前回から始まりました、FABGIRL近藤那央の興味津々、2回目にして掃除ロボット「ルンバ」で知られるあのiRobotのCEOのコリン・アングルさんにお話を伺うことができました。ロボットについて話し始めると止まらない、キラキラとしたとても優しい方でした。
今回、アングルさんの来日に合わせて記者会見が行われました。そこではiRobotの概要から始まり、なぜルンバは他社に抜かれることなく売れ続けているのか。掃除機というカテゴリの中で、ロボット掃除機が今後どれくらい伸びていくのかなどを熱く語り、さらに個別インタビューをさせていただくことができました。
ロボットを作る私にとって、iRobotやコリン・アングルさんは“憧れ”のような存在です。というのも、まだ誰もロボットビジネスを考えつかなかった頃に発起し、世界中の家庭で動くロボットをつくり、成功されているのです。今回のインタビューは本当に楽しみにしていました。
お話の中でしきりに、iRobotはロボットメーカーであり、電機メーカーではないという所を強調されていました。ロボットメーカーだから電気メーカー的な家電を“スマート化”するというアプローチではなく、“人間がする仕事を代わりに行うロボットを作る”というアプローチを取り、さらに集中させることでロボット掃除機1つに多額の投資ができるとのことでした。製作するときのアプローチ!確かに良く考えてみると、製品は一見同じようでも違いますね。
ロボット掃除機は、多くの製品が出てきています。ロボット掃除機の成長率は20%超で、金額ベースでは2014年の全掃除機のうち18%がロボット掃除機で占められるようになってきているそうです。
そしてそのスマート化されたロボット掃除機の中には、話しかけてコミュニケーションできるものも出てきました。それに対してどう考えているかを聞かれたアングルさんは、今後もiRobotが話したり、かわいい外見をしたりした掃除ロボットを作る予定はないと、断言されていました。
むしろ、そのような”クリーチャー”(生き物)がそこにあるかのような感情を喚起させないためにあえてクールにかっちりとしたデザインにしているのだそうです。でも、アングルさんは、「ルンバを購入する人は、最初は誰もルンバがかわいいと思って購入しているわけではないが、ほとんどのユーザーが購入後にルンバに名前を付けたりと愛着を持っているという所が面白い」と言っていました。
なぜクールな製品に名前を付けるほどの愛着が湧くのでしょうか。無機質なものであっても自律的に動いていて、しかも自分のために働いている。そこには見た目のかわいさというよりも、“けなげさ”からくる人間の感情移入があるのではないかと感じました。”文句の一つも言わずに一生懸命人間の為に掃除をするルンバ”というように考えてみると、愛らしくなり、愛着を持つのかもしれません。
私は、家庭内ロボットはほっこりとさせる外見で、人間と協調できるような機能を持ったものが良いと思っていましたが、ルンバが無機質な外見であるにもかかわらず多くのユーザーの心をつかんでいることを考えると、その考えは改める必要があるかもしれません。さらに外見と関係して面白いなと思ったのが、ルンバを“おもちゃ”カテゴリに入れられないようにする努力をしたということでした。
掃除を行うという人間の動作の代わりを行うルンバはロボット掃除機であり、いわば家庭内産業用ロボット(日本語的に矛盾していますがニュアンスが伝われば)とも言うべき存在です。ですが、ロボットという存在だけにおもちゃ扱いを受ける事を非常に恐れたのです。そこで、最初は高級デパートの企画ブースで販売することで、おもちゃではない実用的なロボットとして受け入れられたのだとか。
ですが、実は日本での最初の販売はおもちゃ屋で、その結果は燦々たるもの。2年間の撤退を余儀なくされたこともあり、新しいものを世の中に出すときのブランディングがいかに重要かということも感じました。
iRobotはとても実用的な人の生活を豊かにするロボットを作っていますが、あえて人とのインタラクションを除外したデザインをしているようにも感じます。そのことについて伺うと、「今の掃除をするというタスクに関して理想的なロボットというのは、ボタンを1回押したらその後は人間が干渉しなくても、部屋をきれいにしてくれるロボットだ。でも、タスクによっては人間の隣で作業をする必要があるから、そのときは協調性が必要になってくるね」とのことでした。
そして、人間が行った場合と同じくらいきれいに掃除を行うというタスクに対して、必要な機能だけに注力し余分な機能を削ぎ落とされ作られたロボットであるからこそ、競合他社に勝ち続けているのかもと感じました。
最後に、私がペンギン型の水中ロボットを製作してる中で、見た目と動き方から予想外に子供たちに人気があることがわかり驚いていること。これから見た目と動きが魅力的で、かつ機能性もあるようなサービスロボットを制作したいと思っていると伝えたところ、そんな私にアドバイスをいただくことができました。
「かわいいロボットというのは、成功すると思う。というのは、例えばファービーという玩具ロボットがあったけれどあれは、4000万台以上も売れている。しかも、その50%は大人が買っているんだ。寂しい思いをしている人が多いんだと思う。だから、需要がある、頑張って」
アングルさんは、頭の中に改良したいルンバの項目はと聞かれたら10分では終わらない位話せるし、作りたいロボットをすべて作るには人生が2回あったとしても足りないと言っていました。
その中で、広く社会に求められていて、ビジネスになることをやっているそうです。ロボットの話を語り、私のつたない英語に一生懸命答えてくださり、私のペンギンロボットを見て、嬉々としてiRobotで以前実験的に開発したはばたきで泳ぐ個性的なロボットの動画を見せてくださったアングルさんはとてもキラキラとしていて、本当に素敵な方でした。大きな会社になっても初期のような気持ちがそのまま受け継がれていることが、iRobotが良いロボットを生み続ける理由なのかもしれませんね。
ペンギンロボットを作っているTRYBOTS代表、慶應義塾大学環境情報学部在籍中の18歳。高校では機械科を卒業し、工作機械や、機械要素、そしてもちろんロボットが好き。興味分野は人とロボットの関係について。自分の好きなことをもっと広めるために製作、研究以外の活動にも力を入れている。デザインやファッションも好きで、よく行く場所は秋葉原と原宿。将来の夢はロボットを今のスマホのように普及させること。
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