freeeは4月21日、電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」の外部連携APIの公開に合わせ、労働保険の更新手続きを同社のクラウド給与計算ソフトで完結させる機能を開発していることを発表した。公開予定日は5月後半で、e-GovのAPIを利用した初めてのサービスになるとしている。
この機能により、年に1度の労働保険の更新に必要な申告書を自動で作成できるようになる。また、e-GovのAPIを用いることにより、申告書の提出、承認、保険料の振り込みまでをfreeeで完結させることが可能になる。
e-Govは、総務省行政管理局が運営する行政情報ポータルサイト。法令検索サービスや行政手続情報、パブリックコメント情報の案内のほか、電子申請の受け付けサービスなどを提供している。
「2015年は『電子化』の始まりの年になる」とfreee代表取締役の佐々木大輔氏は話す。現在、前述のe-GovのAPI公開に加え、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の開始、全ての領収書の電子保存が法的に認められる電子帳簿保存法の改定など、政府が「電子化」に向けて動いている。
マイナンバー制度では、詳細は検討段階だが、独立して存在していた民間と役所の窓口をまとめたサイト「マイナポータル」(情報提供等記録開示システム)が2017年1月に公開される予定。これにより、オンラインでさまざまな手続きや決済が可能になる。freeeでは、番号管理義務の発生と公的電子認証の普及により、クラウド利用が加速するとみている。
この変化に対応するため、freeeは「自動化」「バックオフィス最適化」に続く新たな事業構想として「クラウド完結型社会」を打ち出した。今後、全てのバックオフィス業務がクラウドで完結するよう続々と新機能を実装していくという。
具体的には、2015年秋をめどに、請求書や領収書などをスキャナで画像データとして読み取れるファイルボックス機能(電子データ保存機能)を電子帳簿保存法の電子保存要件に対応させる。また、マイナンバー制度により法人だけでなく税理士にも個人情報管理が義務化されるため、freeeでマイナンバーを管理できるようにする。さらに2015年度内に、企業版のマイナンバーである「法人番号」で取引先を管理できるようにするほか、従業員が申請した経費を給与とまとめて振り込めるようにする。
freeeを導入している事業所は3月に30万カ所を超えた。シード・プランニングが2014年12月に発表したクラウド型会計ソフトの利用動向調査では利用者の4割強がfreeeを利用している結果が出るなど、シェアを着々と拡大させている。
佐々木氏は発表会見の席上、freeeの経営面にも言及した。国内のスタートアップが短期的なIPO(新規株式公開)を目指すことが一般的になっている一方、シリコンバレーなどの一部のスタートアップは時価総額で1000億円以上の評価を得ていることに触れ、「短期的なIPOではなく、まずは盤石なビジネスモデルを築くことで、私たちも時価総額1000億円以上の企業を目指す」と語った。
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