これは実際にもかなり役に立っている。Oculusは、さまざまな幻の世界を行き来する7.5分間のデモ体験を見せてくれたが、そこでは自由に周囲を見渡したり、探索したりすることができる。その際、たとえばティラノサウルスが背後にいたり、何か注目すべきものがある場合に、3Dサウンドの音でそれを知らせるのだ。自由に動けて、好きな方向を見られる点で、筆者は「Sleep No More」のような観客が参加する劇体験を思い起こした。仮想現実がこれほどリアルに感じられたことは、これまでなかった。
私は、不思議の国のアリスに出てくるようなビクトリア朝風の居間にいて、鏡をのぞくと、宙に浮かぶマスクがこちらを見返してきた。その脇には、金色の天使が立っていた。スチームパンクに出てくる巨大都市の高層ビルの屋上で、数十階下の地上を見下ろしながらその端を歩いた。エイリアンの世界で、コミカルだが生き生きとしたエイリアンが近くから私を観察してきた。巨大なロボットの腕がきらめく魔法の杖と戦っている中、楽譜スタンドの後ろに身を隠すと、そのスタンドが粉々になった。頭の上で恐竜が咆吼し、私は慌てて道を譲った。鉄道が走るミニチュア都市でかがんで歩き回り、トラックに顔を近づけて観察した。折り紙でできたヘラジカやその他の森の動物と一緒に、アニメ風のたき火を囲んだ。また、Epicが提供した最後のデモでは、巨大都市の銃撃戦で兵士たちが銃を撃ち合い、頭上を車が回転しながら飛んでいく中を、銃弾の動きが見えるスピードで駆け抜けた。
バーチャルなものの周囲を動き回ることも、その下をくぐることも、物をつかむこと以外は何でもできた。
出来がよかったサムスンの「Gear VR」(こちらもOculusが開発したもの)と比べても、Crescent Bayはさらに大きな飛躍を遂げている。私は口をあんぐりと開け、ほほえみ、笑った。それは驚きの体験だった。
Oculus Riftにはまだ足らないものも多くある。たとえば少なくとも公式デモには、物をつかんだり、物と相互作用する方法はない。空間が限られていれば、動きにも制約が加わる。また、これを使っている間は周囲を見ないまま動くことになる。デモルームにはクッションがあったが、これを自宅で試していたら、おそらく足をくじいていただろう。ケーブルも問題だ。Oculus Riftがケーブルで接続されている限り、完全に自由な動きは難しい。筆者は何度かからんでしまったケーブルを解かなくてはならなかった。また、物に触れることも、動かすこともできない。OculusがNimble VRを買収したことを考えると、次はオブジェクトに触れたり、仮想世界で何かをするということが、重要な一歩になるはずだ。既存の周辺機器やアクセサリを使って、本物に近い相互作用を実現することは可能だが、VRの相互作用の標準として広く通用するものは公式にサポートされていない。これがいつになるかに注目していくべきだろう。
ヘルメットを取ったとき、筆者の目からは涙が流れた。うそっぽく聞こえるが、これは本当だ。VRにはまだ完成した製品はなく、現実世界で本当に役に立つ利用法も登場していないが、これはリアルだ。そして、新しい製品が出るたびに、毎回筆者は期待以上のものを体験している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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