ヒット作を生み出すブランド戦略とは--Rovio、King、グリーのCEOらが語るモバイルゲームの未来 - (page 2)

その国のユーザーに合わせた開発、運営手法とは

 次に真田氏は、日本のマーケットで苦労した点について質問した。Rovioのペッカ氏は、かつて自身が在籍していたNokiaでも当時日本市場の参入には課題が多かったと振り返り、「販売網とパートナーシップ、日本の顧客の共感を得られる製品を作ること」が最も重要であると語る。これらはゲームを含めどんな産業にも大切なことであると気付き、Rovioではローカルパートナーを介して日本市場に参入する方法を選んだという。

 Kingのリカルド氏は、Rovioとは異なるアプローチを採っていると語る。日本のマーケットが世界で最も進んでおり、プレーヤーも洗練されていると見ていることから、「日本から学んでいこう」という姿勢で取り組んでいる。日本では主に若い男性がゲームをプレイし、ミッドコアとコアに相当するゲームに人気が集まっていることを意識しているほか、日本語化はもちろんのこと、「ライブオペレーション」、つまり毎日ゲーム内イベントを短期間だけ実施することで、ユーザーのモチベーションや注目度を高く保つことに成功している。

 グリーの田中氏からは「日本国内でゲーム開発することについてどう思うか」という質問が飛び出したが、Rovioのペッカ氏はすでにリリースしている「Angry Birds Fight!」が日本国内で企画・開発したものだと話し、ローカル開発には大変興味があるとコメント。Kingの場合は、グローバルに向けたゲーム開発を基本方針としており、特定の国での開発というより、世界中にある優秀なデベロッパー企業と強力して開発しているとリカルド氏は述べた。

  • グリー株式会社 代表取締役会長兼社長 田中良和氏

 逆に、日本の会社が世界で成功するにはどうしたらいいのか、というテーマも提起された。これについてグリーの田中氏は、「まさに今頑張っているところ」としながらも、現在のところ欧米向けのゲームアプリについては全て北米で開発しており、日本国内では開発していないと説明する。

 同氏は、日本人の習慣やマインドが欧米向けのアプリの企画に適していないと見ており、「国内では、会議でどういうゲームを作るかという話になった時、米国で売れている戦争やゾンビをモチーフとしたゲームを作ろう、という話にはならない。(グラフィック)アートの面でも欧米で好まれるものを作るのは難しい」と話し、現在もこれからも、欧米向けは北米で全てオペレーションしていくとした。

 ここでKLabの真田氏も、同社のオペレーションの仕方として、欧米でゲームアプリの企画を行うが、開発自体は日本で担当していると説明。ターゲットとする市場を大きく欧米、中国・韓国、日本の3つに分けてはいるものの、開発をそれぞれ別で行っているとノウハウを共有しにくいことから、企画は現地で、開発は日本で、という役割分担でプロジェクトを進めているという。

拡大し続けるモバイルゲーム市場、今考えるべきは?

 最後に真田氏は、今後のマーケットの予測と自社の成長戦略などについて3人に聞いた。「未来は明るい」と宣言したのはペッカ氏。その理由として、デベロッパーの学習が深まっていること、常に売上が拡大していること、さらにはユーザーもゲームにお金を使うのに慣れてきていることを挙げた。同社の今後の課題としては、ユーザーの“タッチポイント”をどううまく組み合わせられるか。ゲームのプラットフォームや、ゲームとは異なる媒体での露出などを通し、ユーザーにより良いエクスペリエンスを提供するため、とりわけ「楽しい広告経験をさせること」が重要だとした。

 田中氏は、止まることのない市場の拡大に注目している。日本国内のみではそれほどの成長はないとはいえ、グローバルで見れば確実に成長し続ける市場予測となっており、「すさまじい成長産業である」と強調。現在は中国市場の伸びが大きくなっているところだが、自動車産業などがそうであったように「インドなどが伸びるのは自明」であるとも話し、10年後はより大きなビジネスになっていることを前提として今を考えるべきだと訴えた。

 米国でのエンターテインメント市場における動きをもとに解説したのがリカルド氏だ。米国ではテレビの次の巨大な市場がモバイルコンテンツとなっているが、モバイルコンテンツ市場が大きくなってもテレビには影響を与えていないという。これは、元々テレビなどのメディアに使っていなかったその他の時間がモバイルに取って代わっているからだとし、特にゲームについてはそのうち数分間ずつのきわめて短い時間が消費されているとする。

 したがって、ユーザーからは数分間で楽しめるものが求められており、今後のトレンドとしては「どんなデバイスでもプレーでき、“何を”だけではなく、“誰と”やるかが大事になってくる。つまりブランドが重要」と、ゲームアプリ市場においてもブランディングを考慮したマーケティング活動がより一層不可欠になってくるだろうと予測した。

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