「テレコムの会社になりたいわけではない。インターネットの会社としてすべての人の手元に“スマートインターネット”を届けたい」――ヤフーは3月27日、親会社のソフトバンクからイー・アクセスの株式の99.68%(議決権比率33.29%)を3240億円で取得し、携帯キャリア事業に参入することを発表した。スマートフォン市場の成長を加速させることで、同社の収益の柱である広告やECの売上げを伸ばしていきたい考えだ。
ヤフーは6月1日にウィルコムを吸収合併するイー・アクセスを、6月2日付けで子会社化し、新会社「ワイモバイル」(仮称)にする。ウィルコムやイー・アクセスが従来から提供しているPHSやデータ通信端末に加えて、Android端末を中心とした新たなスマートフォン事業「Y!mobile」(仮称)を6月に開始する。
ただし、具体的なサービス内容や料金については明かされず、6月までに発表するとした。また、ユーザーのニーズをサービスに反映するため、同日から「Yahoo! JAPAN」のトップページに特設サイトを開設し、スマートフォンに対する不満や要望を募るとしている。
なお、新会社の代表取締役会長には現イー・アクセス社長のエリック・ガン氏が、代表取締役社長にはヤフー社長の宮坂学氏が就任する。また、ヤフーとイー・アクセスからそれぞれ3人、ソフトバンクから1人が役員に就く。
ヤフーが携帯キャリアに参入した理由。それは、市場全体を成長させることで同社の業績に占めるスマートフォン領域の売上げをさらに伸ばすためだ。宮坂氏は、日本の8割以上の家庭に固定のインターネットが普及している一方で、スマートフォンの使用率は約4割、タブレットにいたっては約1割でしかないと指摘。新会社を通じて、モバイルインターネットを電気や水道といったインフラのような存在にしたいと語る。
そのため、従来の携帯キャリアのように音声通信ありきのサービスではなく、「ネットをつなぐことをメインにサービスを提供したい」(宮坂氏)と話す。柔軟にサービスを提供できるよう、他の通信キャリアから回線網を借りるMVNOではなく、端末や料金プラン、販売チャネルなどをすべて自前で用意する“フルサービス”を選んだ。ただし、ネットワークについてはソフトバンクに協力を仰ぐ。
また、ヤフーがワイモバイルを傘下にすることで期待するのが、オフラインチャネルの獲得だ。イー・アクセスやウィルコムのショップ約3000店舗のブランドやデザインが一新され「街中に“Y!”のロゴが溢れることになる」(宮坂氏)。また、スマートフォンにヤフーのサービスをプリインストールしたり、店舗で新サービスを勧めるといった、さまざまな形でのシナジー効果を期待できるとした。
宮坂氏は、ヤフーが2001年に開始したADSL接続サービス「Yahoo! BB」が、日本のブロードバンド市場の成長に大きく貢献したと説明。「ライバル各社もADSLに参入し、競争したことで市場が拡大し、PCサイトのアクセスや広告事業も伸びた。同じようなことをモバイルインターネットで起こしたい」と意気込んだ。
新会社では、イー・モバイルとウィルコムの合計1000万契約の2倍となる2000万契約を目指す。また、2014年度の売上げについては、6月から連結するため約10カ月で売上高3200億円、営業利益100億円になる見通しだとした。
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