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木暮祐一が振り返る2014年のモバイル業界--“スマホ成熟市場”から次のステップへ

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 スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2014年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は木暮祐一さんに、今年注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。

──2014年のモバイルニュースを3つ選ぶとしたら何ですか。

 料金プランの考え方の見直し(通話はかけ放題、一方でパケットは従量課金)など、重要な業界のターニングポイントとなった話題もありますが、他の識者も話題にされると思われますので、私的なトピックスを挙げてみますと……。

1.国内線での航空機内Wi-Fiの本格スタート

 私は2013年春から青森に拠点を移した関係で、航空機を使った移動が非常に増えました。そうした中で、大変重宝しているサービスです(青森発着便はまだ未対応ですが)。

 じつは航空機上で携帯電話やインターネットの利用を可能にしようという試みは2000年代初旬から検討されてきました。2004年には米国ボーイングの系列企業が「Connexion by Boeing」の名称で通信衛星を利用した機内インターネット接続サービスを開始し、JALをはじめ世界の主要航空会社がこれを採用するなどしていました。しかし、まだこの時代はノートPCの活用が中心で、一部のビジネスマンを中心にニーズはあったが利用は伸びず2006年にはサービスが休止されています。

 その後、米国では衛星通信を使わず、地上アンテナと航空機側下部に付けたアンテナとで通信を行うシステムを考案するなど、試行錯誤がありましたが、再び衛星通信を使うものが提供されるようになり、国際線を中心に世界の主要航空会社が2012年頃から順次導入を始めていました。そしてついに2014年7月から、JALが国内線にも導入を開始したのです。これって、やはりWi-Fiを必要としているユーザー側のニーズが少なくとも10年前に比べ大きく変化して来た結果ではないかと思うのです。かつては一部のビジネスマンがノートPCでWi-Fiを利用するというものでしたが、その後携帯電話からスマートフォンへシフトし、タブレットなど手軽にインターネットを利用する端末が一般のユーザーに広く普及したため、機内でWi-Fiを使いたいというニーズが改めて注目されるようになったのでしょう。

 こうした動きと同時に、2014年9月1日からは国土交通省の航空機における電子機器の利用についての告示も緩和され、電波を発しない機器であれば離着陸時を含め常に利用が可能となりました。以前と大きな違いがないようにも感じますが、機内モードにしてあれば、滑走路への移動中や離着陸時にもスマホで機外の風景を撮影できるようになったのです。わずかなことですが、これだけでも旅が一段と楽しくなりました。

2.eSIMの登場

 2014年10月に発表された「iPad Air 2」と「iPad mini 3」の米国向けセルラーモデルに、おそらくeSIMと思われる新しい仕様のSIMカードが導入されたようです。これは2013年末に、国際的モバイル業界団体であるGSMAが「eSIM(Embedded SIMともいう)」として仕様を公開したものなのですが、通信を通じた遠隔操作によって契約事業者情報を書き換えることができるSIMカードで、日本でもNTTドコモが2014年6月に法人向けM2M機器用としてeSIMの提供を開始しています。eSIMはあらかじめ端末製造時に最初から装着しておき、通信を必要とする際に遠隔でアクティベーションしたり、また海外で利用する際は現地のeSIM対応通信キャリアの電話番号を遠隔で書き込んだりできるというものなのですが、もはやSIMカードを採用する意味が薄らいで来たようなニュースでした。なぜeSIMが注目されるのかというと、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)が今後普及していくに当たり、遠隔でアクティベーションさせるといった処理が可能になると、普及に一段と拍車が掛けられるということなのです。

 現在、わが国でeSIMに対応しているのはNTTドコモのみのようですが、今後はさまざまな「通信する電子機器」が登場してくる中で、ユーザーが必要な時に、好みの通信キャリアを選択して、データ通信を利用するというシチュエーションが増えて行くのでしょう。SIMロック解除議論も注目されましたが、SIMロック自体のやり方も、従来の端末側へのソフトウェアロックから、通信キャリア側ネットワークでIMEI(端末個体識別番号)の判別による接続許諾というようなやり方が一部に採用されるなど、SIMロックそのものが見直されつつありますし、eSIMの考え方に至ってはSIMカード自体の存在意義もゆらぐような事態です。

3.端末の並行輸入と法規制

 日本で合法的にモバイル機器を使うには、日本の電波法で定められる基準を満たしていることを認定された端末でなくてはなりません(いわゆる技適問題)。携帯電話の時代は、通信方式が国内の通信方式と合致していれば、国際ローミングという形で海外からの渡航客が日本で持ち込み端末を利用することが許されていました。ところがWi-FiやBluetoothに関しても技適は必要で、海外からの渡航客がスマホやタブレットを使う場合に電波法に抵触する危険性がありました。

 さらにMVNOによる格安SIMの登場で、世界の安価なSIMフリースマートフォン端末を並行輸入し、これを日本で使うということも事実上可能になりましたが、この電波法をクリアすることはできず、違法端末扱いになってしまいます。

 そうした中で、2020年には東京オリンピックが開催されることも決定し、今後一段と海外からの渡航客も増えるでしょうし、格安SIMの台頭とともに並行輸入スマホも増えそうな勢いです。このため、総務省では電波法の見直しにも着手し始めています。しかし、海外からの来日観光客向けに観光地を抱える自治体がすでにフリーWi-Fiを整備するなど、法改正よりも先行して、日本で未認定の端末が利用されるシチュエーションが目に余るようになってきました。

 たとえば私は評価用に米国で販売された眼鏡型ウェアラブル端末「Google Glass」を入手しましたが、これも技適問題で合法的には国内で電源を入れることができません。そのため、レビューするためにわざわざ韓国へ渡航して端末を検証するなどしてきました。韓国も端末の認定は厳しい国ですが、「個人が私的利用する目的で国内に持ち込むものに関しては同形端末1台に限って免除する」という消費者にとっては嬉しい除外規定がありました。果たして、日本の電波法は今後どのように改善されて行くことになるのでしょうか。2020年というリミットがありますので、その動向に要注目ですね。

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