5月10日、六本木のニコファーレにて「館長 庵野秀明 特撮博物館 -ミニチュアで見る昭和平成の技-」(以下、「特撮博物館」)の記者会見が行われた。
特撮博物館は、アニメ「ふしぎの海のナディア」や「エヴァンゲリオン」シリーズなどで知られる庵野秀明氏が館長となって博物館を立ち上げたというコンセプトのもと、数々の映画やテレビで活躍したミニチュアやデザイン画など、約500点にもおよぶさまざまな資料を一堂に集めて展示。7月10日から10月8日まで、東京都現代美術館で開催される。
記者会見では庵野氏のほか、副館長で特撮監督の樋口真嗣氏、協力をしたスタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫氏が登壇。冒頭では庵野氏が特撮博物館開催のいきさつや意義を語った。
「僕らが子供の頃に見ていた特撮の良さや面白さを再発見することと、当時使われていたミニチュアや特撮技術を、できる限り文化遺産として後世に残したいという思いがあります。今、特撮みたいなものの映像はたくさんありますが、ほとんどCGです。CGでしかできないものの面白さもありますが、ミニチュアを使って、実際にそこにあるものをカメラで切り取って作る映像の面白さもまだまだあると思うんです。それを今の子供や若い人たちに伝えたいし知ってほしい。その思いから企画しました。開催時期が夏休みにもなっているので、親子連れできてほしいです」(庵野氏)。
2010年1月に庵野氏が鈴木氏に相談を持ちかけたことが開催のきっかけになった。そこで鈴木氏が現代美術館で開催することを思いつき、日本テレビに提案して実現したと語った。一度ここで展示会をすれば、現状の把握やリスト作りにも役に立つという考えもあったという。庵野氏も「ここでやらないと、人も物もなくなりつつあるので、今集めるのが最後のチャンスだと思ったんです」と述べた。
鈴木氏は相談されたときのエピソードとして「個人のためではない。いろんな人が楽しんできた物だから公的な物にしたいと特に強調していた」と語り、庵野氏も「価値を感じない人からみたら粗大ゴミなんです。でも文化遺産として後世に残すものだと僕は思うんです。国でも地方でも企業でもいいんですけど、ちゃんとしたところが恒久的に残してほしいんです。個人…仮に僕が持っていても、いなくなったらそれまでで、捨てられてしまうんです。だからこそ残せるものは残したいという祈りと願いですね」と熱弁した。
特撮の魅力を、樋口氏は「本物じゃないものを本物のように見せること」。スタジオジブリの背景などを例に挙げ、「ここまでやるなら実写でもいいという議論はあるかと思いますが、本物を観察して再構築することによって、本物よりも本物らしくなるものがある」と語った。また庵野氏は「現実の中に空想を紛れ込ませること」とコメント。ちなみに好きな特撮作品について、樋口氏は「妖星ゴラス」、庵野氏は「ウルトラマン」、鈴木氏は「大魔神」を挙げ、思い思いのエピソードを語っていた。
ステージには展示物の一部も実際に持ち込まれていた。東京タワーは「モスラ」のときの図面をもとに再制作したもの。現物は残っていないものの、当時制作した人が板金で作ったという”ある意味本物”。また「マイティジャック」に登場した万能戦艦マイティ号は、艦首と首尾の部分だけ残っていて、それを当時の作り方で3年がかりで再現したという。「再現するのが夢だった。フォルムが素晴らしくて美しい」(庵野氏)。さらに「海底軍艦」の轟天号なども展示された。
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