澤近氏:画面だけを持つ感覚を最優先にして、それを成立させながら、ほかの機能も入れて製品として完成させなければならないというのが、かなりの難題でした。
小山氏:試作品は液晶にただレンズカバーを被せただけのものでしたが、これを実際に製品化していくためには、バックライトやタッチパネルを加えていかないといけないし、もちろん堅牢性も担保しなければならない。中でも特に時間がかったのはレンズカバーの開発ですね。ディスプレイから映像がこぼれ落ちていくような感動を味わってもらうためには、どれだけ美しく見えるかが大切で、それを検証する作業が大変でした。
二神氏:工学的にこの角度になるとこうなるという理屈はあるんですが、それがどう見えるかは実際に検証してみないとわからない。どうすれば映像が際立って立体的に見えるか、映像がまるでクリスタルに封じ込められているようなイメージをどう作っていくか、試行錯誤の連続でした。
澤近氏:仮に見え方はこれがいいというのがあっても、ほかにも強度などやいろんな課題をクリアして、それらも含めて作り込んでいかないといけない。ここにはかなり、時間をかけました。
二神氏:素材、厚さ、角度など、何回も何回もカバーとなるパネルを作って試して……。気がつけばデスクの側に、袋一杯のアクリル板が溜まっていました(笑)。でもその甲斐あって、これまでのEDGESTと比べても、空間に映像が浮いているような立体感を感じてもらえると思います。
清水氏:レンズカバーによって、寸法だけを見ると確かに、これまでのモデルよりも厚くなっているんですが、実際に手にとってもらうえば、厚さはほとんど感じないと思います。見方によっては逆に薄く、スリムになったようにも感じられるかもしれません。背面のラウンド形状やプリントを工夫して、持ちやすさに配慮したからです。
二神氏:背面の素材や形状にも、確かにかなりこだわりました。これだけすごいディスプレイができたので、ほかにも妥協ができなくなってしまって……ちょっとやり過ぎたかなと思うくらいです(笑)。だから前面はもちろんですが、背面の手触り感、手持ちの良さにも自信を持っています。
清水氏:この製品のコンセプトは、クリスタルという名前にもあるように透き通る一体感です。レンズパネルを用いたデザインや、背景に溶け込むフレームレスのほかに、音でも「透き通る」というコンセプトを表現したかった。映像にこれだけインパクトがりますから、やっぱり音にもこだわりたくなるんですね。
それで、われわれが「クリスタルサウンド」と呼んでいる音作りに取り組みました。具体的にはハーマンの「Clari-Fi(クラリファイ)」という技術を搭載しています。これはストリーミングで圧縮されときに削られてしまう音を復元して、原音通りの豊かな音を再現するというもの。一般的なサウンドエフェクトと違って、映像でもその効果が感じられます。
澤近氏:「AQUOS CRYSTAL」には、harman/kardonのBluetoothスピーカーが付属しますので、これはぜひ実際に聞いてみて欲しいですね。
清水氏:あとはカメラ。フレームレスをかざすと、まるで景色をそこだけ切り取ったようで、写真を撮るのがより楽しく感じられると思います。それから、フレームレスだからこその操作体験も何かしら提供したいということで加えたのが「Clip Now」という機能。縁をなぞるとスクリーンショットが撮れます。
澤近氏:今、メモ代わりにしたり、SNSに投稿したりするのに、スクリーンショットを撮る人が増えているんですよね。
清水氏:従来の方法だと片手でスクリーンショットが撮りにくいという声もあって、フレームレスと組み合わせて何かできないかと考えました。もっと簡単にというニーズに応えながら、新しい操作体験の楽しさも味わってもらえると思います。
澤近氏:フレームレスというアイデアを、ソフトバンクさんに提案をしていく中で、共同調達のスキームに則って、日米同時にリリースしたいというお話しをいただきました。われわれのチームは今までずっと国内向けだけをやってきたので、海外にチャレンジできる足がかりをいただいた、環境をいただいたという気持ちですね。決まったときは、今まで国内にとどまってきた製品をいよいよ米国にも投入できるということで、チーム内の士気もかなり上がりました。米国でも感動を届けたいという思いで、フレームレスに邁進できたということはあるかもしれませんね。
澤近氏:日本向けと米国向けで違うのは無線のバンドくらいで、特に米国で販売するということで、加えたものはありません。このディスプレイを見たときの感動というのは、きっと日本も米国も同じだと思うんです。見た人すべてを感動させられる機能があるなら、それを最優先に開発すれば商品として成り立つと考えました。だから、米国向けだから特にこの機能をつけようという議論にはならなかったですね。
前田氏:この端末が、「日本のものづくりは負けてない」と言えるいい機会になったらうれしいですね。手前みそですが、実際に1年ではこれだけの技術革新は、なかなかできないと思います。
小山氏:本当に1年で、ここまでできるとは思わなかったですね。正直なところ、2~3年はかかると思っていた。でもこれは、みんなが情熱を持って取り組んだ成果。感動を早くカタチにしたいという思いだけでやってきましたから。日米共同調達の話が決まったときは、やっぱりこの思いは間違ってないんだなという自信を持ちました。
澤近氏:ただただ驚いています。「AQUOS」というブランドは、テレビ等ではありますが、スマートフォンとしては米国で認知されていません。だから「発表会をしても記事にならないんじゃないか」という、悲観的な見方をするメンバーもいたんですが、フタを開けてみたら大きく取り扱っていただいて本当にびっくりした。米国でもしっかりいい商品を作れば、取り上げてもらえるし、勝負できるんだという思いを強くしました。
小山氏:フレームレスを見たときの感動はわれわれのチーム全員が共有しているもので、日本も米国も含めて、早くこの同じ感動をユーザーの皆さんにも届けたい。本当にわくわくしています。
澤近氏:フレームレスの構造は技術革新がなければ到達できません。ここは弊社独自の強味として、今後もさらに極めていきたいと思っています。どこをどのように進化させていくかは、ユーザー皆さんの声を聞きながら考えていきたいですね。ただひとつ決めているのは、弊社の独自技術をうまく活用して、それをユーザーの皆さんの感動に変えていきたいということです。
小山氏:やはり、液晶とデザインがキーになっていくんだろうなと思います。スマートフォンがどんどん同一化する中で、違いを見せられるのは、技術力とデザイン力だと思うので。そこは次以降の製品でも、しっかり頑張っていきたいと思っています。
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