この連載では、シンガポール在住のライターがアジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、アジアにおけるIT市場の今を伝える。
南アジア経済は2014年に5.4%、2016年に6.4%の成長が見込まれる有望市場だ。この地域の成長可能性に注目するベンチャーキャピタル(VC)は少なくない。特に、インドの金融テクノロジ分野のスタートアップに対して熱い眼差しが向けられている。
シンガポール拠点の「BlueHill Asset」はそのようなVCの1つ。同社はこのほど、インド・グルガオン市のモバイル送金スタートアップの「Triotech Solutions」に300万ドルを出資した。
Triotech Solutionsのモバイル送金サービスは、口座を持たなくても郵便局間で資金のやりとりができる画期的なサービス。送金人が郵便局で振り込みをする際、モバイルアプリに送金人と受取人の電話番号を入力すると、送金完了の通知が受取人に届く仕組みになっている。受取人は、送られてくる通知に記載されているコードを郵便局で提示すると、お金を受け取れる。
現在、国内1万5000カ所の郵便局で利用でき、都市部と地方の両方で利用できる国内唯一のモバイル送金サービスといわれている。同社は、今回調達した資金でモバイル送金サービスが利用できる郵便局を4万カ所に増やす計画だ。
BlueHill Assetのマネジング・ダイレクターであるVicknesh Pillay氏は、シンガポール経済紙ビジネス・タイムズの取材で「インドにおけるモバイルウォレットとモバイルバンキング・送金市場の成長ポテンシャルは非常に大きい。われわれは、Triotech Solutionsがこの成長市場の中心に位置していると考えている」と語った。
また「シンガポールだけでなく、他のアジア諸国のファンドもインドのスタートアップに注目している。今後アジア域内での投資活動が活発化する兆しだ」と指摘した。インドのような新興市場ではVCが不足していることもこのトレンドをけん引する要因になっているという。
Pillay氏が指摘するように、インドでは今後モバイルバンキング、送金サービスが盛り上がりを見せそうだ。インド紙タイムズ・オブ・インディアなどによると、「Triotech Solutions」、米NASDAQ上場の「Amdocs」、インド銀行大手「State Bank of India(SBI)」、インド国営通信サービスプロバイダ「Bharat Sanchar Nigam Limited(BSNL)」の4社が、インド政府が推進するモバイルバンキング・プロジェクトを支援することが明らかになった。同プロジェクトは、国内7500万世帯にモバイルバンキングを普及させる。
4社は「Amdocs Mobile Financial Services」と呼ばれるモバイルバンキング・サービスを提供する。このサービスでは、国内のモバイル通信加入者がモバイルウォレット口座を開設し、送金、各種支払いなどができるようになるという。
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