ものづくりを加速させる「3Dプリンタ」

本当に“魔法の機械”か?--知っておきたい3Dプリンタの基礎知識(後編)

シバタススム2014年09月25日 11時10分

 前回は3Dプリンタの種類や概論的な内容を解説した。今回は、個人向けの3Dプリンタを実際に手順を追って使い、どんなものがどうすればできるのか具体的に解説していく。

コンシューマー向けの3Dプリンタの仕組み

 コンシューマー向けの30万円以下の3Dプリンタは、ほぼ「熱溶解積層方式」が採用されている。これはメーカーが違っても基本的な構造は同じだ。ロールに巻かれている棒状の樹脂(PLAやABS)を200度に加熱して柔らかくし、それをノズルの先から射出して形を作っていく。

2つのノズルを搭載し、2色の樹脂を同時に使えるタイプの3Dプリンタ「ダヴィンチ2.0」
2つのノズルを搭載し、2色の樹脂を同時に使えるタイプの3Dプリンタ「ダヴィンチ2.0」

 ノズルは縦横に可動しながら必要な場所に樹脂を射出し、射出された材料は「ベッド」という台に積み上がっていく。このベッドはノズルの動きと連動し上下方向に可動するため、ベッド上には材料が徐々に積み上がる。つまり、ノズルが2次元方向に1層ずつ樹脂で形をつくり、それをベッドが1段ずつ下げて積み重ねることで3次元になって立体ができてくる。樹脂は冷えると固まるため、物体としての強度もそこそこある。

 家庭用に限らず、多くの3Dプリンタでは、このように材料を薄く積み重ねていくことで立体ができあがる仕組みとなっている。材料を積み重ねる際の1層の厚さを「積層ピッチ」といい、3Dプリンタのスペックを見るときのポイントともなる。1層ごとの厚さが厚いと物体の曲線部分が階段状のガタガタなってしまう。

 逆に厚さが薄ければ滑らかになる。ちょうど解像度の低い画像と高い画像の関係と同じだ。画像では解像度が低い方がファイルサイズが小さくて済むが、同じような関係が3Dプリンタにもある。それは造型する速度だ。例えば、高さ10センチの物体を作るとすると、積層ピッチが0.2mmならば50層を積み上げるだけでいいが0.1mmにすると100層の積み上げが必要だ。1層の積み上げに1分かかるとすると、0.2mmで作れば50分だが、0.1mmでは100分かかる。

 このように3Dプリンタの精度と造型する速度はトレードオフとなる。そのため、現在の3Dプリンタのネックのひとつが造型する時間が掛かりすぎるという点だ。例えばペン立て1つ作るのに10時間掛かったとすると、下手すると近所の100円ショップに行った方が早い。Amazonのお急ぎ便なら、注文したものが届いてしまうぐらいの時間だ。ただ、今の方式では劇的に高速化するのは難しく、今後何らかの技術的なブレイクスルーが必要である。

写真でみるコンシューマー向け3Dプリンタの仕組みと使いこなしのコツ

 今回使用するのは、xyzプリンティングジャパンの「ダヴィンチ2.0」。2つのノズルを搭載し、2色の樹脂を同時に使えるタイプの3Dプリンタだ。現在はAmazonのみでの限定販売。実売価格は8万9800円と他社の同等製品と比べると半値近いものの、性能面では劣るところはないという優れモノ。

まず材料の樹脂をノズルに入れる。このノズルは作動時は200度近くになるため、ウッカリ触ると火傷する
まず材料の樹脂をノズルに入れる。このノズルは作動時は200度近くになるため、ウッカリ触ると火傷する
樹脂を射出する台「ベッド」には、射出された樹脂がベッドに吸着するように糊を塗布しておく
樹脂を射出する台「ベッド」には、射出された樹脂がベッドに吸着するように糊を塗布しておく
造型前に必要なのがベッドの調整だ。ノズルとベッドの隙間が均一になっていないと、樹脂が正確に積み上がらない。もし、1層でも樹脂が正確に積み上がっていなければ、その上に積み上げる樹脂も崩れてしまうため、物体全体が崩れてしまう。そのため、「熱溶解積層方式」の3Dプリンタでは、このベッドの調整が何よりも重要だ。ダヴィンチ2.0を含むダヴィンチシリーズでは、自動的に隙間を計測して調整するための目安を本体の液晶画面に表示してくれるため、他社製品に比べて1ランク使いやすさが上だ。他の製品では、ノズルをベッドの各所に動かして、コピー用紙が通るか通らないかぐらいの隙間に調整しなければならず、下手をすると調整だけで何時間もかかってしまう
造型前に必要なのがベッドの調整だ。ノズルとベッドの隙間が均一になっていないと、樹脂が正確に積み上がらない。もし、1層でも樹脂が正確に積み上がっていなければ、その上に積み上げる樹脂も崩れてしまうため、物体全体が崩れてしまう。そのため、「熱溶解積層方式」の3Dプリンタでは、このベッドの調整が何よりも重要だ。ダヴィンチ2.0を含むダヴィンチシリーズでは、自動的に隙間を計測して調整するための目安を本体の液晶画面に表示してくれるため、他社製品に比べて1ランク使いやすさが上だ。他の製品では、ノズルをベッドの各所に動かして、コピー用紙が通るか通らないかぐらいの隙間に調整しなければならず、下手をすると調整だけで何時間もかかってしまう
加熱された樹脂がベッドに射出される。このとき射出された樹脂の厚さが積層ピッチといい、出来上がった物体の表面の滑らかさに関係する。もちろん、薄く射出するほうが滑らかになるが、その分造型時間も増す
加熱された樹脂がベッドに射出される。このとき射出された樹脂の厚さが積層ピッチといい、出来上がった物体の表面の滑らかさに関係する。もちろん、薄く射出するほうが滑らかになるが、その分造型時間も増す
1層分の材料を射出するベッドが下がって2層目の射出を行う。こうして、1層ずつ射出しベッドを下げていくことで、立体が出来上がっていく。なお、材料にABS樹脂を使う3Dプリンタでは、ベッド部分も100度近くに加熱される。これは、200度に加熱された樹脂が急激に冷えると収縮して物体に反りが出来てしまうため、冷却速度を遅くして反りができないようにするためだ
1層分の材料を射出するベッドが下がって2層目の射出を行う。こうして、1層ずつ射出しベッドを下げていくことで、立体が出来上がっていく。なお、材料にABS樹脂を使う3Dプリンタでは、ベッド部分も100度近くに加熱される。これは、200度に加熱された樹脂が急激に冷えると収縮して物体に反りが出来てしまうため、冷却速度を遅くして反りができないようにするためだ

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