本田雅一が振り返る2014年のモバイル業界--iPhone 6空前の大ヒットと熱狂時代の終焉 - (page 2)

──今年購入した端末で一番のお気に入りは。

 LUMIX CM1。僕の場合、写真を起点にスマートフォンを使うことが多いから、内蔵カメラが本格的という点は魅力。ズームレンズはついていないけれど、ちょっとした撮影ならば、仕事用撮影や旅行先での思い出作りにも十分使える高品位カメラだから、大きさ重さもむしろ”軽くて小さい”と言えるぐらい。問題はその価格。899ユーロという欧州価格は、さすがに高価。日本発売時には9万円を切ってほしいな。

──今年よく使ったサービスやアプリは。逆に使わなくなったものがあれば教えて下さい。

 もっともよく使ったわけではないけれど、便利になったなぁと実感しているのがiOS標準アプリのPassbook。デジタルでさまざまな「券」を管理するPassbookは、QRコード、バーコードを使ったシステムと相性がとても良く、とりわけ取材旅行の多い僕には最高のアプリ……になってきた。

 「なってきた」と書いたのは、以前はそうでもなかったから。今年、よく使うようになったのは、以前から使っていた航空機への搭乗券はもちろん、ホテル予約、レンタカー予約、マイレージ会員証などなど、旅にまつわるさまざまな場面で活躍するようになってきたからだ。特に米国への出張では、ほとんどの空港がQRコードやバーコードの読み取りに対応しているので、ペーパーレスでどこまでもズンズン進んで行ける。

 カードのグラフィクスを表示するだけと言えばそうだけど、出発時間になるとロック画面に必要となるカードがリストアップされたり、Passbookでカードを表示中は画面が省電力モードに移行しないなど、なかなか芸が細かい。

 逆に使わなくなったのはLINE。元からLINEを好んで使っていなかった筆者だが、ID乗っ取り事件の多発以降、必要な時以外には起動しないようになった。LINEがなくても必要な連絡は取れるからね。なくてもなんとかなるものだ。おそらく、今後も「LINEで連絡を」と頼まれない限り、使わないんじゃないかな?

──2014年はモバイル業界にとってどのような1年だったと考えていますか。

 「暗中模索」の印象。スマートフォンによるイノベーションの後、何をやってもキチンと改良さえされていれば、どんどん前に進んでいく。何もない地平を開拓するようだった過去5年に比べると、市場全体は大きくなり、スマートフォンを取り巻くアプリ、サービス、周辺デバイスともに充実している。しかし、一方ではある種の閉塞感も感じるようになってきた。

 スマートフォンは、誰もが持ち歩くネットワークに常につながっている小さなコンピュータ。それだけに、新たに生み出される製品の多くは、スマートフォンを前提として作られている。いわばスマートフォンの存在が、次の新しい製品を生み出すインフラになっている。

 だからこそ、モノのインターネット(IoT)といったコンセプトが注目されているのだが、まだ未来を示唆するような決定的な提案は現れていない。その一方、スマートフォンの登場によって市場が失われた数々の製品ジャンルの売り上げ低下は著しい。こうしたことが、ハードウェアベンチャーによる新製品が数多く発表されていながらも、今ひとつスッキリしない理由かもしれない。そんなわけで、鼻が詰まったようなスッキリしない一年だった……というのが、僕の率直な感想だ。

──2015年は「コレがくる」という端末やサービス、トレンドなどがあれば教えて下さい。

 “大きな市場に成長するか否か”は別として、IoTというジャンルがさまざまな新しい製品を生み出すことは確かだろう。しかし、一方でアイデアだけでは乗り越えられない壁もある。話題先行の製品に関しては、製品化に至る過程でちょっとした混乱も生まれるのではないかと懸念している。”モノのインターネット”は、もちろんそれを実現する技術も必要だが、むしろ各製品をきちんと商品として成立させるための交通整理の方が大変じゃないかと思うからだ。

 たとえば、ある種のIoT製品である米ベンチャーの「Plastc card」は、複数のクレジットカードや会員証の磁気ストライプをシミュレートする電子クレジットカードとも言える商品を開発している。使用時は、どのカードを使うか選んでクレジットカード端末に通すだけ。

 スマートフォンと連動して動作する仕組みで、近くにペアリングされたスマートフォンがなければ自動ロックがかかる機能も設定できるので、財布盗難・紛失時のリスクも軽減できる。バッテリなどの問題もあるが、技術的にも不可能ではないと思う。

 しかし、いわば「公式に認められたカード偽造装置」とも言えるこのサービスを、果たしてカード会社が受け入れるのか?というと、なかなか厳しいようにも思える。実は個人的にもプリオーダーしているのだが、本当に期日までに我が家にカードが届くだろうか?これはほんの一例でしかない。スマートフォンの存在を前提に、身の回りの意外なものがインターネットにつながっていく流れは、より一層強まっていくものと思われる。玄関のドアロックから車庫の様子、ペットの餌やりやプランターへの給水、もちろん、照明やオーディオ、ビジュアル、それこそ枕や旅行鞄まで、あらゆるモノがネットでオンラインになろうとしている。

 アイデアは無限。なんでもできる。しかし、そうした新しい社会を実現するためには、まだまだ乗り越えるべき障害は大きい。現在の社会システムとの整合性がとれていくには少しだけ時間がかかりそうだ。

 また、IoT製品の中には、とても画期的にはみえるけれど「それ、本当に必要?」と思うものもある。そうした視点で考えると、たくさんの商品が登場してくると予想される中、購買者自身が製品を見極める目を養う必要もあるだろう。2015年は玉石混淆さまざまな商品が飛び交うに違いない。

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