シンガポールの大手新聞「The Straits Times(ザ・ストレーツ・タイムズ)」ウェブ版によれば、同国の交通関係行政機関であるLand Transport Authority (LTA:陸上交通庁)は11月21日、「Uber」や「GrabTaxi」などのタクシー配車アプリを提供するサードパーティ企業を対象としたレギュレーションを公布した。
利用者の安全と利益を確保することが狙い。施行は2015年の第2四半期とみられる。
レギュレーションでは、以下の5つのことが規定される。
(1)サービスを提供するには、LTAによる許認可が必要。有効期間は3年間。
(2)アプリで派遣できるのは、職業ライセンスを付与されたタクシーと運転手のみ。利用者が確実に、合法的に運用されているタクシーや運転手によるサービスを受けられるようにするため。
(3)利用者が支払わなければならない運賃やサーチャージ、サービス手数料を前もって知らせること。ピーク時や場所によって変動する、初乗り料金や距離・時間に対応する料金のレート、予約にかかる料金などが含まれる。また、利用者が特定の車種や、特定の料金のレートやサーチャージを設定しているタクシーを除外できるオプションをアプリ内に設けることも可能。
さらに、タクシー会社間の公平性を保つために、事前の入札や乗車前のチップなどによって料金をつり上げることを禁止する。加えて、アプリを通じての予約にかかる料金は、タクシー会社が定める予約料金を超えてはならない。
(4)予約するために利用者がアプリ内で入力する項目のうち、その目的地を必須項目にしてはならない。LTAが公開した文書によれば、事前に利用者の目的地を知ることで運転手がより予約を受け入れやすくなるとの見解をタクシー業界は持っているが、一方で運転手が利用者を選別し、特定の目的地への予約を避けることにつながる恐れがあることを懸念しているという。
(5)遺失物サービスや、利用者からのフィードバックや苦情の受け付けなど、基本的なカスタマーサポートを提供すること。
LTAのスポークスマンによれば、レギュレーションに従わない不履行の企業に対しては1件の違反につき最高で10万シンガポールドルの罰金が課せられ、極めて悪質な場合には許認可が取り消される。
シンガポールでは、2013年10月にマレーシアを本拠地とするサービス「GrabTaxi」の提供が開始されて以来、ブラジルの「Easy Taxi」、米国の「Uber」、英国の「Halio」など外資系サービスが立て続けに参入し、タクシー配車アプリの利用者は増え続けている。
LTAは今回のレギュレーションを設けるにあたり、こうしたサービスを提供するサードパーティ企業や利用者、タクシードライバーの協会 The National Taxi Association、タクシー会社との協議を、過去1年間行ってきたという。
シンガポールの大手新聞 「TODAY(トゥデイ)」ウェブ版が上記4社に問い合わせたところ、いずれも今回のレギュレーションについては歓迎的な姿勢を見せている。
Uberの東南アジア地域のリージョナルゼネラルマネジャー Mike Brown氏は「公布されるまでにLTAとは十分な時間をかけて協議してきた。内容については受け入れている」とコメント。GrabTaxiのゼネラルマネジャー Lim Kell Jay氏は「今回の交付を受けて、サードパーティの企業が提供するサービスが法に適ったものと利用者から認識されることになる。施行され次第、利用者が目的地を入力する項目を削除する」と今後の方針を明らかにした。
シンガポール政府による今回の措置が、日本を含む各国に影響を及ぼすのか。今後も注視していきたい。
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