logo

林信行が振り返る2014年のモバイル業界--2015年に芽を出す4つの市場

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2014年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は林信行さんに、今年注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。

.

 2015年は、モバイル業界にとって大きな変化の年となる。2014年はある意味、その変化の前奏曲となる年だった。iPhone発売からの6年ほどを整理する年であり、これまでの年と比べて派手なニュースは少なめだ。その分、これまでのモバイル業界の最新技術がブラシュアップされて固まったイメージが強く、その代わりに2015年以降に芽を出しそうな技術がたくさん発表された。参考までに2013年の記事はこちらで読める。

──2014年のモバイルニュースを3つを選ぶとしたら何ですか。

ソフトバンク新製品発表会見送り
AppleがiPadの法人向け販売でIBMと提携
iPhone 6/6 Plusと共にApple Pay発表

 各メーカーが1年に2度も3キャリア向けに新製品を発表するという慣習には無理があり、メーカーのためにもやめてほしいと切に願っていた。数年前から新発表製品の機種数は着実に減りつつあったが、ここへきて無理矢理な年2回の製品発表会を縮小する流れが出てきたのは、日本メーカーが一息ついてじっくり次の戦略を練る上でもよかったのではないかと思う。Tizenが消えた代わりに1年の最後に、吉岡徳仁デザインで登場したFirefox OSの端末「Fx0」には個人的にビックリしたが、万人向けではないのと、勝負は2015年からということで番外とさせてもらった。

 iPadは、これまでホワイトカラー以外のビジネス利用で大きな成功事例をつくってきた。一方で、すでにPCを使っていたような企業では、導入が早かったところもどう活用すればよいか答えを見つけられずにいるところが多い。そこに世界に20万人以上の業界ごとに専業化されたIBMの法人営業部隊がiPadを販売促進する、というのは大きなニュースだ。これまではThinkPadという自社ブランドの製品があったが、それがなくなったところにちょうどうまくiPadという次世代の端末がハマった。今後、ここからどれくらいの規模のどんな事例が生まれてくるかに注目したい。

 一方、Apple Payは、これまでの日本のおサイフケータイの発想で見てしまうとすごさが見えなくなるが、オムニチャネルなどここ数年でてきたコマース系のトレンドを枠組みごと再定義したかなり画期的なサービス。Google Payが、これに合わせる形で進化をし、Apple Pay/Google Pay両対応の店舗側端末が登場すれば、世の中の支払いシステムは(そしてクレジットカード事業は)大きく変わりそうだ。

 なお、2014年、モバイル関連の動きはアプリケーション、つまり応用のレイヤーで活発だった印象がある。筆者はモバイル関連全般のトレンドについてよく講演活動を行っているが、今年は医療や福祉におけるモバイル機器の活用や教育機関におけるモバイル機器活用についての講演をする機会が多く、実際に話題としても、スマートフォンで操作する新型の義手や義足など、これらの分野でのイノベーションが多かったように感じる。

──今年購入した端末で一番のお気に入りは。

 パロットの「Zik 2.0」。携帯端末ではないが、「Zik 2.0」はスマートフォンとBluetoothでつながる最高のヘッドホンだと思う。これほどユーザーを幸せにしてくれる商品はなかなか出てくるものではない。C.24は鍵盤が思っていたよりもずっとしっかりしていてビックリ。ワイヤレスキーボードの可能性を感じた。ケータイ端末としてはiPhone 6とiPhone 6 Plusを気分とバッテリ残量で使い分けているが、それ以外の端末はほとんど買わなくなってしまった。

──今年よく使ったサービスやアプリは。逆に使わなくなったものがあれば教えて下さい。

趣味趣向発見サービス「Pinterest」
スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」
モバイル向けCMS「dino.vc」
earth

 2013年からの定番を使い続けているだけで、新たに使い始めて習慣として残ったサービスは社外取締役をやっているリボルバーのdino.vcくらいだった。ただし、Pinterestは使い方が変わった。素晴らしいモバイル用のユーザーインターフェースが登場したことでiPhone/iPadから使う機会が格段に増えた。なお、台風や暴風雨など天気が荒れた今年。いわゆるウェブサービスとは違うが、earthのウェブサイトはよくチェックしていたので、列記させてもらった。

