの接続先、位置情報、時間帯に応じて、設定を自動的に切り替えることができる機能は、多くの競合他社には見られない当社の製品のユニークな特徴です。
シンガポールでは特にセキュリティポリシーに厳しい、金融、製造業界でモバイル端末が普及していますので、こうした業界から当社独自の技術を強みとして開拓していきたいと考えております。
まずはシンガポールで現地のサービスニーズをにらみながらビジネスを着実に拡大していければと思っています。周辺国への進出については、今回のTreeBoxとの提携のように、各国のパートナーとの取り組みを通じて、市場の成長のポテンシャルを確かめながら検討していければと思います。
製品の開発は今後も基本的には日本の本社が担う予定ですが、ニーズなど市場の状況次第では各国現地で開発する可能性もあると思います。
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