富士通は4月15日、グループの先端技術を研究開発する富士通研究所の戦略説明会を開催した。
富士通研究所では、「人」「情報」「インフラ」の3つを柱に、イノベーションの創出に向けて取り組んでいる。研究テーマの分類は3つ。資源配分は、事業に直結する「事業化研究」が約3割、新事業の創出や事業拡大、競争力強化に向けた「先行研究」が約5割、研究所の革新的技術を探る「シーズ研究」が約2割という。
富士通研究所 代表取締役社長の佐相秀幸氏は、「ICTの発展とともに負の側面も考慮しながら社会に役立つICTを実現できるか。人とICTの融和、これが研究所の大きなテーマ」と語った。
また、新たに2つの技術開発を発表した。1つは、人が集まったその場でタブレット端末や機器をつなげて画面共有や協働作業ができる情報交換サービスの基盤技術だ。事前にメンバー登録やドライバのインストールが不要で、連携サービスを迅速に構築できるのが特長だ。現在はAndroid版のみだが、iOSやWindowsもサポートする方針。
Wi-FiのアクセスポイントやNFCタグなどにをもとに場所を定義し、ほかの端末との連携機能を付与したモバイルアプリケーションをサーバから自動で配信できる。
新たに(1)端末間の連携、(2)機器の仮想化、(3)ローカルウェブサービス──の3つの技術を開発し、端末にアプリケーションを配布するローカルアプリストアと併せて、プレイスサービス基盤として統合した。
開発者は、さまざまな共通機能を提供するローカルウェブサービスをアプリケーションからサービスAPIを通じて利用するため、最大で従来の約10分の1の手間でアプリケーションを開発できるとしている。例えば、学校におけるグループ学習、店舗における顧客端末への商品情報提示、大画面と連動した商品紹介などへの活用を想定。実証実験を行った後、2014年度中の実用化を目指す。
もう1つは、マルウェアによる社内潜伏活動の高速検知技術だ。これは、最近増加している特定の企業や個人を狙った標的型攻撃に対して、組織内ネットワークを監視し、マルウェアの社内潜伏活動を高速検知するというもの。
最新のマルウェアは、通常の業務で発生するメール送受信やウェブアクセスなどの通信に紛れて、攻撃者が組織外から内部の感染PCを遠隔操作して内部情報を取集するRATというタイプが主流。RATは事前にメールなどを介して侵入し、その時点では攻撃に関する処理を行わない。その後、攻撃する際の通信内容にはマルウェア自体が含まれず、遠隔操作の通信自体も暗号化されていることがほとんどで、従来のアンチウイルスソフトウェアや不正侵入検知システムなどの対策では、発見が困難という。
富士通研究所が開発したのは、こうした遠隔操作を目的とするマルウェアの活動を検知する方式として、社内潜伏活動で特徴的に見られる通信パターンに着目し、組織外と組織内の複数の通信の関係性を解析し検知する技術。実用化の課題であった、汎用的なサーバなどでリアルタイムにマルウェアの検出を実現するための高速化技術を開発したという。2014年度中に本技術を製品化することを目標にしている。
これらの技術は、5月15日と16日に東京国際フォーラムで開催する「富士通フォーラム2014」で見られる。
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