しくみデザインは1月13日、身体を動かすだけで音楽を奏でることができるPC向け楽器アプリ「KAGURA(かぐら)」を公開した。1月14日よりWindows版を無償で配布している。Mac版の公開は未定。
KAGURAは、インテルが2013年に開催したアプリ開発コンテスト「Intel Perceptual Computing Challenge 2013」において、グランプリを獲得した作品を、約1年の開発期間を経て製品化したもの。16カ国から約2800作品の応募があった。
PCにセットしたカメラの前で腕を動かし、PCの画面上にある“音アイコン”に触れると、その動きをアプリが認識して“音アイコン”に設定された楽器を奏でられる。アイコンに触れていくだけでテンポに合わせてアプリが一定のリズムを自動的に演奏するので、音楽の知識や経験は必要ない。PCを一切操作することなく手の動きだけで楽器演奏ができるのが特徴だ。
また、奥行き認識技術に対応した「インテル Real Sense 3Dカメラ」を使用すると、手を画面から50cmまで近づけた状態で画面上に水の膜のような波紋エフェクトが発生し、そこでのジェスチャーによりテンポの上げ下げや“音アイコン”の配置変更、自分の声などを吹き込んで新たな音源を作り出すことができる。
なお、通常のウェブカメラでもアプリの全機能を使用できるが、音源の録音などにマウスを使用しなければならないなど制限があるという。演奏の模様は30秒間録画することができ、YouTubeに公開することも可能。プリセットされているサウンドパターンは5種類あるが、今後随時追加していくほか、サードパーティでもサウンドパターンを提供できるオーサリングツールも検討しているとのこと。
しくみデザイン代表で芸術工学博士の中村俊介氏は、KAGURAを製品化することになった経緯について、「Intel Perceptual Computing Challenge 2013においてグランプリを獲得し、2014年に開催されたCESでもインテルの基調講演で紹介させていただき、大きな反響をいただいた。これを作品のままにしておくのではなく、世界中の人々に楽しんでほしいと思い、1年かけてさらに機能を拡充して製品化することにした」とコメント。
また開発にあたっては、手の動きが“音アイコン”と重なった際に音を出す2Dの動きと、画面にユーザーの手が近づきジャスチャーをした際の3Dの動きの切り替えをどのようにユーザーに認識させるかという点で工夫を凝らしたという。「ジェスチャーの認識は技術的にどうしても甘いところがある。手を50cm以上画面に近づけると精度は上がるのだが、それをただ“手を近づけてください”と注意喚起するのではなく、ユーザー自身が自然にそこまで手を近づけたくなるようなUXを生み出そうとした」(中村氏)。
一方、ゲストとして登壇したインテル 戦略事業企画部ディレクターの亀井慎一朗氏は、KAGURAについて「(2013年のコンテストで)KAGURAは、手の動きをトレースする、奥行きを感知する、ジェスチャーを認識するといったインテル Real Sense テクノロジーをほぼ全て活用して開発されたアプリ。それに音楽という要素を加えて誰もが簡単に新鮮な音楽体験ができる点が高く評価された。UI、UXの作りこみも素晴らしい」と評価。
インテル Real Senseテクノロジーを搭載したPCは今後の普及に向けてPCメーカーと調整を進めていくとしており、「2015年は各メーカーからインテル Real Senseテクノロジーを搭載したPCがどんどん登場する。KAGURAが子どもからお年寄りまで多くの人が多彩な体験ができるようなアプリになっていくことを期待している」と語った。
なお、同社によるとKAGURAの認知獲得とアプリの機能拡充を優先させるため、ユーザー数の目標や収益化の見通しについては未定とのこと。ビジネスモデルについては未定としながらも、プロ向けの創作ツールなどの提供は考えているという。「KAGURAは楽器経験や音楽の知識が全くない私でも楽しめるし、プロならば本格的なカッコいい演奏ができる。子どもなら大人が思いつかないような面白い演奏をするはず。多くの人にKAGURAを体験してもらえれば」(中村氏)。
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