ソフトバンクは8月18日、異例の新製品発表会で披露した「AQUOS CRYSTAL」。シーズンごとに行われてきた従来の発表会とは異なり、紹介された製品はこの1機種のみ。しかも日本だけでなく、ソフトバンク傘下となった米スプリントでも販売される、日米共同調達端末の第1号だ。
AQUOS CRYSTALは、シャープがスマートフォンの「AQUOS」シリーズで、2013年から展開してきた3辺狭額縁の「EDGEST」デザインをさらに進化。ディスプレイフレームを極限まで狭めた、「フレームレス」デザインを最大の特徴とするスマートフォンだ。5インチHDの大画面ディスプレイを搭載しながら、ほとんどディスプレイだけという見た目とサイズ感を実現している。そのインパクトは大きく、発表会の翌日には海外メディアでも大きく報じられた。究極のフレームレススマートフォンは、どのような経緯で生まれたのか。
澤近氏:実はフレームレスというアイデア自体は、数年前から出ていました。技術担当からこういうことができるんじゃないかという話を聞かされたのは、もう3年くらい前になるでしょうか?
前田氏:液晶の縁の部分というのは、映像の表示には寄与していませんが、実は中に液晶を動かすための回路が入っていて、絶対になくせないところなんです。なくせないけれど、この回路を小さくすることができれば、液晶の周りを細くできる。ゼロにはならないだろうけど、ゼロを目指してみようということで、研究が進められてきました。
小山氏:縁を狭めるための技術革新が進む中で、ある発見がありました。究極まで縁を狭めた液晶にレンズカバーを付けると、視角の効果によって、縁の見え方を限りなくゼロにできることがわかったんです。技術担当者に初めて、そのディスプレイの試作品を見せてもらったときは、本当に映像だけがそこにあるように見えて、ものすごく感動しました。
小山氏:ところが、そうはなりませんでした。当時はフレームの狭さよりも、本体の薄さの方がより重要だったからです。レンズ効果が得られるカバーを付けようとすると、どうしてもその分だけ厚みが増してしまう。ゼロコンマ何ミリをどうやって削って薄くするかという議論の最中に、このアイデアは当初、あまりポジティブには受け入れられませんでした。
澤近氏:一方で今スマートフォンは、機能やデザインで差別化するのがものすごく難しい世界に突入してきている。なんとかシャープ独自の世界観を、ユーザーに訴求していきたいという思いもずっとあったんです。それで2013年の2月にまず「EDGEST(AQUOS ZETA SH-04F )」という、狭額縁に訴求ポイントをおいた製品の第1弾を投入させていただいた。そこから一気にフレームレスに向けての開発が加速していきました。
澤近氏:ユーザーの方から、ネガティブな意見はほとんどありませんでした。画面が大きくて、その画面だけを持つ感覚のすごさ、感動は伝わったと思ったし、評価もしてもらえた。しかもこれは、弊社独自の技術がなければできないことです。だったらこれを突き詰めていこうと自信を深めることができました。
前田氏:3辺狭額縁なんて、当時としてはかなり非常識なことだったんです。だからその非常識を常識としてやっていこう、やろうぜとなるまではちょっと時間がかかりました。でもそれができたから、その先のフレームレスにもつながった。
小山氏:社内的には、ちょうど会社もいろいろと変わっていくタイミングで、上層部のチャンレンジに対する考え方が変化したのも大きかったですね。新しい挑戦をしようという機運が、社内にありました。
澤近氏:特にフレームレスに関しては、なんと言っても試作品を見たときのインパクトが大きかったですね。この感動を届けたい。それが最優先だという思いで全員が一致した。だから、一丸となれたのだと思います。そうでなければ、短期間で難しいチャレンジを成功させ、製品化まで持っていくことはできなかったでしょうね。
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