スマートマシン時代の到来

コネクテッドカーと自動運転技術が作る未来(後編) - (page 4)

 保険適用においても、自動運転車向けの自動車保険の商品化が必要となり、自動運転車のシステムログを解析して保険金を決定するといったように、保険適用の判断や保険料率制定などの保険制度などの整備も検討課題となる。

 日本では、2014年5月に、東京海上日動火災が自動運転車を対象にした保険商品を開発する専門部署を立ち上げている。公式ページには自動運転車運転中の事故を補償する商品を案内しており、相手に損害を与えてしまった場合や、自身がケガをした場合を補償する商品(特約)についての内容が記載されている。

 自動運転車のコスト構造も大きな課題だ。Googleの自動運転専用のレーザー光線を利用したリモートセンシング技術「ライダー」だけでも7万ドルのコストがかかっており、自動運転車の開発には莫大な研究や設計コストが必要となる。IHS Automotiveの自動運転車の市場予測で2025年の自動運転車の価格は、7000ドルから1万ドル、2030年には5000ドル、2035年には3000ドルと予測している。一般消費者が自動運転車を購入できる価格になるまでには、少なくとも10年以上はかかるだろう。

 日本では、心理的な側面も指摘されている。Cisco Systemsが発表した自動運転車に関する意識調査「Configuring the Automatic Generation of CAR Reports and Alerts」によると、「自動運転車を利用したいか?」という問いに対して、ブラジルでは95%、中国では70%、米国では60%の人が「イエス」と答えたのに対して、日本人はわずか28%となっている。

 日本においては、自動運転車の可能性は理解されるとしても、実際の利用にあたっての社会の合意形成の獲得に時間を要すことが想定され、この意識の差が、今後の普及における大きな障壁になる可能性がある。

2020年の東京五輪が節目に

 自動車メーカー各社は2020年をめどに自動運転車の実用化を目指しているが、2020年は東京五輪が開催される年である。日本では自動運転車の先進国として、国内外にアピールできる絶好の機会となり、今後5年間の取組みが重要な鍵となるだろう。

林 雅之
国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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