松永氏 : ここで注目したいのが、(インターネットに)繋がっている、いないという話ではなく、実際問題としてエアバッグがアクティブなのか、ミッションが正常なのかという情報のログが車内に残っているということです。つまり、ここにもデータが生まれているのです。
こういった情報をビジネスとして利用していかなければならないのが、アフターマーケット事業者であるといえます。また、昨今では事故抑止という観点で、ドライブレコーダーが用品業界で出てきています。そういった意味では、データログのみならず、画像検索というのも重要な要素になっていくだろうと思います。
三浦氏 : 「Google ドライブ」などに画像を保存すると、その画像がどのようなものかというテキストやタグを付けなくても、キーワード検索が可能です。つまり、Googleは写真から中身を解析して“言葉の検索”に対応しているのです。映像だったり画像だったりというものが、クルマやスマートフォンを介してクラウドサービスにアップロードされることで、その内容が解析できるようになる。こうした技術がADAS(Advanced Driving Assistant System)車両と組み合わせて、データの蓄積につながっていくように感じます。
松永氏 : ADASのデータシステムに画像が大事であるという話でした。そして、画像の検索技術がこれくらい進んでいるという話でもあるわけです。さて、次に重点テーマとして挙げられていたのが「テレマティクスなどを活用した保険サービスによる安全運転の促進・事故の削減」です。
土橋氏 : 海外の例になるのですが、テレマティクス保険というものが注目されています。この保険の特徴は、走行距離や運転の仕方によって保険料が変わるというものです。本質的に目指しているのが、事故を減らすということです。そのためのインセンティブとして価格を下げるということが効果的であるというわけです。
テレマティクス保険やデバイス(OBD)を使って事故を減らしていくという仕組みについては、世界的なニーズであると思いますし、取り込んでいければと思います。海外の動向をみますと、たとえばVodafoneは通信との連携にも着目しており、積極的に協業を含めた取り組みを進めています。Verizon Wirelessは端末やプラットフォーム、データ分析などを組み合わせて、さまざまなサービスに提供するというモデルを実現しています。弊社としましても、研究会などで議論しながら、日本で成功するモデルを模索しているところです。
松永氏 : 3つ目のテーマはトレーサビリティになります。クルマが工場から出て、どのように売られ、どのような事故があり、どのように修理されたか。そして、どのような所有権の移転があったか。つまりクルマの履歴情報です。米国ではCAR FAXが取り扱っているサービスです。
大山氏 : 弊社ではCAR FAX ジャパンということで、同様のサービスをやろうかと、とっかかりにした経緯があります。当時は国土交通省から情報が公開されていない時期でしたので、我々が持っている独自の情報から修理履歴を解析するというアプローチで始まりました。現在では3000万台内外の修理履歴情報を持っております。
ちなみに、海外の履歴情報の活用事例としては、中古車を買おうとした時に、事故歴を調べるといった用途に用いられています。現在では、国土交通省はトレーサビリティとして、国ということではなく、国が一定の情報を出すことで民間がサービスを提供できるようにする流れになっています。
松永氏 : 4つ目は「検査と整備の相関分析等を通じた検査・整備の高度化・効率化」というアフターそのものになります。
室谷氏 : 検査と整備の相関という話になると、車検がお客様の関心が高い部分になるかと思います。当然のことながら、クルマというのは構造を含めて進化しています。昭和二十数年にできあがった道路運送車両法もそんな環境に合わせて変化しているわけです。
当然、現行に合わせて内容の見直しは行われるかと思いますが、いつのタイミングでどのような状況になっていくのかはこれからの議論になるかと思います。しかし、クルマの点検義務には間違いなくスキャンツールを使った点検項目が付加されてくる、そういった保安基準になってくるだろうと思います。
松永氏 : 重要テーマとして挙げられた4つの項目が定められて、自動車の関連情報の利活用が将来ビジョンとして発表されているわけです。自動車業界に属している人は、これをどう受け止めて、どうビジネスに活かしていくのか。そしてIT業界に属している人はどんなビジネスチャンスを見出すのかということなのだろうと思います。
マーケットがどんどん変化していく中で、ひとつの点だけではビジネスができなくなってきています。隣の島に手を出しながら生き残りを懸けている、そんな風に思います。そして、こんな状況の中で背中を後押ししていくのがデータ。それを加速させていくのが繋ぐということだと思います。
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