──2014年はモバイル業界にとってどのような1年だったと考えていますか。

 冒頭でも書いた通り、2015年に向けての種まきが行われた年で、全体として派手なニュースは少なかった。後で歴史を振り返ってみても何があったかなかなか思い出せない年になりそうなイメージがある。

 1つ大きなトレンドがあるとしたら、年頭から年末までセキュリティ問題が常に大きなニュースになり続けた年だった(もっとも、これは数年前からそうかもしれない)。

 2013年に書いた2014年の予想で、いよいよパスワードに代わる仕組みが本格的に普及するかもしれない、と書いたが、残念ながらこの予想は外れた。アップルのiOS機器がほぼすべて指紋認証のTouchIDを搭載し、パスコード/パスワード入力なしに安心して使えるようになったのは大きな一歩だ。

 Macの最新OSでは、乱数でパスワードをつくって自動挿入してくれる機能がある。これを使えば、使用している全サービスでランダムで作られた異なるパスワードを用意し、それを指紋認証やマスターパスワードだけで利用することもできる。Macだけはマスターパスワードの入力が必要だが、2015年には近くにある同じApple IDのMacならiPhoneを使った指紋認証で認証が完了する、といった仕組みくらいは用意されるのではないだろうか。もっとも、ランダムに生成したパスワードを使うというのは勇気がいる行為で、せっかくこの機能があるからといって、まだ使っている人は少数派ではないかと思う(筆者も、まだ数個のサービスでしか活用できていない)。

 一方、期待していたグーグル側ではパスワードに代わる仕組みの普及が遅れている。GoogleはChrome 38からFIDO AllianceのUniversal 2nd Factor(U2F)規格に対応したUSBセキュリティキーでの認証に対応しているが、果たして2015年以降、この路線を拡大していくのか気になるところだ。

──2015年は「コレがくる」という端末やサービス、トレンドなどがあれば教えて下さい。

 単純に2014年に発表されているiOS関連の新世代テクノロジだけでもApple Pay、HealthKit、HomeKitがある。

 既にHomeKitに対応した家電用の通信チップの出荷も始まっており、1月初頭に開催されるInternational CESではHomeKit対応家電製品の登場が期待されている。それにあわせてAndroidのホームオートメーション規格に対応した製品も出てくるだろう。

 重要なのはiOSとAndroidの両規格に対応したホームオートメーション機器の広がりで、これが普及して初めて本格的なホームオートメーションの時代がやってくる。アップルもグーグルもバカではないので、それくらいのことはわかっているはず。実は水面下で手を握っている部分もあるのではないかと思う。

 家のオートメーションと並んで話題になりそうなのが、車内のスマート化で、こちらもCarPlayとAndroid Autoに対応した車が2015年早々にも出てくることがわかっている。

 一方、アップル自身が腕時計型ウェアラブルのApple Watchを開発することを発表したことで、腕時計型ウェアラブルの開発は、少しスローダウンしそうだが、例えば体重計や血圧計といったそれ以外のヘルスケア機器のHealthKit対応は今後、進んでいくはずだ。

 これは人々の健康管理において新しい地平を切り開くかもしれない。今、スポーツの分野はセンサ内蔵のスポーツ機器などの登場で、その場で自分のアクションを振り返り修正をかけることがトレンドとして広まっており、運動スキルの向上がかつてない勢いで起きている。ヘルスケアの分野はすでに数年前のレコーディングダイエットブームによって、記録と照らし合わせて健康を管理することが非常に大きな効果を発揮することが証明されている。今後はさらに、体重以外のさまざまな分野で行動とその結果の照らし合わせが可能になり、意識して自分の健康を変えていく時代がやってきそうだ。

 2015年、もう1つ大きな話題になりそうなのが「ドローン」だ。米国でAmazonが商品の配送にドローンを使う目標の年として掲げていたのがまさに2015年だった。本当に2015年中に実現するかは、まだはっきりしないが、米国の航空局は2015年早々にもドローンの商用利用に関する法整備を行う旨を発表している。

 これらすべての動きが2015年中に形になるとは思えないし、これ以外にも面白い動きはあるだろう。しかし、当面の間、もっとも注目すべきはホームオートメーション、車のスマート化、ヘルスケアそしてドローンの4つのエリアになるはずだ。

-PR-企画特集