「私の頭はいまフル回転していて、さまざまな選択肢を常に考えている。経営というのは面白いなとつくづく思う」――ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、8月8日に開催された決算会見の冒頭でこのように切り出した。それ以上は語らなかったが、米携帯キャリア「T-Mobile US」の買収を断念したことに対する発言であることは明らかだ。
ソフトバンクは2013年7月に米国3位の携帯キャリア「Sprint」を買収。さらに4位のT-Mobile USを買収し合併することで、“2強”のVerizonとAT&Tに対抗しようとしていたようだ。2014年3月には孫氏が自らワシントンD.C.で講演し、「米国の通信インフラは時代遅れだ」と熱弁するほどの力の入れようだった。報道によれば、T-Mobile USの親会社であるドイツテレコムと買収について大筋合意していたが、米規制当局による認可を得られないと判断し、交渉を打ち切ったようだ。
T-Mobile USの買収断念について尋ねられた孫氏は、「ソフトバンクとして特定の会社の買収などについてコメントしたことは一度もない。今回も公式なコメントはなし」と交渉自体を認めなかったが、「米国市場により健全で激しい競争をもたらすためには、2強状態よりも“三つ巴”の方が良いという気持ちは、昔も今も変わっていない」と強調した。
今後は、Sprintの競争力を上げることで米国市場の足場を固める考えのようだ。孫氏は、赤字が続いていたSprintの業績や、他社に後れを取っていたネットワークがソフトバンク傘下になったことで大幅に改善しているとアピール。このネットワークを武器に顧客の獲得増を狙うほか、引き続きコスト削減に努めたいとした。
「新しいCEOを発表し、ネットワークも順調に改善してきた。これからソフトバンクの得意な営業に注力する構えができてきた。経費の効率化についても、着実に競争ができるような“筋肉質”に変えていきたい」(孫氏)。
2015年3月期第1四半期(4~6月期)の連結業績は、売上高が前年同期比126.1%増の1兆9922億1600万円で2期連続の過去最高を記録。営業利益は、前年同期にガンホー・オンライン・エンターテイメント(ガンホー)を子会社化したことで発生した一時益がないため、同15.6%減の3376億3200万円だった。
純利益は、グループ会社で米国に上場申請中の中国EC大手アリババの転換優先株のIFRS調整損が発生したことで、同58.7%減の1113億800万円だった。ただし、上場時に払い戻しされる予定だと説明した。
国内のモバイル事業については、調査会社の結果などを紹介しつつソフトバンクのネットワーク接続率や品質の高さをアピール。子会社であるヤフーのEC事業や、ガンホー、Supercellのゲーム事業も引き続き好調だとした。2015年2月にはヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」の一般販売も開始する。
なお、孫氏はスマートフォンのSIMロック解除が2015年にも義務化される見通しであることについて、「制度については別に反対しない」としながらも、“需要がない”との見方を示した。
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