前回は3Dプリンタの種類や概論的な内容を解説した。今回は、個人向けの3Dプリンタを実際に手順を追って使い、どんなものがどうすればできるのか具体的に解説していく。
コンシューマー向けの30万円以下の3Dプリンタは、ほぼ「熱溶解積層方式」が採用されている。これはメーカーが違っても基本的な構造は同じだ。ロールに巻かれている棒状の樹脂(PLAやABS)を200度に加熱して柔らかくし、それをノズルの先から射出して形を作っていく。
ノズルは縦横に可動しながら必要な場所に樹脂を射出し、射出された材料は「ベッド」という台に積み上がっていく。このベッドはノズルの動きと連動し上下方向に可動するため、ベッド上には材料が徐々に積み上がる。つまり、ノズルが2次元方向に1層ずつ樹脂で形をつくり、それをベッドが1段ずつ下げて積み重ねることで3次元になって立体ができてくる。樹脂は冷えると固まるため、物体としての強度もそこそこある。
家庭用に限らず、多くの3Dプリンタでは、このように材料を薄く積み重ねていくことで立体ができあがる仕組みとなっている。材料を積み重ねる際の1層の厚さを「積層ピッチ」といい、3Dプリンタのスペックを見るときのポイントともなる。1層ごとの厚さが厚いと物体の曲線部分が階段状のガタガタなってしまう。
逆に厚さが薄ければ滑らかになる。ちょうど解像度の低い画像と高い画像の関係と同じだ。画像では解像度が低い方がファイルサイズが小さくて済むが、同じような関係が3Dプリンタにもある。それは造型する速度だ。例えば、高さ10センチの物体を作るとすると、積層ピッチが0.2mmならば50層を積み上げるだけでいいが0.1mmにすると100層の積み上げが必要だ。1層の積み上げに1分かかるとすると、0.2mmで作れば50分だが、0.1mmでは100分かかる。
このように3Dプリンタの精度と造型する速度はトレードオフとなる。そのため、現在の3Dプリンタのネックのひとつが造型する時間が掛かりすぎるという点だ。例えばペン立て1つ作るのに10時間掛かったとすると、下手すると近所の100円ショップに行った方が早い。Amazonのお急ぎ便なら、注文したものが届いてしまうぐらいの時間だ。ただ、今の方式では劇的に高速化するのは難しく、今後何らかの技術的なブレイクスルーが必要である。
今回使用するのは、xyzプリンティングジャパンの「ダヴィンチ2.0」。2つのノズルを搭載し、2色の樹脂を同時に使えるタイプの3Dプリンタだ。現在はAmazonのみでの限定販売。実売価格は8万9800円と他社の同等製品と比べると半値近いものの、性能面では劣るところはないという優れモノ。
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