NTTドコモは、3月に予定されている下り最大225Mbpsの高速通信規格「LTE-Advanced」の導入に向け、同技術を効果的に展開するネットワークアーキテクチャ「高度化C-RAN」の研究開発を進めてきた。そして2月3日、その高度化C-RANの屋外における商用環境での検証を実施し、35MHz幅を用いて受信時240Mbpsの通信速度の実現に成功したと発表している。
同社は2月5日、神奈川県横須賀市にある研究開発施設「ドコモR&Dセンター」にて、報道陣向けに高度化C-RANを用いたLTE-Advancedの高速通信デモを公開。会場では、ドコモ代表取締役執行役員である尾上誠蔵氏より、高度化C-RANの取り組みに至った背景が説明された。
LTE-Advancedは、2つの異なる周波数帯の電波を束ねて高速化するキャリアアグリゲーション(CA)や、出力の小さい基地局(スモールセル)を、広範囲をカバーするマクロセルと重ねて設置することで、トラフィックへの対処をしやすくするヘテロジニアスネットワーク(HetNet)など、複数の技術によってLTEの高速・大容量化を実現する仕組みだ。尾上氏はそれらの技術について、「単なる力技であり、賢いものではない」と評価する。一方で、それら技術を組み合わせることで優れた効果を発揮するとも話し、そうして実現したのが高度化C-RANだとしている。
無線アクセス開発部長の前原昭宏氏によると、そもそもC-RANとは、従来個々の基地局に備わっていた、信号をデジタル処理する“制御部”と、無線通信の処理をする“無線部”のうち、制御部を分離して1つの設備に集約し、無線部はそこから光ファイバーを用いて張り出すことで、複数の基地局の集中制御と無線部の省スペース化を実現する技術とのこと。そのC-RANにCAやHetNetを組み合わせ、同一の制御部に収容された、エリアの重なるマクロセルとスモールセルとの間でCAをすることにより、マクロセルで通信の安定性を確保しつつ、スモールセルとの併用で高速・大容量化を実現するのが、高度化C-RANの基本的なコンセプトとなるようだ。
さらにドコモでは高度化C-RANの導入に合わせて、端末側にも最大300Mbpsの通信速度を実現できる「カテゴリー6」を採用することにより、一層の高速化を実現するとしている。ただし、通信速度は用いる周波数帯域幅によって変化することから、現在ドコモが保有する帯域では、CAを用いても帯域幅が最大で35MHz幅、通信速度でいうと262.5Mbpsまでとなる。さらにサービス開始時点では、3Gとの兼ね合いから多くのエリアでは帯域幅が30MHz幅となり、下り最大225Mbpsでの提供になるとしている。
今回実施された高度化C-RANのデモでは、ドコモR&Dセンターの敷地内の屋外に商用の設備を設置。1つのマクロセルのカバーエリア内に4つのスモールセルを設置した環境の中で、LTE-Advanced対応のデータ通信端末を用い、高度化C-RANが高速通信や通信の安定にどのような形で影響しているのかを公開した。
CAによる高速通信に関するデモでは、800MHz帯(15MHz幅)のマクロセルと、1.7GHz帯(20MHz幅)のスモールセルとのCAで、どの程度の速度が出るのかを測定。その結果、下り最大235Mbpsの通信速度を実現することを確認できたが、デモ当日は雨天のため設備に急遽屋根を設けたことなどから、ややパフォーマンスが落ちているとのこと。ドコモが実験を実施した時は、最大で下り243Mbpsの通信速度を実現しているそうだ。
またCAとHetNetによる安定性のデモでは、LTE-Advanced対応端末と、CAに対応していないLTE端末を同時に移動させ、スモールセルの境界でも安定した通信を確保できるかを比較。結果、LTE端末ではセル境界で通信する基地局が切り替わるため通信速度が急激に落ちてしまうが、LTE-Advanced対応端末では常にマクロセルに繋がり続けることで、スモールセルが切り替わっても安定した通信速度を実現していることを確認できた。
前原氏は、高度化C-RAN導入後の通信速度高速化に向けた取り組みについても説明。2014年12月に割り当てが実施された3.5GHz帯を、今年度末より運用開始することで一層の高速化を実現することに加え、CAに用いる周波数帯を2つから3に増やすことや、4×4MIMOの導入などによって高速化を図るとしている。また次世代の通信方式となる5Gに関して、尾上氏は、多数のアンテナ素子を用いることで高速化を実現するMassive MIMOと、高度化C-RANの組み合わせなどによって、高い周波数帯を用いて高速化を実現しながらも、従来と同様に広い範囲をカバーできる技術に挑戦したいと話した。
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