アニメ監督として知られる庵野秀明氏が代表を務めるカラーとドワンゴは10月26日、短編アニメの配信企画となる「日本アニメ(ーター)見本市」を発表した。
これは日本のアニメーションの可能性を探る共同企画として位置づけられたもので、さまざまなディレクター陣によるオムニバスアニメーション作品を、11月7日より毎週金曜日に1話ずつ公開。作品は公式サイトならびに公式アプリ(iOS、Android)にて視聴可能。価格は無料でアカウント登録も不要となっている。また、翌月曜日に公開作品の解説番組をニコニコ生放送で配信するという取り組みとなっている。
第1弾タイトルとして、作家の舞城王太郎氏が監督、「エヴァンゲリオン」で知られるアニメーターの鶴巻和哉氏が手がけた「龍の歯医者」を用意。制作スタッフによるニコニコ生放送も11月10日に予定されている。
発表の場となった第27回東京国際映画祭のトークショーでは庵野氏のほか、ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏とアニメや特撮研究家として知られる氷川竜介氏が登壇。その意図を語った。
この企画の発案者は庵野氏で、アニメ業界が先細っていく強い危機感から立ち上げたのだという。日本のアニメーターが挑戦できる、自由な作品を作ることができて発表する場所がないということから、川上氏に打診をして実現したとしている。
川上氏は「もうかる仕組みを考えてと(庵野氏から)言われたけど、無理ですと(笑)。だからお互いに商売や採算は考えていない」という。庵野氏は商売を抜きにしてもここで新しいことをしなければいけないと思ったという。「アニメ業界や作品は袋小路で、ギュウギュウのところまで来ている。このままだとストライクゾーンが狭くなって、キッズ向けか深夜アニメしか残らない。ボール球を投げる人も受ける人も、それを楽しむ観客も今はいない」という状況だと説明。そこに風穴を開けるべく立ち上げたという。
作品も、オリジナル企画・スピンオフ企画・プロモーション映像・MusicPVなど、ジャンルを問わず多様性のある作品を用意。あくまで表現の規制のない“自由な創作の場”を提供することを目的としている。作品数も検討段階のものも含めると現状では30程度を予定。スタッフもそうそうたるメンバーで、作品もかなりのものになっているという。実際に会場となっていたTOHOシネマズ日本橋で龍の歯医者の試写も行われたが、ネット配信にもかかわらず劇場のスクリーンに耐えうるクオリティで制作されていることからも、こだわりを持って作られていることがわかる。庵野氏は「アニメーションは本当に面白いんです。それを少しでもいいので感じてほしい。私も味わいたい」とし、今回はプロデュースに徹し、自ら監督として手がける作品の予定はないとしている。
ちなみにタイトルの題字は宮崎駿氏、題字彩色は鈴木敏夫氏が担当。宮崎氏に何度か断られた上でも粘って取り付けたという。またカッコが付いているのはアニメーターだけではなく、アニメとアニメーターの見本市という意味合いを付けたかったからという。人間風のイメージキャラクター「(ーター)くん」は、庵野氏がデザインをしたとしている。
庵野氏は「アニメは面白くて、表現もいろいろあることが伝わってほしい。それで才能のある人が業界に来てほしいし、そのきっかけになれば」と呼びかけていた。
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