スポーツテック最前線

自宅にいながらツール・ド・フランス--仮想空間を自転車で疾走できる「WideRun」

 スポーツはテクノロジの力によってどうイノベーションしていくのか。この連載ではスポーツトレーナーの視点から、海外を中心とした最先端の知見と事例を紹介する。今回は「スポーツ×VR(仮想現実)」をテーマに、Oculus Riftを使って仮想空間でのサイクリング体験を提供する「WideRun」の取り組みを紹介しよう。

 「ジムのエアロバイクは退屈すぎてうんざり。でも、夜の街でクルマの間を駆け抜けるのは怖い」――そんな人のために、イタリアのVRスタートアップWideRunは、VR(仮想現実)に没入することができるゴーグル「Oculus Rift」と自転車を組み合わせて革新的なエアロバイク体験を提供している。


「WideRun」のイメージ

 クラウドファンディング「KickStarter」のサイトへアクセスすれば、26~29インチのタイヤを持つ自転車なら何でもフィットするWideRunデバイスが400ドルで手に入る。このデバイスと自転車さえあれば、いつでもどこでもVRの世界でサイクリングを楽しめるようになる。

自宅にいながら「ツール・ド・フランス」

 WideRunは自転車のタイヤに装着して使う。ユーザーの見ているVRの世界に同期してタイヤに負荷を加えたり、逆にゆるめたりすることで実際に坂道を登ったり、段差を乗り越えているような感覚を再現できる。逆にハンドルの角度やトルクのスピードをリアルタイムで検知してVRの世界に反映することで、ユーザーが実際に自分の意志で自転車を走らせているような感覚を覚えさせることができる。

 マンハッタンの都市部から、険しい山道まで行き先は自由。自宅にいながらサイクリングで汗を流すことができる。スマートフォンやPCのBluetoothを通してワイヤレスで同期できるため、自転車にコードが絡みつく心配もない。

 WideRunのビジョンは、ソーシャルの“インタラクティブ”さとゲームの“面白さ”に、VRを組み合わせることで、屋内のエアロバイク体験を最大化することだという。マーケットプレイスでは、ゾンビのいる街から抜け出すタイムトライアルのようなゲームも売り出されているようだ。

 ゆくゆくは自社でマーケットプレイスを構え、ユーザーと開発者がより楽しくエアロバイクで汗を流せるコミュニティを作りたいという。利用シーンは、家でのフィットネス目的からリハビリプログラム、プロフェッショナルなトレーニングまで多岐にわたる。

WideRunの課題は「VR酔い」

 VRスタートアップが取り組まなければいけない障害の1つが「VR酔い」だ。画像の処理速度が遅れてしまうと、ユーザーが見ている方向が瞬時に反映されずラグが生じる。これにより視覚と三半規管が混乱するとVR酔いが引き起こされるという。WideRunがトラクションを得るには、このラグを解消することが必要不可欠になるだろう。

 2016年4月の発売までにどこまでブラッシュアップできるか。マーケットプレイスでのサイクリングコースの多様化にも期待したい。

 ご意見・ご質問はTwitter(@hirokibacardi)まで。

渡邊拓貴(わたなべ ひろき)

2012年カリフォルニア州立大学運動生理学科卒業。早稲田大学スポーツ科学部4回生。専攻はアスレチックトレーニング。ロンドンオリンピックでは障害馬術競技選手の専属トレーナーとして帯同する。以降トレーナーとして各地で活動。

スポーツがテクノロジにもたらすイノベーションをテーマに専門メディア「SportTechBros」を創設。
フィットネス系AppleWatchアプリ「FitWatch」を提供中。

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