スマホがドアの“鍵”になる「Akerun」--合鍵はLINEで送信

 フォトシンスは3月23日、スマートフォンを鍵にしてドアの開け閉めができる製品「Akerun(アケルン)」を4月23日に発売することを発表した。税別価格は3万6000円で、3月23日からウェブサイトで予約受付を開始する。今後はホテルチェーンや不動産管理会社、仲介会社などを中心に販売していく予定だという。


「Akerun」

 Akerunは、専用のスマートフォンアプリを操作して、ドアの鍵を開錠・施錠できる後付型のスマートロックサービス。ドアに付いているひねるタイプの鍵(サムターン)の上にとりつけたAkerun本体とスマートフォンがBluetooth認証することで鍵を開け閉めできる。ドアにスマートフォンを持って近づくだけで鍵を開けられるほか、ドアを締めたあと自動的に鍵がかかるオートロック機能も備えている。外出時はサムターンを回さなくても、本体に手でタッチするだけで開錠できる。

 専用のスマートフォンアプリから鍵の権限の受け渡しができるため、管理者は、鍵を渡したい相手が離れた場所にいても、LINEやFacebookなどのメッセージ機能を使って、家族や友人に合鍵を渡すことができる。時間を限定して鍵を発行できるため無断で合鍵を複製されるリスクを防げるほか、相手の入退室履歴をリアルタイムに閲覧することも可能だ。


合鍵をLINEやFacebookで送れる

 これにより、家族や恋人、ルームシェア相手や家事代行業者との鍵のやりとりを効率化できる。また、入退室情報を記録できる点を利用して、子どもや一人暮らしの高齢者の外出・帰宅情報をスマートフォンアプリから確認したり、オフィスや店舗のタイムカードとして利用することも可能だ。

 Akerunを開発したPhotosynth代表取締役社長の河瀬航大氏は、従来の鍵は鞄から取り出す作業が面倒だったり、紛失して途方に暮れたりと、さまざまな問題を抱えていたと指摘。これを肌身離さず持ち歩くスマートフォンに置き換えることで、これまでアナログに管理されていた鍵の概念を変えていきたいと話す。気になるセキュリティについても、第3者機関によるセキュリティ診断や、暗号化(AES256)、二段階認証などにより安全性を担保しているとした。

 鍵となるスマートフォンの紛失時には、24時間365日の電話サポートに連絡して利用を停止できる。端末ではなくIDとパスワードで管理しているため、紛失時にはたとえば友人のスマートフォンなどを使って開錠することも可能だが、夜間に帰宅した際などは難しいだろう。当然ながら通常の金属の鍵でも開けることはできるので、スマートフォンのバッテリ切れなども考えると、現状は完全に置き換えるのではなく予備の鍵も持ち歩いたほうが良さそうだ。


鍵の開錠・施錠デモを披露するPhotosynth代表取締役社長の河瀬航大氏

 Akerunの本体サイズは幅約68mm×高さ約118mm×厚さ約41mmで、重量は約200g。iOS7以上、Android 4.4以上のOSを搭載したスマートフォンに対応する。単3リチウム電池4本で約2年間使えるという。バッテリ残量はアプリから確認でき、残量が減ると通知する。また、電池切れ前にバッテリを郵送してくれるオプションも設ける。

 同社では2015年度中に1万台の出荷を目指す。今後はスマートウォッチにも早期に対応する予定であるほか、スマート家電などとも連携し、その日の天気や電車の時刻を教えてくれたり、帰宅時間に合わせてテレビや照明をつけてくれるといった機能も提供していきたいという。

ホテルや不動産会社、オフィスで活用へ

 Akerunは一般販売するが、河瀬氏が期待するのは法人での利用だ。たとえば、496億円ある電子鍵市場や、876億円あるホテルフロント業務市場、2328億円ある不動産仲介市場、1263億円ある店舗の防犯や勤怠管理市場、そして5429億円ある貸宿・空きスペース市場などで、Akerunを展開していきたいと話す。


Akerunが狙う市場

 同日には早速、Akerunと提携した各社のサービスも発表された。まず、NTTドコモおよびNTTドコモ・ベンチャーズと実施するのが国内ホテルでスマートロックを活用した「39HOTELSプロジェクト」。アプリで事前にチェックインすることで、フロントでの鍵の受け渡しの待ち時間をなくしたり、多言語対応などの手間も省けるようになるとしている。

 不動産情報サイト「HOME’S」を運営するネクストとは、不動産物件の内見時にスマートキーを活用する「スマート内覧」の試験運用を3月19日から開始した。仲介会社がアプリから内覧したい物件を選ぶと管理会社に通知され、管理会社が承認するだけで、仲介会社の持つスマートフォンがその物件の鍵になる。これにより、仲介会社は内覧のたびに管理会社に鍵を取りにいく必要がなくなるほか、管理会社も鍵の管理が楽になり、どの物件がどれだけ案内されているかが把握できるようになる。

  • 「39HOTELSプロジェクト」

  • 「スマート内覧」

  • 「どこでもオフィス(仮称)」

 そして、三井不動産と展開するのが空きオフィスを活用した「どこでもオフィス(仮称)」だ。同社では全国で約300棟のビル、約80万坪のオフィス床を運営しており、さまざまな用途に柔軟に対応できるようにあえて満室にはしていないのだという。その一方で、空室の有効利用が課題となっていた。そこで、空室に机や椅子、通信環境などを整えることで、ワンタイム利用ができるスペースとして提供する。

 不特定多数の人が利用するため、鍵の管理が問題となっていたが、これをAkerunで解決する。予約や鍵発行、決済などをアプリから行えるシステムを構築し、申込者に鍵を送信。利用履歴や解除履歴などのデータはサーバに蓄積して活用する。出張先で仕事場を探しているビジネスパーソンや、自宅近くのサテライトオフィスを探している主婦などによる利用を想定しているという。


左からネクスト代表取締役社長の井上高志氏、Photosynth代表取締役社長の河瀬航大氏、NTTドコモ執行役員の栄藤稔、三井不動産 営業統括部の光村圭一郎氏

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