スマートフォンならではの展開として挙げられるのが、アプリの存在だ。最近では、ウェブサイトとアプリの両方でサービス展開するケースが増加している。ここではウェブサイトとアプリにおける利用傾向の違いを検証してみた。
まず、ウェブサイトとアプリではどちらをメインに利用するのかを調査してみると、全体ではウェブサイトをメインで利用している人の割合が約7割と高い。特に女性はこの傾向が強くなっており、アプリの利用に抵抗を感じる人は少なくないようだ。その利用理由として、ウェブサイト及びアプリともに商品検索がしやすい事が共通しているが、ウェブサイトメインのユーザーでは「慣れているから」という理由が目立っている。
逆に、アプリメインのユーザーでは「ホーム画面からアクセスしやすい」「購入までの流れが簡単だから」「読み込み速度が速い」「操作性が良い」などさまざまな理由が挙げられている。アプリは利用自体にまだ慣れておらず、利用に抵抗のあるユーザーが存在する一方で、一旦使いだすとその良さを実感する人も多いようだ。PCやフィーチャーフォンでウェブサイトに慣れ親しんでいるユーザーを新規で獲得する際には、ウェブサイトをランディングとして用意し、スマートフォンに慣れたリピーターにはアプリを訴求する、などといった訴求を検討するのも良いのではないだろうか(図4)。
スマートフォンでもっとユーザーを獲得し、売り上げを増加させるためにはどんな事を工夫するべきなのだろうか。ここでは、ECサービスをスマートフォンで展開していく上での効果的な施策について考察してみたい。
まず、デバイスを問わず重要視されるのは「送料」で、商品購入の決め手と断念理由の両方において最も反応の高い要素となっている。スマートフォン独特の傾向ではないが、ECサービスを展開する上で、送料を軽減するなどといった施策は抑えておくべきポイントと言えそうだ。また商品購入の決め手として、送料以外で反応の高かったのが「ポイントの付与率が高い」「希望日に配送してくれる、即日配送してくれること」などである。特に、「希望日に配送してくれる……」はスマホメインの方に強い傾向が出ており、場所を選ばずいつでも利用できるスマートフォンが急ぎの需要にもマッチしていることからも、この結果は頷ける結果といえよう。
逆に、商品購入を断念した理由としては「ユーザーレビューの内容が悪い」「利用したい決済手段が使えない」といった回答が高く、加えてスマホメインは「会員登録が必要だったから」「ID・パスワードを忘れた」などの理由も高く出現している。決済手段を充実させるなどといった施策とともに、会員登録の必要性、ID・パスワードを忘れたユーザーへのフォローなど、わかりやすく手軽にサービス利用できる環境を整えることは非常に重要であるといえよう(図5)。
デバイスは変化しても、ユーザーの価値観やライフスタイルには普遍的な部分も多いため、スマートフォン向けECサービスにおいてもPCサービスとの共通点は多い。しかし今回の調査結果からは、スマートフォンならではの特徴も数多く出現した。特にユーザーインターフェースに関連する部分については、スマートフォンユーザーの利用環境や行動特性を改めて認識し、ただPC用サイトを簡易化するだけでなく、専用の最適化を検討する必要があるだろう。
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