シンガポールには、ビジネススクールでMBAを取得するために来ました。新卒で入社したソフトウェア会社が、ITバブルが弾けた煽りを受けて、部署ごとのレイオフを経験し、その後転職したファイナンス会社でも、リーマンショックの影響で経営が傾くのを目の当たりにしました。
それら2つの会社に共通していたのは、経営者がビジョンを持っていなかったこと。それで、いつか自分で社員がやりがいを持って働ける会社を作りたいと思い、起業を志すようになりました。それと同時に、海外でビジネスをしたいと思い、海外のビジネススクールを目指したんです。シンガポールという国は、日本よりも自分に合っていると感じています。グローバルのマインドセットを持った人が多く集まっていることも魅力の1つです。
スマホやデジタルカメラが普及して、誰でも写真を撮れるようになり、さらにソーシャルメディアで簡単にそれらをシェアできるようになりました。それだけ「写真」の敷居が下がったことで、あまり大切ではない写真も増え、本当に大切にしたい写真が埋もれてしまうことも増えたのではとあるとき感じました。そしてその埋もれてしまうという課題は、画像認識などのいまの技術を使えば解決できるのではとも思ったんです。
memomのような写真に特化したクラウドストレージサービスは、2~3年前からありました。この分野は、「Picturelife」が1月に「StreamNation」に買収されたり、「everPICs」がサービスをクローズするなど、いま過渡期を迎えています。「Dropbox」が提供する「Carousell」がその代表格でしょうか。
私のまわりにも、特にテクノロジへの関心が強く、ビジネスシーンで使う人がいます。しかし、写真のクラウドストレージサービスは、もっとファミリー層に使われてもいいと思っています。
はい。そういう写真と、子どもの写真には、ある違いがあります。それは、食べ物やセルフィー写真は、その場で撮って楽しむ、どちらかというとフロー型。逆に、子どもや旅行などイベントの写真は、いつまでも残して、あとで振り返って楽しみたいストック型であること。であれば、保存の仕方も変わっていいと思うんです。
あと、子どもの写真ですから、プライバシーが守られる環境で保存したいというニーズもあります。インタビューしたお母さんからいただいたコメントの中にも、「Facebookはパブリックすぎる」というものがありました。
大きく2つの方法で差別化していきたいと考えています。1つは、外部サービスとの連携です。「Dropbox」や「Google+」など、外部の大手サービスとアプリをAPIで連携させ、それらのサービスを利用しているユーザーの利便性を高めると同時に、ユーザーをmemomに誘導すること。
もう1つは、画像識別技術を活用すること。動きまわる子どものベストショットを撮ろうと、親はよく写真を連写します。そのうち最適と思われる写真を自動で識別することで、ユーザーの利便性を高めようというものです。
パートタイムのテックリードがシンガポールにいて、彼がエンジニアリングの視点で企画にへのフィードバックや、開発するための仕様を検討してくれています。実際の開発作業は、インドのプネーにいるデザイナーとエンジニアのチームに委託しています。
まずデザイナーを探すために、クラウドソーシングサービスの「oDesk」を使いました。そこで見つけたデザイナーにUIとUXのデザインをしてもらっているときに、彼のチームメイトにエンジニアがいることが分かり、あわせてお願いすることにしたんです。
iOSアプリをローンチするまでのプロジェクトごとに契約をしており、デザインと開発をあわせて5000米ドル未満で依頼しました。始めは時給制で契約していたのですが、開発スピードが遅かったので、途中で契約形態を変更しました。さらに、予定よりも早く開発が完了したらボーナスを与えるというインセンティブを提示したところ、さらに開発スピードが上がりました。
いまオフィスとして、シンガポール国立大学のインキュベーション事業である「NUS Enterprise」などが運営するコワーキングスペース「Plugin@Blk71」を使っているのですが、そこで私の後ろに座っていたほかの女性起業家が紹介してくれたんです。
はい。いろんな起業家と情報交換ができるのはとてもいいです。たとえば、私の隣にいま座っている起業家は、テクノロジ企業の人材採用をサポートするサービスを運営しているのですが、彼に採用のコツなどを教えてもらったりもしました。
Androidアプリを開発し、外部サービスとも連携します。その後、収益化のために検討している、コラージュカードを印刷してファイリングした実物のアルバムの配送サービスを実現するためのプリンティングパートナーとの提携。そして、画像識別技術のアプリへの実装です。
Androidアプリの開発資金として7~10万シンガポールドルを調達するために、シンガポールのエンジェル投資家と交渉しています。その方から、「まず、100人のアンバサダー(アプリのコアなファンのこと)を獲得して、彼女たちの声を集める」という宿題をもらっているので、いまはそれに取り組んでいます。
シンガポールでユーザーからのフィードバックを集めたあと、主に狙っていく市場は米国と英国。その後、日本、インド、欧州諸国、オーストラリアにも広げていけたらと考えています。画像識別技術を実装する頃には、エンジニアを雇いたいと思っているので、その頃にまた次回の資金調達を実施しようと計画しています。
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