スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2014年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は佐野正弘さんに、今年注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。
1つは、キャリアの新料金プランです。NTTドコモが「カケホーダイ&パケあえる」を打ち出したのを皮切りに、各社の料金プランが“音声通話は定額制、データ通信は従量制”と、データ通信で収益を上げる方向に大きく舵を切ったのは、今後の競争軸やキャリアの成長戦略を考える上でも、大きな変化といえるでしょう。
また新料金プランでは、スマートフォンだけでなくフィーチャーフォンを音声通話定額の対象にするなど、キャリアが冷遇し続けてきたフィーチャーフォンユーザーに対しても施策を打ってきたことに驚かされました。NTTドコモは新料金プランへの移行を急いだ結果、大きな減収となるなど反発や反動も小さくありませんでしたが、スマートフォンへ強制移行させることなく、タブレットとの2台持ちなどでデータ通信の需要拡大につなげようとしている点は評価しています。
2つ目は“格安スマホ”の台頭です。SIMフリーのスマートフォンと、MVNOのSIM自体は以前より存在していましたが、大きな店舗を持つイオンがそれをセットにして販売したことは、利用者がヘビーユーザーに偏っていたSIMフリー端末やMVNOの市場性を大幅に拡大させたという、非常に大きな意味があったと感じています。
その影響もあってか、今年中盤から後半にかけては、MVNOに参入する企業が急増し、情報を追いかけるのも大変な状況になりつつあります。ですがイオンスマホの成功を受けてか、フィーチャーフォンユーザーをターゲットに据えるMVNOが増えた一方、そうした人達に端末をインターネット経由で販売し、Androidを素のままの形で使わせるなど、環境の未整備から事業者側のエゴが見えがちなサービスが少なからず見られたのも事実です。市場拡大のためにはターゲットの見直しや販売環境の整備などが、より求められる所ではないかと感じています。
3つ目はiPhoneの大画面化、ひいては大画面スマートフォンの増加です。海外のAndroid端末では以前より起きていた動きではありますが、頑なに4インチのサイズ感を守ってきたiPhoneがより大きな画面サイズを実現したことは、国内の端末市場だけでなく、アプリなどコンテンツ市場においても大きな変化をもたらすと考えられます。
ただ一方で、大画面であることがもてはやされる風潮に対しても、疑問を抱いた1年でもありました。「iPhone 6」が最も支持されていることからも分かるように、やはり片手での通話や文字入力に大画面は適しておらず、ユーザーが大画面化についていけていない印象を受けます。大画面端末の増加はグローバルモデルを調達しコストを下げたいキャリア側のエゴが少なからずあると感じているので、より日本のユーザーに適したサイズ感の端末開発が、積極的に求められてもいいように思います。
「iPhone 6 Plus」など大画面のモデルを購入して使ってみましたが、いざ持ち歩くとなると従来の使い方を大きく変えなければならず、不便な印象を受けたのは事実です。そうした意味でもやはり、「iPhone 6」がベストの選択となるのかもしれません。
今年も多くのアプリを評価してきましたが、ニュースアプリ、特にビジネス系の「NewsPicks」の人気が高まっていることには驚きました。若年層の時間つぶしやコミュニケーション用途だけでなく、ビジネス層に向けたサービスがアプリを主体に提供し、しかも人気を獲得するというのには、大きな変化の波を感じています。
ゲームに関しては「モンスターストライク」の躍進ぶりが注目された1年でしたが、今年を象徴する一本を挙げるとしたら「白猫プロジェクト」を推したいです。いつでも気軽に始めて止められる、手軽さが人気を獲得したゲームアプリが主流だったところに、すぐにはやめられないアクション要素を取り込み、しかもサービス開始当初から大規模なテレビCMを実施するなど、ヒットするゲームアプリの常識を覆して人気を獲得したことが、その大きな理由です。
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