ソフトウェアテクノロジがあらゆる業界に変化をもたらしていることを例えて、「ソフトウェアが世界を飲み込んでいる」と表現した投資家がいた。これはスポーツの業界も例外ではない。
ドローンが監督の代わりに選手を監視するようになり、カラダの動きや疲れはスポーツウェアが補足してくれるようになった。サッカードイツ代表がデータ分析を活用した練習をとりいれてW杯で優勝したのは記憶に新しい。一体、スポーツはテクノロジの力によってどうイノベーションしていくのか――スポーツトレーナーの視点から、海外を中心とした最先端の知見と事例を紹介する。
第1回は「スポーツ×センサ」をテーマに、センサを使ってパーソナルトレーニングをサポートする「Gymtrack」の取り組みを紹介しよう。
米国では、健康増進の意欲の高まりとともに、ジムでのフィットネスやトレーニングに行く人の割合は15%にのぼっている。トレーニングのモチベーションを高めるために記録をつけようとする人は多いが、実際とても面倒くさい。
エクササイズの名前やダンベルの重量、トレーニングの回数を正しく覚えていられなかったり、記録に使うデバイスが汗や水でダメになったり、記録を盛って書いてしまったりする。仮に記録できたとしても、上手く活用する方法がわからない場合もあるだろう。
Gymtrackは、ジムを利用する会員のトレーニングにまつわる情報をトラックするデバイスとソフトウェアを提供している。ジム内のバーベルやトレッドミルにNFCを搭載したバッチなどを設置し、ブレスレットでチェックインすることで今日のメニューやウェイトの重量を教えてくれる。
トレーニングをしている時に発揮されたパワー、関節の可動域やテンポなど、自分のトレーニングに関する情報をトラックできる。また、以前のトレーニング結果をもとに、取り組むべきウェイトの重量やトレッドミルの速度を指示してくれる。
iOSやAndroidのアプリケーションで、パーソナルトレーナーからのコーチングを受けることもできる。
Gymtrackのメリットの1つは、ジムと会員の結びつきを強くすることだ。他にはないカスタマーサービスを提供することでメンバーシップに対するロイヤリティを高めることができる。
もう1つは、会員がパーソナルトレーナーからもっと質のいいサービスを受けられるようになることだ。週1回でパーソナルトレーナーをつけてトレーニングするといった従来のペースだと、どうしても1人で行なった時のトレーニングに対するフィードバックが難しくなる。Gymtrackでは、パーソナルトレーナーは会員に対してアプリを通して毎日メニューを提供でき、トレーニング中のフィードバックをいつでも正確にトラックすることができるようになる。
さらにGymtrackはジムに設置されるデバイスを提供しているため、会員が新たに使い道のないウェアラブル器具を購入する必要もない。Gymtrackの設備一式は1万5000ドルほどで導入が可能。トレッドミル1台が8000ドルほどすることを考えれば、ジム側にとってもリーズナブルだ。
日本では、24時間利用できるフィットネスジム「エニタイム」や「ジョイフィット24」が注目されている。24時間ジムでは無人で運営される時間帯があるため、安全性を担保したり、会員のモチベーションを上げ続けることが難しいと言われている。IoTで会員の動きを記録して、パーソナルトレーニングを提供できるGymtrackのようなサービスを導入することで解決できることは多いだろう。
ご意見・ご質問はTwitter(@hirokibacardi)まで。
渡邊拓貴(わたなべ ひろき)
2012年カリフォルニア州立大学運動生理学科卒業。早稲田大学スポーツ科学部4回生。専攻はアスレチックトレーニング。ロンドンオリンピックでは障害馬術競技選手の専属トレーナーとして帯同する。以降トレーナーとして各地で活動。
スポーツがテクノロジにもたらすイノベーションをテーマに専門メディア「SportTechBros」を創設。
現在フィットネス系AppleWatchアプリを開発中。
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