この連載では、シンガポール在住のライターが東南アジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、東南アジアにおけるIT市場の今を伝える。
企業が商品やサービスの販売促進を目的に顧客に直接アプローチする手段として、日本ではメールやプッシュ通知機能のあるスマートフォンアプリなどが主流だろうか。それは筆者が生活するシンガポールでも変わらないことだが、一方で「SMS」が日本と比べて多用されているように感じる。
SMS機能は世界中で普及する多くのモバイル端末に搭載され、またプッシュ通知も可能であることから、企業にとっては顧客とつながることのできる強力な手段である。それゆえに、ユーザーは時として過度なアプローチを受け、企業の利用に制限がかけられるケースもある。
シンガポールに拠点を置くスタートアップのSent.lyは、こうした企業にとっての使い勝手の悪さや顧客とのミスマッチをなくすべく、モバイルマーケティングツール「Sent.ly」を提供している。
このツールには大きく2つの機能がある。1つは、SMSを使ったマーケティング施策を管理する「Sent.ly Plus」。このツールを経由してメッセージを配信すれば、配信時刻を設定したり、画像や動画、ウェブサイトのリンクなどのリッチな情報を配信したりできる。
また、一部の国では通信会社がスパムメッセージを排除するために、特定の配信者のIDをブロックしたり、修正してメッセージを配信したりすることがあるというが、Sent.ly Plusを使えばそれを避け、きちんと自社のIDで配信できるという。また、通信会社側の都合による配信の遅延も避けられるそうだ。
Sent.lyのもう1つの機能は、SMSではなく、スマートフォンアプリを経由してメッセージを送る「Sent.ly Notify」。YouTubeのブランドチャンネルのように、アプリ内に自社のチャンネルを登録し、それをフォローしているユーザーに対してメッセージを配信するものだ。
SMSやSent.ly Plusとの違いは、自社に確実に興味を持っている顧客にアプローチできること。また、Sent.ly Plusと同様、テキストだけでなく画像や動画も配信でき、費用も従来のSMSと比較して30~50%程度削減できるという。特定の顧客がメッセージを開封したか否かも知ることができるため、リターゲティングの施策にも活用できる。
Sent.lyは、マーケティングのほかにもあらゆる用途に対応できる。たとえば、ある日系企業の人事部は社内の情報共有を目的として利用している。ほかにも、シンガポールで開催されたあるカンファレンスでは、講演の進行状況や場所の変更などのアップデート情報をイベントの参加者に配信していた。
Sent.lyを利用する顧客数は3500人。3月時点で200万以上のメッセージが配信され、およそ60万人がそれを受信した。今後はツールの精度を高めるとともに、シンガポールをはじめとする国々に拠点を置く、ブランドイメージを重視する企業に対して利用を促していくという。
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