起業家の失敗談をテーマにしたカンファレンス「FailCon」が6月18日に都内で開催された。FailConは、起業家などの失敗談を参加者に共有し、次の成功につなげようと2009年からサンフランシスコで開催されているカンファレンスで、現在では世界12都市で開催されている。その日本版である「FailCon Japan」が開催され、起業やサービス開発における失敗談などが語られた。
「CGMサービスを作る上での失敗」と題したセッションにはnanapi共同創業者の古川健介氏が登壇し、nanapi立ち上げに至るまでのサービス開発の失敗談、現在提供しているハウツーサイト「nanapi」やスマホ向けQ&Aアプリ「アンサー」の開発で気をつけていることなどを語った。
学生時代からCGMサービスを運営してきた古川氏。最初のサービスは「ミルクカフェ」というユーザー参加型のコミュニティサイトだ。投稿内容は、授業評価など学生生活に直結した内容だったという。
「初めは、ユーザーが投稿しやすい環境を作るために、匿名で運営者による管理者責任にした。しかし、匿名による誹謗中傷や批判などが多く、警察からの捜査関係事項証明書や内容証明が100通以上届き、訴訟での損害請求額が総額6800万円にまでなった」(古川氏)。
自身が管理者として責任を負うことのリスクを考え、「JBBS@したらば」(後の「したらば掲示板」)に参画し、レンタル掲示板の運用に携わった。誰でも好きな掲示板を立ち上げることができ、運営者のリスクや管理の手間が少なくアクセス数は順調に伸びていった。しかし、サービスの特性から「掲示板の所有者はユーザー」だという意識が強かったため、広告を打つことが難しくマネタイズに苦戦。結果、ライブドアに事業譲渡する形となった。その後、ポエム投稿サイト「ポイミ」を立ち上げるも、ポエムが流行らず断念した経験も持つ。
その後、現在のハウツーサイトのnanapiをスタートした。人と人との意見がぶつかり合うものではなく、誰もが役立つ生活に便利な情報を提供するサービスを目指したと古川氏は語る。
「ハウツー版Wikipediaをイメージした。しかし、Wikipediaのような客観性の高い辞書的要素はWhatの情報だが、ハウツーはHowな情報で複雑性が高い。人によって求めている情報の粒度がバラバラで、情報の質も主観や客観が混じっている。検索などの探しやすさもWikipediaよりもハードルは高い」(古川氏)。
当初は、ハウツーコンテンツをnanapiで提供していたが、次第にコンテンツによっては、検索できるコンテンツと検索できないコンテンツがあることを発見したという。検索で解決するコンテンツであれば、編集コンテンツでカバーできるが、検索しても解決しないものがある。例えば「仕事に行きたくない」といった悩みは、検索ではなく人は共感を求めていると古川氏は仮説を立て、検索できない悩みをコミュニケーションで解決するために作られたのが、Q&Aアプリのアンサーだという。
「ユーザーは、明確な答えが欲しいのではなく、共感や反応を求めている。ユーザーが互いにコミュニケーションすることで、当人にとっての課題解決が図られることもある。仮に直接的な課題解決になっていなくても、気が楽になり満足することも多い。ボットの反応や出版社から許可を取ったマンガのキャラを登場させたりと、ユーザーが求めるゆるやかな関係や雰囲気作りを大切にしている。遊び的なものから真面目なものまで、さまざまな課題を解決するプラットフォームを目指す」(古川氏)。
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