アプリでハイヤーを予約して、そのまま支払いまでできるハイヤー・オンデマンドサービスのUberが、東京での正式サービス開始を3月3日に発表した。2010年にサンフランシスコからサービスを開始したUberは、その後、全世界へと市場を広げ、現在は31カ国、81都市でサービスを展開している。
日本では、100%子会社のUber Japanが、2013年11月から六本木エリアを中心に試験サービスを開始し、アプリやサービスを日本市場へ対応させるために調整してきたが、目標とする「平均して5分から10分以内で配車できる」可能性が見えてきたことから、今回の発表となったようだ。
ただし、いきなり都内全域がカバーされるわけではなく、まずは六本木とその周辺から配車範囲を拡げていくという。その理由は、日本での配車方法に関係している。たとえばサンフランシスコでは、Uberと契約を結んだパートナーが配車を行うというスタイルをとっているが、日本の場合はハイヤー会社と契約して配車している。つまり、個人では頼みにくいハイヤーを、タクシーのように気軽に呼べる仲介サービスのような位置付けであり、そのために必要な旅行業務登録も取得し、コンプライアンスにも十分配慮して運営していると強調した。ドライバーのトレーニングにも時間をかけているが、それは、Uberの位置付けやアプリの使い方を理解してもらうためだったという。
実際、より質の高いサービスの提供という点では、アプリ(iOS、Android)の機能にも力が入っている。あらかじめ、会員登録とクレジットカードの登録をしておけば、起動も含めて3タップで配車ができ、見積りやドライバーの情報も確認できる。配車位置はスマホの位置情報機能を使うが、GPSの精度の問題などで万が一ドライバーがユーザーを見つけられない場合でも、電話で確認できる通話機能を用意している。
最もスマートなのは支払いで、カードをあらためて見せたり、サインしたりする必要はなく、降車直後にメールで料金が確認できる。Uberの会員同士なら割り勘での支払いもでき、走行ルートが入った詳細な領収証も発行される。もし、ドライバーが道に迷って料金がかさんだ場合も堂々とクレームがつけられるというわけだ。
発表会では、会場となった米国大使館の商務部商務公使のアンドリュー・ワイレガラ氏をはじめ、元ソニー社長で現在はクオンタムリープの代表取締役を務める出井伸之氏もあいさつにかけつけた。ワイレガラ氏は冒頭のあいさつで、「Uberのサービスは日本市場にとっての黒船ではなく、ビジネスパートナーである」ことを強調し、出井氏も「iPodの時もそうだったが、新しいサービスが始まる時は違和感があり、業界からの反発も大きいが、ユーザーからの支持を受けられるものであれば定着していくだろう」とコメントした。
また、デバイスとネットワークでUber Japanに協力したという、ソフトバンクBBの取締役常務執行役員の溝口泰雄氏も「日本でもUber体験の素晴らしさを味わってほしい」と語った。
実際に、試験運用の反応は上々で、利用者の9割からポジティブ評価を得ているそうだ。Uberでは他の都市についても、登録車両の台数やユーザー登録者数を公式に発表していないが、アジア地域統括最高責任者のアレン・ペン氏によると「東京でのユーザー登録者数は、他の都市に比べて2~3倍のペースで増えている」という。意外だったのは、若い女性の利用者が多いことで、プレミアム体験に加えて、利用の安心感も大きなポイントになっているのではないかと分析している。
Uber Japan代表取締役社長の塩濱剛治氏は、Uberは既存のハイヤー会社とユーザーをつなぐプラットフォームであると位置付けており、「業界にとっても利用者からの声がダイレクトに聞けることで、全体の質の向上にもつながるのではないか」としている。
Uber JapanはUber本体からの100%出資で運営されており、そのUberは先日、Googleから2億5800万ドルの出資を受け、ビジネスの価値は35億ドルと評されている。だが、日本市場に関しては、現時点ではまだ収益を上げていない。もちろん、将来的には東京以外でのエリアへの展開も見据えているが、先行的な投資時期であり、まずは都内でのエリア拡大と車種の指定ができるなどのサービス向上を目指すとしている。
サービスについては、クリスマスや新年などのアニバーサリーに合わせた企画以外のコラボレーションも検討しているという。米国では、アイスクリームトラックが指定できたり、ヘリコプターを手配するといったスペシャルオプションが実施されており、日本でもそんなサプライズが飛び出すかもしれない。
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